34.光と影の勝利
「イヴァン!突破口を開いてくれ!レオン、側面から敵を攪乱しろ!」
カケルが指示を出す。彼の『連鎖反応予測』が、兵士たちの布陣の弱点を正確に捉えていた。
「任せとけ!」
イヴァンは、咆哮と共に評議会の精鋭部隊へと突進した。彼の巨体から放たれる拳の一撃は、強化装甲をも貫き、兵士たちを軽々と吹き飛ばす。彼が通った後には、なぎ倒された兵士たちの山が築かれていく。
その隙を縫うように、レオンは影のように兵士たちの背後へと回り込んだ。彼の動きは驚くほど静かで、まるで存在しないかのようだ。彼は兵士たちの武器を奪い、連携を寸断し、一人また一人と無力化していく。彼のナイフは、兵士たちのセンサーや通信装置を的確に破壊し、混乱を増幅させていく。
「ミリアム!敵の増援は!?」
カケルは、周囲の状況をミリアムに問いかけた。
「右奥の通路から、さらに重武装した兵士が来る!でも、セラフィナが上から援護してくれてる!イヴァン、そっちに注意して!」
ミリアムの声が、混戦の中で正確な情報をもたらす。彼女の『音』は、兵士たちの足音、銃器の作動音、そして彼らの心拍の乱れさえも感知し、カケルたちに伝えていた。
ハブの天井から、セラフィナの放つ光弾が正確に降り注ぐ。それは兵士たちの武器を破壊し、動きを封じ、時には彼らを囲むシールドを一時的に機能停止させた。彼女の援護射撃は、カケルたちの進撃を確実なものにしていた。評議会の兵士たちは、どこから攻撃されているのか分からず、混乱に陥っていた。
「くそっ、どこから撃っているんだ!?」
兵士の一人が叫んだ。
その時、ハブのコアへと続く最後の扉の前に、重武装した評議会の幹部数名が立ちはだかった。彼らは、ゾルダンの最側近であり、評議会の最高戦力と目される者たちだ。
「ここから先は、一歩も通さない!」
彼らは、一斉にエネルギーウェポンを構えた。
「させるか!」
カケルは、自らの『連鎖反応予測』を最大に集中させ、彼らの動きを先読みした。彼は、幹部たちの攻撃パターンを予測し、その間隙を縫って、わずかな隙を作り出す。
レオンが、その隙を逃さなかった。彼は一瞬で幹部の背後に回り込み、彼らの武器を奪い取り、動きを封じた。イヴァンは、残りの幹部たちに猛攻を仕掛け、彼らを圧倒する。ミリアムは、彼らの動きの乱れを感知し、カケルに正確な指示を送る。
「コアへの扉が開いたぞ!」
ノアの声が響いた。彼のハッキングにより、最後の扉のロックが解除されたのだ。
ハブの最深部に足を踏み入れると、そこはスターゲート・ハブの制御コアだった。空間の中心には、巨大なクリスタルが光を放ち、そこから無数のケーブルが周囲のコンソールへと伸びていた。そして、そのクリスタルの前に、ゲイル・ゾルダンが立っていた。彼は、巨大なエネルギーを放つクリスタルに手をかざし、スターゲートの転送を加速させていた。彼の顔には、自らの野望を成就させようとする、狂気にも似た高揚感が浮かんでいた。
「来たか……愚かな者たちよ」
ゾルダンは、ゆっくりと振り返った。彼の全身からは、圧倒的な威圧感が放たれている。まるで、彼自身が、このスターゲート・ハブの管理者であるかのように。
「ゲイル・ゾルダン!もう終わりだ!お前たちの野望は、ここで潰える!」
カケルが叫んだ。彼の声は、クリスタルの轟音にかき消されそうになる。
「終わりだと?フン……。貴様らごときが、歴史の流れを止められるとでも思うか!私がこのハブの力を完全に掌握すれば、惑星連邦は瞬時に瓦解する!そして、新たな秩序が、我が『影の評議会』によって築かれるのだ!」
ゾルダンは、クリスタルにさらに強く手をかざした。スターゲート・ハブの光がさらに激しくなり、転送されてくる兵士の数が飛躍的に増大していく。
「させない!」
レオンは、ゾルダンに向かって飛びかかった。彼の動きは、影のように素早く、ゾルダンへと迫る。しかし、ゾルダンは、彼の動きを予測していたかのように、腕を振るった。ゾルダンの指先から、目に見えない衝撃波が放たれ、レオンは吹き飛ばされた。
「くそっ、見えない壁がある!」
