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自称・未来人の幼馴染  作者: 千夏ケイ


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第14話 俺は友人に見捨てられ、後輩に出会う

「いや、なんというか……う~ん……」

「タツ、頼む! この前みたいになんとか……!」

「といわれてもだな、これは……」


 終業式中ずっと放心状態だった俺を見かねてか、タツが俺の話を聞いてくれた。

 もう放課後だからわざわざ残る必要はないのに……なんていいやつなんだ。

 だが、話を聞き終えたタツはずっと唸っている。


 こんな反応になるのも仕方ない。

 俺だって、友達から「変顔していたら幼馴染に見られて、逃げられるほどドン引きされた」なんて相談にどう返せばいいかわからない。

 「変顔があまりにも気持ち悪かったんじゃない?」と直球で言えば、さらに落ち込ませてしまう。


 かと言って下手にフォローすると増長して、気持ち悪い変顔の被害者をいたずらに増やしてしまうだけだろう。

 こんな難しい相談をしてしまって申し訳ないとは思う。

 でも……タツ、お前しか頼れる人はいないんだ。

 俺、ボッチだから。


「すまん、俺には無理だ」

「お、おい! 俺を見捨てるのかよ」

「完全に見捨てるってわけじゃないが……今回に関してはそうだな。ちょっと気になることもできたし」

「まじかよ……」

「まぁ、夏休みに遊ぶ約束しているんだろ? そこで頑張ればいいさ」


 結局タツは俺に何のアドバイスやフォローも言わず、肩をポンッと叩いて去っていってしまった。

 めちゃくちゃ悩んだせいか、眉間にしわが寄ってしまっている。本当にすまん。


 しかし……頭の良さと友達の多さを両方兼ね備えたあのタツでも投げ出してしまうのだ。

 もはや時間が解決してくれるのを待つしかないというのか。


 でも、もし時間でも解決できなければ……?

 時間がたっても、俺の変顔がちらついて避けられるようになったら……?

 こんなことでもう、祐奈と疎遠になってしまったら……?


 夏休みに遊ぶ約束はしたとはいえ、所詮は約束。

 祐奈が本気で嫌がればそんなの無効化されるに決まっている。


 祐奈は大切な幼馴染。高校生でもう話せなくなるなんて絶対に嫌だ。

 お互いの大学生活について語り合いたいし、社会に出てからも気軽に会える関係でいたい。

 変顔なんかでこの幼馴染という特別な関係を終えるわけにはいかないのだ。


 朝からずっとこんな精神状態だったから、終業式おなじみの校長先生や担任の先生からのありがたい話はほとんど覚えていない。

 でもまぁ、「夏は水難事故に気を付けて~」とか「始業式の日に元気な姿を見せてね~」みたいな話だったと思う。小学校や中学校でもずっと聞いてきた言葉だ。

 確かに肝に銘じなければならない大切なことであり、様々な人が毎年繰り返し言うのも納得できる。

 

 しかし、今の俺はそれどころじゃないのだ。俺の心はただ一つ。


(夏休み遊んでくれることを信じてさっさと帰ろう……)


 この一心だった。


 他のクラスメイト達がまだ夏休みの予定をワイワイと話し合う中、素早く帰宅の準備を整えて下駄箱を通り、校門までついた。

 ちなみにこの間誰にも話しかけられていない。

 帰りたいときにすぐ帰れるというのはぼっちの利点だと思う。

 ……悲しいけど。


 ふと気になって、校舎に目線を向ける。

 太陽に照らされて輝く校舎はとても美しいと感じた。

 

 明日から1か月程度来なくていいからだろうか……?

 自分でもなぜかよくわからないが、少し見ておきたかったのだ。

 早く帰らなければいけないのに。卒業というわけでもないのに。

 来年の同じ時期もほとんど変わらない光景がまた見られるというのに。


 この月ヶ丘高校、実績も十分ある県内有数の進学校ということもあり、両家のご子息・ご令嬢が入学してくることもあるそうだ。

 そのおかげで、寄付も多く、他と比べても良い校舎となっている。

 流石に本物のお嬢様学校の足元には遠く及ばないし、部室棟など手が回っていないところはあるが。


「ここから2年以上同じ光景を見るってのに何を——」

「あれ? 先輩じゃないですか?」


 独り言をつぶやいていると、急に声をかけられた。女性の声だ。

 高校で俺に声をかける女性なんて、祐奈以外ありえない。

 まずい、今はまだ祐奈と話すべきではない。

 校舎なんか見ずにさっさと帰ればよかった。


(……先輩?)


 俺は高校1年生。当然、後輩なんかいるはずもない。

 疑問に思い、声の方向を見ると——


 「やっぱり先輩じゃないですか。お久しぶりです」


 ——関口翼。中学時代の後輩がそこに立っていた。


「……関口か?」

「はいっ! あなたの後輩、翼ちゃんですよ!」


 なぜか俺の周りをくるくる周りながら関口が答えた。

 太陽の光が反射してきれいな天使の輪ができている黒髪ショートの髪がフワリと揺れる。


「なぁ、関口」

「どうしましたか?」

「なんで俺の周りをぐるぐる回っているんだ?」

「そりゃ久しぶりの先輩ですから! くるくる回りたくなっちゃうのは後輩の性ってやつです!」


 全国の後輩に謝ってほしい。

 久しぶりに会ったからと言って逃がさないように周り続けるのは関口だけだと思う。


「……あそこ、何やっているんだろう」

「中学生を周らせるなんて、どういう趣味なのかしら……?」

「よく知らないけど、あの人危ない人なんじゃない?」


 下校するほかの生徒たちの注目が集まってしまう。

 俺やらせていないのに……とんでもない風評被害だ。

 しかもコイツはずっと周ることだけに集中しているのか周囲の噂に気付いていないし。


「関口! 場所を変えよう。ここじゃ俺が社会的に終わる」


 俺の言葉に関口がようやく止まる。

 少し不思議そうな顔をしていたが、急に顔が赤く染めあがった。

 

「……まぁ、いいですよ。先輩とならどこでもついていきます」


 なんかもじもじしているし……

 

 どうしてだろう、と考えたところで1つだけ理由が思い浮かんだ。

 

 ……もしかして、放課後デートと勘違いされてる?

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