表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称・未来人の幼馴染  作者: 千夏ケイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

第7話 幼馴染は不意打ちに弱そう

 教室についた。善は急げと走って行ったはいいが、さすがに疲れた。

 荷物のせいもあり、結構息切れしている。

 ただ、荷物を置いて教室を見回しても祐奈の姿はない。


 そういえば、今日の日直は祐奈だったか。

 また花瓶でも洗っているのだろう。

 

 祐奈は、クラスで一番花瓶をきれいに洗うことで有名だ。

 彼女が日直の日は、花瓶が輝いて存在感が3倍以上になる。

 負けじと俺も日直の日にしっかり洗ったものの、とてもじゃないが勝ち目がなかった。

 正直、レベルが違う。

 

 祐奈曰く、「想いが全然足りない」とのこと。

 自分の物ならともかく、これは先生のもの。

 それも置かれて数か月の教室の花瓶にどうやったら思い入れができるのだろうか。

 

 いや、想いって花瓶へのじゃなくて、祐奈に勝ちたいという想いか?

 それなら十分にあるはずなんだが……

 それもまだ足りない、ということなのだろうか。

 

 なんにせよ、祐奈の考えることはたまによくわからなくなる。


「あっ、やっぱりいた」


 教室を出て、洗い場に行くと予想通り祐奈を見つけた。

 ちょうど花瓶を洗い終えたところのようで、光り輝く花瓶を布で拭いている。

 ……なんかあの花瓶、いつもよりも輝いていないか?

 追いつけもしないのに、また一歩腕を上げたのか……

 

 まぁ、いい。今日の話題は花瓶じゃない。

 祐奈に話しかけようと、俺は近づいていく。


「ダメ、だよね」


 その時、かすかな声だが、祐奈の呟きが聞こえた。

 何がダメなんだろうか。ダメな要素なんて、どこにもない。

 実際、祐奈が抱えている花瓶は、俺が主役だと言わんばかりに輝いているではないか。

 

「何がダメなんだ?」

「えっ!?」


 だから、聞いてみることにした。

 勉強でもそうだが、わからないことがあれば、すぐ人に聞いたり、調べたりすることが大切だ。


 祐奈はまさか聞いている人がいると思わなかったのか、めちゃくちゃビックリしている。

 とはいえ、花瓶だけは落とさないようギュッと抱きしめてはいるが。

 

 こんなに驚いた顔を見るのは久しぶり……いや、意外と初めてかもしれない。

 幼馴染なのに、ずっと昔から一緒にいるのに、祐奈のこんな顔は見たことがなかった。ちょっとビックリだ。

 まぁ、集中しているときにいきなり話しかけられたら驚きもするか。

 祐奈も人間。変なことじゃない。

 

 しかし、驚かせるつもりは毛頭無かったとはいえ、なんだか申し訳ない気持ちになる。


「あれ、今、ダメとか言ってなかったか?」


 が、それとこれとは別。ここは追及を続けることにする。

 

 だって、気になるでしょ。

 普段、『私、何でも知ってま~す』みたいな顔をしているめちゃくちゃポジティブな幼馴染が、『ダメだよね』とかいうネガティブな発言しているんだぞ?


 対する祐奈はというと、「あー」とか「んー」とか言いながら、目を泳がせている。

 誰の目から見ても、焦っているのは一目瞭然だ。

 

 あれ? 最初はただ気になっただけではあったが、この『ダメだよね』発言、実は祐奈の弱点じゃないのか?

 ここを突けば、人生初の勝利を得られるかもしれん。

 

 そう思った俺は、祐奈に対する追撃を——


「いや、聞き間違いかもしれん。ごめんな」


 ——行わなかった。


 人には誰しも秘密があるものだ。

 俺にだって秘密はある。

 例えば、さっきタツと一緒に考えた作戦もそうだ。

 恋愛作戦なんて知られたら終わりだろう。

 

 俺は正々堂々と正面から戦って勝ちたい。

 一度、秘密を暴いて弱みを握ってしまうと、もうそれは叶わなくなる。

 弱みを握られた、という精神状態では、100%のパフォーマンスなんて出せるはずないからだ。

 

 何が『ダメ』なのか気にはなるが……秘密のままでいいだろう。

 この狼狽えようだ。祐奈もきっと、それを望んでいる。


「ソウナンダー。モウ、シッカリシテヨネー」


 めちゃくちゃ棒読みじゃねぇか。

 こっちは気を使って気のせいにしたんだから、隠すならちゃんと隠してほしい。本当に。


 しかし、こんなにも予想外のことに弱いとは思わなかった。

 すべてを知っているように振る舞ういつもの様子とはまるで違う。

 もしかすると、ここに勝機があるのかもしれん。


 というか、今までの勝負は全部予想の範囲内だったってことなのか?

 それはそれでムカつくな。掌で転がされているようで。


 文句の1つでも言ってやるかと口を開きかけたが……そこで俺は思い出した。

 当初の目的——祐奈を好きになるということを。

 

 そうだ、こんなことしている場合じゃない。なんのために遅刻寸前でもないのに走ってきたんだ。

 驚かせるためだけにわざわざ体力を使ったんじゃない。

 思い出せてよかった。危ないところだった。


 ただ、祐奈を急に好きになるのは難しい。

 そりゃ、幼馴染としては好きだ。

 これからも仲良くしたいし、ずっと一緒にいたい。


 だが、それが恋愛的な好きかと言われると……否と答えるほかない。

 恐らく、この好きは家族に対する“好き”と同じ“好き”なんだろう。

 一緒にいる時間があまりにも長がすぎた弊害だ。

 

 しかし、今回の恋愛作戦はかなり良い手。

 もしかすると、これまでで一番勝つ確率が高いかもしれない。

 だからこそ、この作戦を最大限実行し、勝利を収めるにはそこを変える必要がある。


「で、幼馴染を朝から驚かせて何か用?」


 だったら、何をするべきか。

 少し考えてしまったが、良い案を見つけ出すことができた。


「あぁ。うまく言えないんだけど……俺、祐奈のことがもっと知りたい」


 古今東西、恋愛を始めるには、まず相手のことを知らなければ始まらない。

 家族としての好きを変えるには、今まで知らなかった祐奈の一面を知っていくしかない。


 祐奈、俺に恋愛感情を持たせてくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