レオンは、床に叩きつけられながら呻いた。ゾルダンの周囲には、高出力のエネルギーシールドが展開されているのだ。
「フン……愚か者が。この私が、貴様ごときに直接手を下す必要などない」
ゾルダンは冷笑を浮かべ、評議会の精鋭兵士たちに指示を出す。
「排除しろ!彼らをこの世から消し去るのだ!」
ゾルダンの指示と共に、精鋭兵士たちがカケルたちに一斉に襲いかかった。彼らの武器は、これまでの兵士たちのものとは比較にならないほど強力で、連携も完璧だった。
「イヴァン!ミリアム!レオン!奴らを食い止めろ!俺はゾルダンのシールドを破る!」
カケルは叫んだ。
イヴァンは、精鋭兵士たちの攻撃を受け止めながら、力強い咆哮を上げた。
「これ以上は通さねえぞ!お前らの好きにはさせねえ!」
ミリアムは、精鋭兵士たちの動きを感知し、彼らの隙をカケルに伝えていた。
「カケル!敵のシールドに一瞬の隙ができる!そこを狙って!」
カケルは、ミリアムの指示に従い、ゾルダンのシールドへと集中した。彼の『連鎖反応予測』が、シールドのエネルギーの流れと、その瞬間の揺らぎを捉えた。彼は、その一点に狙いを定め、強力なエネルギーパルスを放つデバイスを構えた。
その時、ハブの天井から、再びセラフィナの弾丸が正確に降り注いだ。しかし、今回は兵士たちではなく、ゾルダンの背後にある制御コンソールの緊急停止ボタンを狙っていた。弾丸が、コンソールのボタンを正確に撃ち抜いた瞬間、クリスタルから放たれるエネルギーが一時的に不安定になった。ゾルダンのシールドが、わずかに揺らぐ。
「今だ、カケル!」
セラフィナの声が、通信機越しに響いた。
「よし!」
カケルは、その一瞬の隙を逃さなかった。彼は、渾身の力を込めてエネルギーパルスを放つデバイスを起動する。放たれた高出力のパルスが、ゾルダンのシールドに直撃し、それを完全に破壊した。ゾルダンは、驚愕に目を見開いた。
シールドが破壊されたその瞬間、レオンがゾルダンに向かって、その身体能力の限界を超えた跳躍を見せた。彼はゾルダンの懐に飛び込み、その首元に特殊な麻痺毒を仕込んだダーツを打ち込んだ。
「ぐっ……馬鹿な……!」
ゾルダンは、ダーツを打たれた場所に手をやり、苦しげに呻いた。彼の瞳から、狂気にも似た光が失われ、その体がぐらりと揺らぐ。
「終わりだ、ゲイル・ゾルダン」
カレンの声が、ハブの通信回線に響き渡った。彼女は、シエラ・ノヴァから得た情報と、ノアのハッキング能力を組み合わせ、ゾルダンの通信システムを掌握していたのだ。
「銀河連邦は、お前のような存在に、支配などさせない」
ゾルダンの体が痙攣し、その場に膝から崩れ落ちた。彼の意識は混濁し、その手からデバイスが滑り落ちる。
「やったぞ、カケル!」
イヴァンが歓声を上げた。
「転送が止まった!」
ノアの声が、シャトルから喜びを伝えてきた。スターゲート・ハブのクリスタルの光は収まり、転送ゲートもその輝きを失った。
カケルは、気を失ったゾルダンに近づき、特殊な拘束具を装着した。彼の『連鎖反応予測』は、ゲイル・ゾルダンの逮捕という、この戦いの最大の目標が達成されたことを示していた。
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スターゲート・ハブには、GRSIチームYと、シャドウ・キャッツのレオン、そして天井から降りてきたセラフィナが集結していた。彼らの顔には、疲労と、そして大きな達成感が浮かんでいた。この困難な戦いを、光と影、それぞれの道を進む二つの組織が協力することで、乗り越えることができたのだ。
「よくやった、レオン。セラフィナも、素晴らしい援護だった」
カケルは、レオンとセラフィナに声をかけた。彼らの間には、これまでにはなかった、確かな信頼関係が芽生えていた。
「フン……お互い様だ。お前たちGRSIも、なかなかやるじゃないか」
レオンは、皮肉めいた笑みを浮かべたが、その瞳には、仲間を認める光が宿っていた。
「これで、銀河の平和は守られた……のかな?」
ミリアムは、不安げに呟いたが、その顔には、安堵の表情が浮かんでいた。




