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第一話 八百神姫菜 3

「せいとかいしつ へ ようこそ!」

 生徒会室(兼セカイ系以下略部室)の扉を開けると、中に居た颯汰がそうしゃべりかけてきた。

「おまえはRPGの村人か。特徴ないにも程があるだろ」

「九十九君がそう云えって云ったんじゃないか!」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「なんでさ!? いやいやいや。ノーと云えない民族代表といえどもその理不尽にはノーを突きつけますよ!?」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「いやいやいや。突きつけますから! それこそRPGの強制イベントのようにね!? はいって答えるまでイベント進ませないよ! キャラ崩壊と云われようと譲らないよ!?」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「いやいやいや。九十九君どうしたのさ!? 今日の九十九君は変だよ! 口数もモノローグも少ないなんてRPGの空気主人公じゃないんだから! フルボイスだと主人公だけ名前も呼ばれないからもう完全に空気だよね! 身振りだけとか明らかに不自然だよね!? さあ、いつもの九十九君にもどってよ、勢いだけで適当云いまくる無責任な『運命繰(あやくり)人形(にんぎょう)』に!」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「繰り返しギャグは三回までだよ! ものには限度があるんだよ! 思いつきでつまらないこと云うのとは違うんだよ!? 九十九君の取り柄は面白くなくても次々弾丸放ってくる所じゃないか! さあ、なんでもいいから他のことを云おうよ!」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「繰り返しギャ」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「繰り返」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「これ以上は無理だよ! もう僕らのライフはゼロどころかマイナスだよ! こういうのはノベルゲームの隠しテキストでやるものであってそれ以外ではやっちゃ駄目だよ! 飛ばしたい人は飛ばせるからぎりぎりで許される手法なんだよ!」

  はい

  いいえ

「………………」

「何か云ってよ! 選ばないなんて選択肢はでてないよ! テンポ! 会話はテンポなんだよ! 周りの会話聞いてみなよ。大体意味なんてないんだよ! ノリ! 勢い! テンポ! さあ! 早く!」

 →はい

  いいえ

「はい」

「って改善されてないいぃぃぃぃぃ! にやにやするなよぉぉぉ! いやがらせ? いやがらせなの? なに? 今言葉数多いから今後ターン少ないとかそういうこと? それなら尚更ちゃんと会話しようよ! 伏線張りまくろうよ! ひっこみがつかなくなって引き際見失うのは九十九君のよくない癖だよ。本当はもう普通に喋っていいと思っているんでしょう? 長文モノローグでいいんでしょう?」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「そこは『はい』だーーーっ! はぁ、はぁ……。もう僕は疲れたよ……村人らしく大人しくしてるから九十九君だけで話進めててよ……」

「何云ってるんだ。俺たち友達じゃないか。ほっといたりするものか」

「もどったーっ! よかった……」

  はい

 →いいえ

「いいえ」

「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ! これが本当に無駄会話だったら一体何なのさ! これだからテキストインフレは! 本当これちゃんと意味あるの? 後々重要な場面でリフレインされるの!? ねえ!? ゲーム脳の僕を納得させるメタ部分での仕掛けがちゃんとあるの!?」

「二択で答えにくい質問はやめようぜ」

「散々人を困らせといて『困った奴だなぁ』みたいな顔するなよぉぉぉぉぉ! だいたいこれこそ『はい』『いいえ』で答えやすい質問じゃないか! むしろこれだけだよ!」

  はい

 →いいえ

「次やったら本気で怒るよ!」

「いい……えぇ!?」

「九十九君!」

「い、いや誤解だ! 今のは違う! 最後のはなしだ!」

 危ない危ない。余計なことになるところだった。零七、マイナス一、一一、零二、な。

「…………」

 責めるようにこちらを見ている颯汰。悪ノリしすぎたか。

「わかった。今度フォローするって。頭が弱いがこれは覚えておく……なんでヒロインじゃない野郎と二人っきりのイベントフラグを立てなきゃならないんだ……」

「え? ヒロインに野郎なんているの?」

「いねぇよ。いてたまるか」

「うん。むやみに流行を追って取り入れればいいってワケじゃないと思うんだよ、僕は。そもそもテキスト量インフレだってね、あれは……」

 長くなる颯汰の話を聞かされながら、部室を眺める。

 他より広い空間。そして壁には「No MOE,No life」。もうわかったと思うけれど、これをはったのはこいつで、二次元愛好会もこいつだ。……いや、書いただけではったのは姫菜だったか。こいつの何処が「普通」なんだか。

