幕間Ⅱ
幕間Ⅱ
校長室よりも高級な一室。
出資者用のVIPルームには。二人の男が向かい合って座っている。
片方はしかつめらしい壮年。もう一方はそれより若い。力関係はわかりやすく。社長と有能な秘書を思わせる。
若い方が、突然振り向く。
「どうした?」
「……いえ、なんでも」
尋ねられて視線を戻す。
年老いた方はもう一方を正面から見据え。確認作業のように尋ねた。
「それで? 首尾はどうなのだ?」
「現在、設備の準備を進めています。遅れはありません」
事務的な会話。
「あれは、どうだ?」
「娘さんですか? 問題はありません。ですが、その、よろしいので?」
若い方に、僅かに温度があらわれるが。それを一蹴するように答える。
「構わん。何度云わせるつもりだ? あんなもの、他に使い道もなかろう?」
「被検体としては、はい」
「ならばそれが全てだ。翼のない、ツァラトゥストラのなり損ない」
「…………」
「王の資格のない雑魚だ」
若い方が相手の目をのぞき込む。その奥にひとかけらの躊躇を探すように。
しかしそれは見つからず。彼はその眼から温度を失わせる。
「では、そのように。……ところで先生?」
「なにかね」
「娘さんも連れて行かれるおつもりですよね?」
「当然だ。お前は妙にあれを気にかけるようだな。気に入ったか?」
「滅相もない。ただ、先生は彼女を過剰に低く見られているのでは、と懸念していただけです」
「……失敗作だ。それ以上でも以下でもない」
以上も以下もそれを含むから、その慣用表現は、とどうでもいいことを考えた。
「そうだな。役目を終えたらあれを貰ってくれて構わんよ」
「ありがとうございます」
「烏が落ちた今、君も思っているだろう? こちらについていてよかった、と」
「そんな……。私は先生のお役に立てれば」
「うむ。だからこそ、だな。あれの使い道としては十全だ。……では、今後はあれの扱いももっと丁寧にすべきかな。君のものなのだから」
「……そうですね」
「それも全てが終わってから、だな。期待しているよ、鷺沢君」
「はい。勿論です――三鶴城先生」