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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第一章:まっかっかさん ――
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【010】雨

 ぼくは青い大きなカサを差して、一人下校している。

 今日は、お気に入りのTシャツを着ている。亮にいちゃんが、ピシッとするようにアイロンをかけてくれたTシャツは、真っ赤な色をしていて、中央に黒と白の〝陰陽マーク〟が描いてある。おたまじゃくしを重ねたみたいなかたちで、『おんみょうじ』みたいだ。


 青い傘も、〝大人〟のカサだ。なんていっても、お父さんとおそろいだ。

 六年生になったお祝いの買ってもらった。


 今は、つゆの時期だから、カサを使うときは、いっぱいある。


「ん?」


 ぼくは立ち止まる。ぼくが進む歩道の正面に、赤いカサをさしている子が立っていたからだ。赤い上着で、ズボンも長靴も真っ赤だ。カサが小さく角度を変えると、その子と目があった。青白い顔をしていて、大きな目がぼくをじっと見ている。人形みたいな表情をしていて、ぼくは〝ケゲン〟に思って首をカタの方に動かした。


「……」

「どうかした?」


 ぼくが聞くと、その子はじっとぼくの胸の辺りを見た。 

 そしてふるふると首を振ると、ぼくの横をすり抜けて、何も言わずに歩いていった。

 不思議な気分で、ぼくは振り返ってその子を見ていた。

 男の子にも、女の子にも見える、ガリガリの子供だった。


「帰ろう」


 僕はひとりごとを言って、家へと戻った。すると亮にいちゃんが、キッチンでお玉を持ち上げて、横にいるお父さんと話していた。ぼくは静かに家に入ったから、二人はぼくに気づいていないみたいだ。


「亮。きみは俺の子だ。だからなにも気にすることはないんだよ」

「でも……」

「崎保の家のことなど、もう気にすることはない」


 お父さんの声は、言い聞かせるようなものだった。いつも明るい亮にいちゃんが、何も言えないようで、鍋の中をじっと見始めた。


 ……崎保?

 それは、透くんの名字とおんなじだ。なにか、関係があるのだろうか。

 キッチンに、気まずい空気が流れている気がしたから、ぼくは今帰ってきたふりをすることに決める。ぼくは〝大人〟だから、聞いていないふりをして、その場の空気を変えようと思った。


「ただいまー!」


 するとビクリとしてから、そろって二人が振り返った。

 そしてぼくを見ると、さっきまでの気まずい空気なんかなかったように、二人も笑顔になった。ぼくも両頬を持ち上げる。


「おかえり、瑛。今日はビーフシチューだぞ」

「やったぁ。亮にいちゃんのビーフシチュー、大好き」

「亮は本当に料理上手だと、父さんも思うよ。いい香りがするなぁ」


 変わった空気に、ぼくは満足した。その頃には、すれ違った真っ赤な子のことなんて、すっかり忘れていた。

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