「マニアックな趣味じゃないと思うんだけどなぁ……」

「だからモノローグをよむな」

 そんなシステムはないっつうの。モノローグだだもれじゃおちおち嘘もつけねえよ。誰にって話だが。さあ、誰にだか。

「流石にわからせようとしてるときはわかるよ。視線とか露骨だし。あ、そうだ、九十九君、例の……」

「新入部員を連れてきたわ!」

 バンッ! と音を立てる勢いでドアを開いた姫菜が部室に向かってそう叫んだ。

「あれ? 凛はいないの?」

「颯汰、続きは?」

「いや、また今度にするよ」

「気になるだろうが……」

「ちょっと無視しないでよ! 新入部員なんだって! っていうか何、男同士で秘密の話って……」

「ふふふ、俺たちの仲に何か思うことでも?」

「え? なに? 九十九君!? 僕、そういうのはちょっと……」

「何でだよ! なんで引くんだよ! そこは乗れよ! なんか俺が本当に、みたいになるじゃねえか!」

「僕、恋愛対象とは長い付き合いをする気ないんだ。フィジカルは所詮フィジカルだよ」

「さらっと最低な発言と同時にデレをぶっ込んでくるな!」

「私、六槻のほうが危ないと思うのよね」

「え? そうかなぁ……」

「褒められてねえよ!? なんなの!? お前のキャラは何処を目指してるの!? めまぐるしくてついていけねえよ!」

「あのー……私は……」

 ドアからちらちらとこちらを窺うようにしている女生徒。新入部員だそうだが、見たことな……あれ? あるかな?

「ああ、ごめんね、七花ちゃん。はいってはいって」

 そう呼ばれてはいってきた女生徒は、知らない上級生だらけの(だらけと云っても連れてきた姫菜含めて三人だが)空間に、居心地悪そうに身を縮めている。

「圭祐のストーカーを連れてきたわ! ほら、一応称号ついてからも偶然かもって様子見てたけど、どうやら本当っぽいしね」

「ストーカー……?」

 んなもん連れてくるな。女生徒に目を遣る。ストーカーっぽい見た目、というのがどういうのかはわからないが。というか、称号の話が出るあたり、である。  

「『追跡する忠狗(ディティアリアレーション・エピゴーネン)』?」

 首を傾げた颯汰に姫菜が頷く。

「そう。最初のテストからこれまで、常に圭祐の三点下をとり続ける『追跡する忠狗』よ。面白いでしょ?」

「面白いというか……」

 どういうシステムの『運』なのか、である。

「あ、あの……」

 居づらそうに俺たちを窺う『追跡する忠狗』――名前知らないんだって。「なあ、『追跡する忠狗』」とかさすがの俺でも口にしたくない。厨二病どころじゃないだろ、それ。もはや怖い。

 ……あ、さっき姫菜が名前呼んでたか。

「ああ、紹介をしないとね、七花ちゃん。そっちのがザ・普通、ミスター凡人、毒舌童顔、ゲームのNPC、『世界の中心(アベレージワールド)』六槻颯汰フロム二次元愛好会よ」

 酷い説明だった。多分毒舌童顔が一番マシ。今度虎かぶりモードじゃない時に颯汰の説明を聞いてみたい。

「で、こっち。あなたがストーキングを続けている九十九圭祐よ」

「っておい!」

 俺の説明短すぎる! もっとあるだろう! ……自分じゃ思いつかないが、もっとあるだろう! 俺の方がキャラ薄いみたいじゃないか! なにかあるはずだ!

「あなたが……え?」

 俺の顔を見た『追跡する忠狗』が目を丸くした(俺は人の名前覚えるのが苦手である)。

 瞳が大きいので、割と本当に丸い。

「あ、あのっ! 何処かで会った事ありませんか!?」

「へ?」

 ずい、と身を乗り出す女生徒。

「点数が先輩を追いかけていたのは、きっとこうして出会う為です!」

 興奮気味にこちらに近寄ってくる。触れあうほどの距離。俺は別にほら、そんなに耐性が無いとかじゃないし? そうでもないよ、ないんだけどやっぱりちょっとドキドキした。

「点数なんて偶然だと思ってました。でも、偶然だって重なれば運命です。運命の人ですっ!」

「あ、あの……えっと?」

 勢いに押されながら首をかしげる。

「好きです、ずっと前から。今この瞬間、もっと好きになりました。年齢なんて関係ありません。好きです、先輩――」


 ぴしっ、と音を立てて空気が凍った。


 で。

 後から凛を交えて喧々囂々、俺は右往左往、七花は悠々自適、颯汰は悠々閑々、姫菜は勇往邁進、右往左往の右往って「うおう」とか驚いているみたいだよね、と現実逃避とかしてみたり。

 ……なんか、最近こんなのばかりだな。


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