第五話
ゲームだとグラフィックとして描かれている建造物や地形は不変である
建物の中で炎魔法を撃ちまくっても火事にはならない
だが現実では違う
現実のようで現実ではなかったオンラインゲームの世界が
現実じゃないようで現実のな世界になったことにまだ適応できてなかった
マリチの落とした星々のかけらは村のオークたちを蹂躙したが、それと同時に村の地形をも変えてしまった
「……どうせオークどもに破壊され、いたるところが汚染されていたので構いませんよ」
「むしろこれで一からやり直せます!」
村出身の二人は気丈にもそう言ってくれていたが、騎士小隊長(名前をようやく知ったが、クリクラさんというらしい)は違っていた
「この度の任務はあなた方のおかげで見事完遂できました。が、目に余る破壊行為、じゃなかった、積極的な攻撃行動および教会の損壊について、少し本部の指示を仰ぎたいと思います。あ、いえ、お二人のことを悪く言うつもりもありませんが、その、あまりにもなんといいますか、規格外の戦闘力というか……」
かなり言葉を選んで無理やりフォローしている様子が伝わってくるが、どう好意的に解釈しても『やりすぎでやばい奴らなので本国に通報したい』と言っているように聞こえる
「今回の件にあたって、報酬や国家認定証の授与などに関しては……」
クリクラが形式的に話を進め始めたのをみて俺は素早くマリチに目配せした
一瞬で魔法陣が出現する
「あ、忙しいのでまた!!」
ブォォオン
すかさず転移魔法で逃亡する我々
「あ、待ちなさい!」
とっさに手を伸ばしてきたクリクラの手をかわしてなんとか脱出した
とりあえず到着したここはマリチの家の庭
「クリクラさんはなんか言ってたけど俺たち既に持ってんだよなあ」
「じゃん。国家最高レベル冒険者名誉証書」
マリチは白銀に光るカードを空中に浮かび上がらせた
「ほーー。こんな感じに出せるんだ」
俺も手のひらを上に向けて出してみる
なるほど所持品はこんな感じで取り出せばいいのか
こっちの世界は便利すぎる
全身皮剥ぎオークを倒してもらえるのは『国家認定冒険者の証・初級』
だが俺たちはすべての国ですべてのミッションを既に制覇しており
社会地位としてもマスタークラスなのだ
ただ……まだこの新しい世界の仕組みがわかっていない今の段階だと、もうしばらくは自由に動き回っていたいのであえて国家権力から離れる行動をとった
「ところでヨーイチ。扉は?」
そういえばそうだ
マリチに言われて俺は家の裏にある巨大な木の下に向かった
「あ!」
「マリチには見えないけど、あるんだね。例の扉が」
俺は静かにうなづき、扉の取っ手に手をかけた
そしてゆっくり開きながらマリチの方を振り返る
彼女はにっこりしながら手を振った
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ドアをくぐるとまばゆい光に包まれ、一瞬吸い込まれるような感触になる
その後、目が覚めるような青空が視界に入り……
「えっ?」
俺は空の上に出た
「もしかしてドアの向こう側はまさかのランダム配置!!?」
マズイ。魔導士系のジョブであれば何とでもなりそうだが、今はルーンナイト
いちおうサブクラスというシステムがあり、もう一つ予備クラス『ブロックナイト』がついているのだがこの現状を打破するには……?
今自分の体制がどうなってるか最早わからないが、ものすごい速さで落下しているのだけは確かだ
「イチかバチか!絶対防御!!」
少しでも早い方がいいと判断し、俺はサブクラスのアビリティ『物理攻撃無効』を発動させた
その直後
ズドンッッッ!!
地面?に落ちた
ものすごい土煙が巻き起こり、周囲にはちょっとしたクレーターができている
「耐えた……か」
どれほどの高さから落ちたかはわからないが、時間にしておそらく10秒
空気抵抗があるから実際にはわからないが、500メートルぐらいは落ちたか
ざっくり計算すると速度はおよそ時速300キロちょい
てことは時速300キロの土の塊にぶつかっても無傷でいられることが証明されたわけだ
(アビリティ使用という条件下ではあるが)
土煙も晴れてきた頃合いを見て、俺は自分が作ったクレーターから這い上がった
ザワ……
ん?人がいる
そしてこっちを驚きの目で見つめている
周囲を見渡した感じ、ここは神社の境内とかそんな感じの場所だ
という事は俺は神社の杜に落ちてきた人、みたいに思われてる?
俺は周りに集まりつつあった人たちと一切目を合わせず、クレーターの中にそっと引き返すと、手のひらを上に向けて転移魔法の呪符(一回限りの消耗品)を出す
ブォォォン
我ながら英断である
頭の中で思い浮かべたのは独り暮らしの自分のアパート
実は一瞬ソーファン世界の街を想像したのだが、上手くいかなかったのだ
つまりこっちの世界とあっちの世界は転移魔法では移動できないという事だ
そして現実世界は何が起こるかわからないので、サブクラスには汎用性の強い
『魔法学者』を設定しておこう
魔法学者は、攻撃魔法、回復魔法、補助魔法を切り替えて使うことができる便利なクラスだ
切り替えるのに一瞬の魔導書切り替えが必要(数秒)
だがメインクラスがナイト系なら堅いから何とかなるだろう
しかし改めて現実に戻ってきたが、こっちでは普通に生きている限り命の危険はないし、謙虚に生きている限り誰かに責められることもない
異世界の力を自由に行使できるというのに特に何かをしたいこともない
いろんなところを旅したりは面白そうだが行ったことのある場所しか転移できないし
別に誰か復讐したい相手もいない……
いや、いた!
目の前に!!
なんかいるーーー!!
フゴゴゴ
オークがいる。うちのベランダに
扉はもうないけど、もしかして……通ってきた?
もしくはまた別のルートがある?
「?」
「あ」
目が合った
一瞬間があったが手に持っている斧を振りかぶって襲い掛かっ……
ガン
部屋の天井に当たって部品が飛び散る!!
「オイイイイイ!」
ゴス
とっさに拳で殴ったら、オークの上半身は爆散した
ぐら……
うわ、床汚れるのヤバそうだな……
と思ったら、オークの身体は少しずつ光になって消えた
くそ……アパートの修理……敷金……
いやそれよりも、もしかして向こうからもこっちにモンスターたちが侵入してこれるのはヤバいな




