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GRSI-05 ヴェリディアンの残響  作者: やた


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33/36

33.光と影の総力戦

 平和記念ホールの地下深く、廃されたヴェーガ・ラインの終点に広がる『スターゲート・ハブ』。


 その巨大な空間は、今や『影の評議会』の兵士たちで埋め尽くされていた。中心に立つゲイル・ゾルダンは、無限に湧き出すかのような兵力と共に、惑星連邦への宣戦布告を敢行した。


 だが、彼の野望を打ち砕くべく、二つの影が動いていた。一つは『ナイト・グライド』レオン・ヴァンス。もう一つは、今まさにこの闇の舞台に降り立とうとしているGRSIチームYだ。


 レオンは、ゾルダンの宣戦布告に激しく動揺しながらも、冷静さを保っていた。彼の目の前には、ゾルダンの指揮の下、統率された動きで包囲網を築く評議会の私兵たちが迫る。その数は、レオン一人では到底太刀打ちできないほどだった。しかし、彼の瞳には諦めではなく、闘志が燃え上がっていた。


「ノア!エミリー!チームYはまだか!?」


 レオンは、通信機に叫んだ。その声は、スターゲート・ハブの轟音にかき消されそうになる。


 周回軌道上のシャトル内では、ノアが全力でハブへの侵入ルートを確保していた。


「レオン!あと30秒でチームYが到達する!評議会の兵士は多数だが、スターゲート・ハブのセキュリティシステムにはまだ隙がある!アリア総帥のデータを使って、彼らの動きを一時的に麻痺させる!」


「了解!」


 エミリーは、降下ポッドの最終調整を終え、カケルたちを送り出す準備を整えていた。


「行くわよ、みんな!」


 その言葉と共に、スターゲート・ハブの天井の一部が崩れ落ち、降下ポッドが降下してきた。ポッドが着地すると同時にハッチが開き、カケル、イヴァン、ミリアムが飛び出した。彼らは迷うことなく、レオンとゾルダンがいる中心部へと駆け出す。評議会の兵士たちが即座に反応し、銃口をGRSIチームYへと向けた。


「敵襲!GRSIだ!」


 兵士の一人が叫ぶ。


「イヴァン!先陣を切ってくれ!ミリアムは援護と状況把握を!」


 カケルは指示を飛ばした。彼の『連鎖反応予測』は、この広大な空間での戦闘シミュレーションを瞬時に展開していた。敵の配置、兵器の種類、そして勝利への最適なルート。全てが、彼の脳裏に鮮明に描かれていた。


「へっ、待ってたぜ!」


 イヴァンは、咆哮と共に評議会兵士の群れに突進した。彼の屈強な肉体は、銃弾をも弾き返すかのように兵士たちをなぎ倒していく。その拳は、まるで巨岩のように重く、兵士たちはひとたまりもなく吹き飛ばされていく。彼の猛攻は、評議会兵士の隊列を分断し、混乱を生み出した。


「みんな、私の『音』をよく聞いて!敵の動き、罠、全部見えるから!」


 ミリアムは、両手を広げ、周囲の『音』を敏感に捉えていた。彼女の空間認識能力は、敵の足音、武器の軋み、そして隠されたレーザーの起動音までも感知し、味方への的確な指示へと変えていく。


「イヴァン、右から二人来る!カケル、左の壁に隠れた狙撃兵に注意!」


 彼女の声は、混乱の中で迷子になりそうなカケルたちを導く羅針盤だった。


 カケルは、イヴァンとミリアムが作り出した隙を縫って、ゲイル・ゾルダンへと一直線に進む。評議会の兵士たちが彼の行く手を阻もうとするが、カケルは彼らの動きを予測し、最小限の動きで回避しながら、ゾルダンへの道を切り開いていく。彼の動きは、流れるように滑らかで、一切の無駄がない。


 ゲイル・ゾルダンは、GRSIチームYの突入に、わずかに眉をひそめた。しかし、その顔に焦りの色は見えない。彼は、スターゲート・ハブの起動を続けながら、不敵な笑みを浮かべてレオンとカケルを睨みつけた。


「愚かな光の犬どもめ……そして、裏切り者の義賊よ。これほどの兵力差を前にして、まだ抵抗するというのか!」


 ゾルダンは叫んだ。彼の背後からは、次々と評議会の増援が転送されてきていた。その中には、重武装した特殊部隊も含まれており、彼らの装備はGRSIのそれを凌駕していた。


「無駄だ、ゾルダン!お前たちの野望は、ここで終わりだ!」


 レオンは、ゾルダンに向かって言い放った。彼は、シエラ・ノヴァとの戦闘で負った傷を抱えながらも、ゾルダンへの接近を試みる。彼の動きは、影のように素早く、評議会の兵士たちの間をすり抜けていく。


 その時、ゾルダンは、背後の制御コンソールから、ある装置を取り出した。それは、水晶玉のような形をしたデバイスだった。


「遅いのだ、全てが!私はこのデバイスで、惑星連邦議会に直接、我々の宣戦布告と、新秩序の樹立を宣言する!スターゲート・ハブの転送は、もはや止められない!惑星連邦は、本日、ここに終わりを告げる!」


