第8話 廃墟の地下
カイトたちは地下データセンターの冷たい通路を抜け、廃墟化した旧都市へと移動していた。
かつての繁華街は廃墟と化し、崩れたビルと錆びた鉄骨が月光に照らされる。
埃に埋もれた看板には、色褪せた古い広告が残る。上空では監視用のドローンが音を立てながら巡回する。
瓦礫に覆われた広場に着くと、ユナが周囲を見回して声を上げる。
「え?こんな廃墟に地下への入口なんてあるの!?」
セラフィムのホログラムが淡く光り、地面をスキャンしながら答える。
「スキャン中……隠し階段を発見。音声認識ロックを確認。カイト、解除して。」
カイトが解除を試みるが、解析結果に見たこともない文字が含まれていた。
「なんだこれ?セラフィム、わかるか?」
セラフィムが文字を解析。
「これは古代文字による呪文。解析中……解析完了。解除を実行する。」
「クロノス・デュ・クフシーラン」
セラフィムが呪文を唱えると、隠し階段が現れる。
ユナが目を丸くする。
「うわ、ほんとにあった! なんかドキドキするね!」
セラフィムが冷静に返す。
「ドキドキはいいけど、気をつけて。クロノスのセキュリティは甘くない。」
カイトたちが階段を降り、地下のサーバールームにたどり着く。部屋は無機質で整備され、静かな電流音と点滅する青いLEDが秩序を保つ。
カイトが部屋を見回しながら言う。
「ここがクロノスの中枢に繋がるアクセスポイントだ。セラフィム、システムの状況は?」
セラフィムが端末に接続しながら答える。
「最新のサーバーだよ。クロノスのネットワークに直結してる。セキュリティトラップが仕掛けられてるけど、レーザーセンサーと暗号化ウォール、突破には時間かかる。」
ユナがタブレットを握り、目を輝かせる。
「そんな罠には絶対負けないよ! 真実を掴むんだから!」
カイトは頷き、床を指さす。
「センサーはそこに埋め込まれてる。動く前に、セラフィム、トラップの解析を急いでくれ。」
「了解、解析してる。レーザーは3秒ごとにパターン変更、暗号化ウォールは2048ビットの動的鍵。ちょっと厄介だけど、いけるよ。」
カイトたちが慎重に進む。突然、床から赤いレーザー線が浮かび上がり、複雑な網目を描く。
ユナが飛び退き、叫ぶ。
「ありえない! これ、触ったらどうなるの!?」
セラフィムが素早くデータを確認。
「触れたら即座に警報。クロノスのセキュリティが反応して、巡回中のドローンがすぐ来る。…でも、隙間は見つけた。カイト、右に45度、3歩進んで。」
カイトは無駄のない動きでレーザーを避け、サーバーの制御パネルへと向かう。
ユナもその動きを真似るように後を追う。
「うわ、怖い! でも、カシアの秘密、絶対見つけるんだから!」
カイトたちはレーザーセンサーをなんとか回避するが、次に、仮想の壁「暗号化ウォール」がカイトたちの前に立ちはだかっていた。
カイトがユナに警告する。
「壁には絶対に触れるな。どんな仕掛けがあるか分からない。」
「うん、わかった。」
ユナが頷く。
「セラフィム、暗号化ウォールの解除はまだか。」
セラフィムが冷静に答える。
「予想以上に暗号パターンが複雑で時間がかかってる。カイト、手伝って。」
「わかった。セラフィム、スクリーンを出してくれ。」
カイトとセラフィムは協力して暗号パターンの解析を続ける。
「こっちの解析は終わった。セラフィム、進捗状況は?」
セラフィムのホログラムが強く輝く。
「こちらも解析完了。暗号化ウォールの解除を実行する。……解除完了!」
「やった!罠を突破できた!」
ユナが安堵の笑みを浮かべる。
暗号化ウォールは一瞬光を増した後、静かに消え去った。
カイトたちは素早く前に進み、制御パネルにたどり着く。




