第6話 地下の脈動
湿った空気が肌にまとわりつく。地下データシステムの通路は、薄暗い蛍光灯が断続的に瞬き、壁に埋め込まれたケーブルが蛇のようにうねっていた。
遠くでサーバーの低いうなりが響き、まるでこの場所が生き物の心臓部であるかのように感じられた。
カイトのウェアラブルデバイスの青いホログラムが揺れ、セラフィムの投影が淡く浮かんでいる。
「監視網のノイズを感知。AIカメラが多数設置されてる。気を付けて。」
セラフィムが冷静に告げる。
「セラフィム、スクリーンを出してくれ。」
「了解。ホログラムスクリーンを表示。」
カイトは指先でホログラムを操作。スクリーンに映るコードの流れを追う。
「AIカメラの位置は特定した。あとはタイミングだ。ユナ、暗号化は?」
ユナはタブレットを素早く叩き、明るい声が通路に響く。
「暗号化、完了! 放送データを隠したよ。これでカシアの追跡を遅らせられる!」
カイトが頷く。
「よし、動くぞ。」
三人は息を合わせ、通路の角に身を寄せる。
次の瞬間、天井のAIカメラが赤い光を放つ。セラフィムが低く叫ぶ。
「スキャン開始! ユナ、ノイズを!」
ユナはタブレットを操作し、偽のデータ信号をばらまく。
カイトはホログラムのコードに集中し、監視網の隙間を縫うように侵入ルートを深掘り進める。
汗が額を伝うが、彼の目は揺らがない。
「クロノスのノイズが…強い。まるで俺たちを試してるみたいだ。」
「試してくるなら、私たちが冷静に対応するだけ」
セラフィムが応じる。その声には微かな自信が宿る。
カイトたちは目的地に向かって薄暗い通路を慎重に進む。
「カイト、あと30メートルで地下データセンター。ドアにバイオ認証ロックがかかっているけど、君なら突破できる。」
ユナが叫ぶ。
「カイトさん、AIカメラの妨害が間に合わない。急いで!」
カイトは極限まで集中力を高め、最後のセキュリティを突破する。
バイオ認証ロックが解除され、地下データセンターの扉が開く。
「俺たちが一緒なら、どんなシステムだって突破できる。ユナ、セラフィム、準備しろ。次は放送だ。」
三人の決意が、地下の脈動と共鳴する。