 ゾルダンの声が、ハブ全体に響き渡った。彼の言葉は、平和記念ホールにいる人々にも届いているはずだ。


「させない!」


 カケルは、渾身の力でゾルダンに飛びかかった。彼の『連鎖反応予測』が、ゾルダンがデバイスを起動する寸前の、わずかな隙を捉えたのだ。


 しかし、ゾルダンはカケルの動きを予測していたかのように、デバイスを起動する。まばゆい光が放たれ、ハブ全体に衝撃波が走った。光が収まると、ゾルダンの姿は、すでにそこにはなかった。彼は、スターゲート・ハブのメインゲートの一つへと転送されていたのだ。


「転送!?」


 カケルは驚愕した。


「くそっ、逃がすか!」


 レオンはゾルダンが消えたゲートへと飛び込もうとした。しかし、そのゲートは、再び光を放ち、ゾルダンではない別の兵士たちが次々と転送されてくる。


「ハブのメインゲートは、ゲイル・ゾルダンに掌握されている!ノア!転送を止められないのか!?」


 カケルが叫んだ。


「ダメだ、カケル!ゾルダンが直接、ハブのコアに干渉している!彼が転送を続けている限り、止めることはできない!」


 ノアの声には、焦りの色が濃く出ていた。


「奴を止めるには、ハブのコアに直接アクセスするしかない!そこは、評議会の厳重な警備が敷かれているはずだ!」



 その間にも、ホールの外では、カレン・リードがシエラ・ノヴァを拘束していた。シエラ・ノヴァは、ワイヤーを使い、脱出を試みるが、カレンの冷静な動きと、デバイスから放たれる電磁パルスによって、その動きを完全に封じられていた。


「ゲイル・ゾルダンは、スターゲート・ハブから宣戦布告を行った。この状況を、貴女は予測していたのか?」


 カレンは冷徹に尋ねた。


 シエラ・ノヴァは、苦痛に顔を歪ませながらも、冷笑を浮かべた。


「フン……。我々の計画は、既に最終段階に入った。貴様らごときが、止められるものではない」


 その時、カレンの通信機に、セラフィナからの緊急通信が入った。


「カレン!遠距離からの狙撃援護は不可能だと判断したわ!ハブの地下深部にある構造が、私の射線を完全に遮断している!私は今、ハブの天井へと移動している!直接、上から援護するわ!」


 セラフィナは、遙か高層ビルの狙撃ポイントから、スターゲート・ハブの地下構造を詳細に解析し、これまでの狙撃では援護ができないと判断したのだ。彼女は、レオンが突破してきた地下通路とは別の、外部からハブの天井へと直結する隠されたエレベーターシャフトを発見し、単身、そこを伝って降下していた。彼女は、狙撃銃を背負い、漆黒のスーツ姿で、まるで蜘蛛のようにシャフトの壁面を伝って、音もなくハブの天井へと移動していた。その動きは、極めて迅速かつ隠密だった。


「セラフィナ、了解!無理はするな!上から援護頼む!」


 カレンは、即座に指示を飛ばした。彼女は、シャドウ・キャッツの全力を投入する時だと判断したのだ。


「了解!カレン!」


 セラフィナは、ハブの天井に到達すると、そこにあるメンテナンスハッチを静かに開いた。彼女の目の下には、評議会の兵士たちとGRSIチームYが入り乱れる壮絶な戦闘が繰り広げられている。彼女は、躊躇なく狙撃銃のスコープを捉え、兵士たちの動きを封じるべく、正確な射撃を開始する。彼女の弾丸は、兵士たちの持つ武器を破壊し、その動きを無力化していく。


 遠距離からの狙撃とは異なり、真上からの狙撃は、より確実に、より正確に、敵の機能を停止させることを可能にした。彼女の放つ光弾が、評議会兵士の頭上の照明を破壊し、その目をくらませ、あるいは彼らの持つ通信機を正確に撃ち抜いていく。


 スターゲート・ハブの内部では、GRSIチームYとレオンが、評議会兵士の猛攻にさらされていた。だが、セラフィナの援護射撃により、彼らの動きが鈍った。頭上から降り注ぐ正確な射撃に、評議会の兵士たちは混乱し、隊列が乱れ始める。


「コアへのルートが開いたぞ!カケル!レオン!頼んだ!」


 ノアの声が、通信機から響く。彼の解析により、ハブの奥に隠された、コアへの直通路が可視化されたのだ。


「よし!行くぞ、レオン!」


 カケルは、イヴァンとミリアムに合図を送り、レオンと共に、ハブの奥へと突進した。評議会の兵士たちが必死に追いすがるが、イヴァンの猛攻とミリアムの援護、そしてレオンの素早い動きによって、彼らは足止めされていく。


「ここが、銀河の未来を決める場所だ!」


 カケルは叫んだ。

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