幕間Ⅴ
幕間Ⅴ
「予想通りだな、鷲見君」
「でしょうね。さて、妹を返してもらいましょうか、鷺沢さん」
ついでにあの老害も殺しておきますよ、と呟きながら鷲見が睨みつける。
上りと下り、それぞれの階段を背にした二人。
「そうもいかなくてね。君には眠っていてもらおうか」
と、互いに銃を向けている。
長かった。実に。
生きてきた時間の殆どを復讐にあてていた。
それももうすぐ終わる。
あとは、そう。父親だった男――三鶴城正城さえ殺せば全て。
全ての手はずは整えた。
長い時間と資金。鷲見の名前。自らの知能の全て。
電話一本で、三鶴城の全ては崩れ去る。三鶴城正城さえ居なければ。
自身の全てを注いでも。巨魁、三鶴城正城だけは打ち倒せない。そう悟った。
本来ならば終わるところまでは準備した。しかし。
三鶴城正城であれば、そこからでも立て直すだろう。
だから、あの男だけは。
この手で殺さなければならない。
あの男自ら。隔絶された空間に入ったこの好機に。
「どいて下さい、鷺沢さん。正城亡き後の三鶴城は、あなたに差し上げましょう」
鷺沢も優秀な人間だ。しかし、所詮は優秀。
全てが終わった後のことなど、どうでもいい。
「権力など、財力など、とうに手にしている。自ら歩んでいける程度の道、私には不要なのだよ、鷲見君。凡人ごとき、私自身程度で歩いていける道など、見るまでもなく知っている。
私は、だ鷲見君。三鶴城先生の創る世界を見たいのだよ。君や私のような、凡人ではない超人の創る景色を」
だから君は邪魔なのだ、と。銃を握る手に力を込める。
距離は近づいていた。鷲見は部屋の中央程まで足を進めている。
「そこをどけ、狗」
「退け、落伍者」
互いに銃を突きつけ合う。指が――動いた。
銃声は一発分。
片方が崩れ落ちる。