第2話 崩れる街
アストラルの夜空は輝きを失っていた。クロノスのハッキングで電力網が麻痺し、ビルのスクリーンがチラつく。ドローンが衝突し、火花を散らす。地上では爆発音が響き、星を映すガラスビルも、闇に沈む。
カイトのラボのモニターに、監視カメラの映像。ユナが端末を操作し、声を震わせる。
「カイトさん、これ……クロノスの仕業ですよね? 街が、めちゃくちゃに……!」
カイトは拳を握る。セラフィムの光は弱々しく、バックアップ電源で稼働。クロノスの攻撃はネクサスを超え、インフラを直撃。カシアの目的は何か。破壊か、それとも――。
「カイト、クロノスのコード解析を試みたけど……私の処理能力じゃ追いつかない。」
セラフィムの声がか細くなる。診断ログに損傷率32%。コアは無事だが、戦闘能力は低下。カイトは唇を噛む。この状態でネクサスに送るのは危険だ。
「セラフィム、無理するな。修復を優先する。」
カイトがキーボードに手を伸ばすと、ユナが叫ぶ。
「カイトさん、待って! 防衛システムがダウン! ドローンが建物に突っ込む!」
モニターに崩壊寸前の街。子供を抱えた母親、崩れたビルの壁。カイトの胸に3年前の事故がよぎる。もう過ちは繰り返さない。
「ユナ、バックアップ回線にアクセスしろ。俺が防衛システムを復旧させる。」
カイトの指がキーボードを叩く。セラフィムの補助なしでは限界があるが、コードを組み続ける。
ユナが回線を繋ぐ。
「カイトさん、回線つながった! でも、ドローンの制御にノイズがある!」
カイトはノイズを解析。カシアの仕業と確信し、復旧コードを急ぎ作成する。
「よし、できた!ユナ、復旧コードを送る。俺がノイズを抑える!」
カイトがノイズを制御して、ユナが復旧コードのコマンドを入力する。
防衛システムが息を吹き返し、ドローンが停止。街の混乱が収まる。
だが、モニターにノイズ。銀髪のカシア、青い目がカイトを貫く。
「カイト・ハヤミ。セラフィムの創造者ね。なかなかやるじゃない。」
「カシア・ノクス……何が目的だ? 街を壊して何になる?」
カシアは冷たく笑う。
「壊す? これは始まりよ。クロノスは新しい秩序を作る。理想主義者は足手まといなだけ。」
通信が切れ、モニターが暗転。カイトはセラフィムの光を見つめる。
「カイト……私は、戦えるよ。クロノスを、止めなきゃ……。」
「分かった。セラフィム、俺たちはクロノスを倒す。どんな手段でもな。」
ラボの外で、アストラルの喧騒が響く。カイトの目に、決意が宿る。この戦いは運命を決める。