憧れとレイン
「……久しぶりだな、アルト。」
「……なんで、お前がここに。」
「君の視界、ずっと借りてたからさ。そろそろ、直接話したくなった。」
「盗み見てたってことか。」
「見守ってたって言ってほしいな。君が“あれ”を起動させた日から、ずっと。」
「……俺は、世界を壊した。」
「でも、君はまだ“直そう”としてる。そこが、君らしい。」
「お前は……何を見てたんだ、俺の中に。」
「“二番目”の僕が、ずっと欲しかったもの。君は、それを持ってた。」
路地裏で僕らは出会った。
彼はスターだ。この路地裏に帰ってきても。
俺はどうすることもできない。
彼がどんなことをしていても。
雨のしずくが、路地の石畳を静かに叩いていた。 アルトはレインの横顔を見つめながら、問いかける。
「お前は、なんで“二番目”なんだ。」
「……この大陸で一番強いのは、“神の粉”を売るあの人だよ。」
「粉屋が、最強?」
「あの人の粉は、記憶を削る。感情をねじ曲げる。魔法が消えた今、唯一“奇跡”を起こせるのは、あの粉だけだ。」
「お前は、それを使わないのか?」
「使わない。使えば、俺は一番になれる。でも、それじゃ意味がない。」
「……なぜ。」
「俺は、君を見てた。君は、壊した世界を直そうとしてる。 俺は、壊れた世界で“誰かの光”になりたかった。でも、粉に頼ったら、それは偽物だろ?」
「だから、二番目でいいって?」
「いや、二番目で“いたい”んだ。君がいる限り、俺はそれでいい。」
レインは静かに、アルトの肩に手を置いた。
「君は、あの日のことを覚えてないんだろう?」
「……あの日?」
「“タツキ”が暴走した日。君は、装置を止めるために、自分の記憶を代償にしたんだ。」
「俺が……?」
「魔力を均す装置は、記憶と魔力をリンクさせていた。君は、世界を守るために、自分の“過去”を差し出したんだよ。」
「……だから、俺は何も思い出せないのか。」
「でも、君の中にはまだ残ってる。“誰かを守りたい”って気持ちだけが。」
突然、路地の奥から重い足音が響く。 闇の中から現れたのは、神の粉を支配する“路地裏のボス”
「お前ら、俺の世界で好き勝手やってくれるなよ。」
ボスはナイフを抜き、アルトに向かって突進する。 だが、その刹那──
「下がってろ、アルト。」
レインの手が光を放ち、空間が歪む。 彼の異能力が、ボスの動きを読み切る。
「“視界共有・全域展開”──!」
ナイフが空を切り、レインの一撃がボスを地面に沈める。
ボスが倒れ、静寂が戻る。 アルトは、胸の奥からこみ上げる感情に突き動かされる。
「……タツキ!!」
その名を叫んだ瞬間、空の彼方で何かが微かに光った。




