第5話 闇の契約
前回の戦闘で、セラフィムはクロノスから監視ログの一部を取得することに成功。カイトは戦闘直後からラボに籠もり、セラフィムの修復と並行してログの解析を進めていた。
「ログの深層部に融資契約のコードがある。」
ディスプレイに映る『カシア融資契約:法令制定権 2037年』。そこには国家とカシアの署名がはっきりと刻まれていた。
「カシアは国家に融資することで、法令を制定する権限まで手に入れていたのか! これじゃ、国の上に立つ独裁者じゃないか。」
カイトが声を震わせる。
画面に市民の犯罪記録が流れ、不当な処罰が次々と浮かぶ。
カイトが机を叩く。
「老婆がパン一つ盗んで無期懲役…こんな理不尽、許せるかよ!」
「こんなのニュースで見たことない。カシア、メディアまで支配してるのか?」
カイトの拳が震える。
「セラフィム、見ろ。カシアのシステム…パン一つで無期懲役だ。こんな理不尽が許されてたまるか!」
「カイト…このデータはカシアの支配の証。私たちが止めないと。でも、私の光はまだ弱い…。」
セラフィムの光がラボの壁に揺らめき、断続的にちらつく。損傷率48%の不安定さが、彼女の輝きを曇らせる。
ユナが叫ぶ。
「お婆ちゃんがパン一つで無期懲役!? カシアのシステム、絶対おかしいよ!」
「カイトさん、これ、みんなに知らせなきゃ! SNSや動画で拡散したら、すぐ広まるよね!」
カイトが鋭く首を振る。
「それじゃクロノスに即バレる。投稿は消され、俺たちの場所も特定される。地下回線なら追跡されずに済む。」
セラフィムのホログラムが一瞬強まる。
「カイトの言う通り。SNSの通信はすべてクロノスに監視されてる。地下データシステムなら検知率3.2%以下。安全だよ。」
ユナが頷く。
「そっか…じゃあ、放送用の暗号は私が準備する! システムのセキュリティは今が一番緩い。潜入するなら、今しかないよ!」
カイトが頷き、ラボの壁に隠された扉を開く。湿った空気が漂う狭い通路が現れ、錆びたパイプと剥がれたコンクリートが廃墟街の名残を漂わせる。遠くでサーバーの機械音が響き、クロノスのノイズが暗闇に滲む。
「セラフィム、地下データシステムに着いたら、監視システムの防御を頼む。」
セラフィムの光がカイトの腕のウェアラブルデバイスに収束し、揺らめくホログラムとして浮かぶ。
「カイト、任せて。私、君のデバイスに同期するよ。この状態なら、通路でも一緒にいられる。」
彼女の声がデバイスから響く。
セラフィムのホログラムが一瞬強く輝き、ラボを照らす。カイトたちは通路へ踏み出す。