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自称・未来人の幼馴染  作者: 千夏ケイ


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6/10

第6話 友達に相談するのは素晴らしい

 色々考えてくれていたタツもあまり良い案が思い浮かばず、俺たちは学校へと歩いていく。

 しかし、俺の心はタツに会うまでより晴れやかだった。

 良い案は出ずとも、誰かに話すとここまで気持ちが楽になるのか。

 相談という行為の大切さがわかった。


「あ、そういえば……宏樹と東川さんって幼馴染だったんだな」


 話したときに眉一つ動かさなかったタツが唐突にこんなことを言い始めた。

 

 表情に出なかっただけで、本当は驚いていたのか?

 だとしたら、ものすごいポーカーフェイスだぞ。

 

「そうなんだよ。全く、優秀な幼馴染を持つと困ったもんだ」

「なるほど。幼馴染って何かと比べられがちだろうしな。小さいころからそれじゃ、タツが面倒くさい人間になるのも無理ないか」


 タツが同情と心配が合わさった顔でこちらを見てくる。

 が、それは無意味だ。

 

「ん? そんなことはないぞ。確かに祐奈は優秀だけど、それで比べられたことは一度もない」


 「は?」という、タツの声が聞こえた。

 なんか、不思議な生き物を見る目で見られている気がする。


「比べられるのにうんざりして、打ち勝とうとしているんじゃないのか?」

「いや? ただ、勝ちたいだけ」

「んん? じゃあ、なんで勝ちたいんだ?」

「そりゃ、負け続けているからに決まっているだろ」


 ほかにあえて理由をつけるなら、プライドが許さない程度なものだ。

 

「……勝つことで得るものは?」

「ないな、なんの賭けもしてないし。もしあるとすれば……自尊心ぐらいなもんじゃないのか? 祐奈に勝ったことないから、わからんけども」


 嘘は1つも言っていない。

 

 親や妹から「頑張ってね」と言われてことはっても、「勝ってね」なんて言われたことはない。

 家族が言うには、祐奈は祐奈、俺は俺。勝とうが負けようがそれは変わらないとのこと。

 良い家族に恵まれたものだ。


「なぁ、勉強以外で勝つのはダメなのか?」

「それでもいいが、勉強以外となると運動か? それはちょっと、なぁ……」


 一見すると運動で勝利を目指すのは最適な選択にみえるだろう。

 競技さえしっかりと選べば、いくらスポーツ万能な祐奈とはいえ、勝利の目は大いにあるはずだ。

 昔、かけっこで負けたリベンジにもなるし、悪くない選択だ。


 ただ、俺は男性で、祐奈は女性。

 小さい頃ならともかく、もう高校生だ。この年代にもなるとどうしても体格差がある。

 そんなハンデがある勝負で、本当に勝ったと言えるだろうか? 心から喜べるだろうか?

 

 俺は祐奈に勝てれば何でもいいというわけではない。

 対等に、正々堂々と戦ったうえで、勝利を収めたいのだ。

 

 それに、そんなハンデがある中で万が一負けた時を考えると……あまりにも怖すぎる。

 わずかに残る自尊心すらも砕け散りそうだ。


「違うって。男女の争いと言ったら、恋愛だろ?」


 なんだこいつ。意味が分からないことを言い出したぞ。

 やはり、タツに話したのは間違いだったかもしれない。

 

「タツ……お前のこと結構頭がいい奴だと思っていたけど、バカなんだな」

「おいおい、なんか変な誤解してんな。ほら、惚れたら負けだとか先に好きになった方が負けとかよく言われてるじゃん」

「まぁ、聞いたことはあるな。それで?」

「昔から言われていて、何パターンも言い回しがあるんだ。だったら、それはもう真理に近いとは思わないか?」


 何をバカなことを、と言おうとして、やめた。

 タツの言い分も一理あるからだ。


 俺たちは高校1年生に過ぎない。成人すら迎えていない未熟な人間だ。

 時代の移り変わりが激しい現代においても、先人の言葉には、多少なりとも学ぶべきところがあるのではないだろうか。

 俺の人生は長く続く。

 全然違ったじゃんか、とバカにするのは、失敗してからでもまだ遅くないかもしれない。


「なるほどな。まぁ、言いたいことはわかった。勉強よりも勝ち目はあるかもしれんし、挑戦してみてもいいかもな」

「そうか! いやぁ、良かった。良いアドバイスができて俺も嬉しいよ」


 なんだかんだ言ったが、タツはいい奴なんだな。

 友達とはいえ、出会って数ヶ月の人間の悩みをここまで聞いてくれる奴なんてほとんどいないだろう。

 

「ありがとうな」

「いいってことよ。それに1回やってみたかったんだよな、友達の悩み相談ってやつ」

 

 ……正直だな、タツは。まぁ、その誠実さもまた美点と言えるのだろうが。


 ん? 待てよ? 誠実さ……?


「おい! この作戦の欠点が見つかったぞ」

「え? どうした急に。負けた時の代償が大きいって事か?」

「違う、祐奈にめちゃくちゃ失礼ってことだ」


 そうだ。危うくとんでもないことをするところだった。


 好きでもない女の子を惚れさせるなんて、あまりにも非道ではないか。

 

 極端に考えれば、それは結婚詐欺と同じ行為。犯罪だ。

 誰かの心を弄ぶ、というのは人が絶対にしてはいけない行為じゃないか。

 

 何とか気付いてよかった。

 胸を張って「俺の勝ち」と言えなくなるどころか、危うく最低な人間になるところだった。

 

 ただ、恋愛で攻める、という案自体は悪くない。

 

 祐奈が彼氏を作ったなんて話は聞いたことがないし、恐らく恋愛に関しては俺と同レベルなはず。

 他のものよりも勝ち目はあるかもしれない。


 そして、運の良いことに俺はこの作戦を非道じゃなくする方法を思いついた。それは——


「最低男にならないよう、まずは俺が祐奈のことを好きにならないとだな。そうと決まれば、善は急げだ。ちょっと祐奈に会ってくる!」


 ——祐奈を好きになること。


 好きな人を惚れさせるために動くのは至極当然のこと。

 そこに非道さなんてものは皆無なのだ。

 

 最高の結論にたどり着いた俺は、過去最大のやる気とともに走り出した。


「はぁ!? それじゃあ、宏樹の負けになるだろうが! それにこれは冗談のつもりで……って、聞いてねぇし」


 立ち止まって何か喋っていそうなタツを置いて。

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