第11話 設計図解析
廃墟の旧都市を抜け、カイトたちは息を切らしながら隠れ家のラボにたどり着いた。薄暗い地下室に、埃っぽいコンクリートの壁と、ちらつく蛍光灯が迎える。
カイトはディスプレイ前の椅子に深く腰を下ろし、静かに息を吐く。
ユナはタブレットを机に置いて明るく笑う。
「やっと落ち着けた…!」
セラフィムは静かにモニターを操作し、設計図のデータを展開する。
「くそっ、危なかった…」
カイトが吐き捨てる。
「あのドローン、昨日できたばかりの法律で追いかけてきた。カシアのシステム、どこまで人を縛る気だ!」
「ここ数年で監視が増えたよね。監視カメラはそこらじゅうにあるし、警備ドローンも何倍も増えてる。これじゃプライバシーなんてないよ!」
ユナの声には怒りと、どこか悲しげな響きが混じる。
カイトが拳を握る。
「街を壊したり、こんな法律で縛ったり… 何が秩序だ! ただの支配じゃないか!」
彼の目には、自由を求める強い意志が宿る。
街の破壊の記憶がよみがえる――あの爆発音、崩れるビル、そしてカシアの冷たい声が「秩序の必要性」を語った瞬間。
ユナが思い出したように口を開く。
「それにしても、カシアがセラフィムを狙う理由ってなんなの?」
セラフィムが落ち着いた声で答える。
「仮説:次世代セキュリティシステムのAIである私が、クロノスのハッキングの妨げになるから。」
カイトが拳をテーブルに叩きつけ声を震わせる。
「こんなことに屈してたまるか!カシアの支配を壊して、自由を取り戻す。」
セラフィムがモニターに新しいデータを映す。
「クロノスの設計図解析、進捗30%。霧状態のクロノスにはいかなる攻撃も通用しない。ただし、隠れたコアへの攻撃は有効。」
ユナが目を丸くする。
「攻撃が通用しない!?そんなの反則だよ!コアは隠れて見えないし!」
「ユナ、落ち着け。俺に考えがある。――最近実装した、あの技さえ発動できれば…」
「うん、わかった。カイトさんを信じるよ!」
「カシアの支配を破壊する。俺は… 誰も縛られない世界を取り戻したい。」
彼の声は静かだが、内に秘めた情熱が響く。
ユナが微笑む。
「うん、私も! みんなが自由に笑えるように、データで戦うよ!」
彼女はタブレットを握り直し、決意を新たにする。
セラフィムが小さく頷く。
「了解。データ解析、継続中… みんな、準備はいい?」
その言葉に、カイトとユナが顔を見合わせ、力強く頷き返す。
ラボの蛍光灯が一瞬強く光り、三人の決意を照らし出した。




