第10話 廃墟の追跡
カイトとユナはサーバールームの階段を駆け上がり、廃墟の旧都市へ飛び出す。
崩れたビルの影が月光に照らされ、錆びた鉄骨が風に軋む。色褪せた広告看板が瓦礫の隙間から覗く薄暗い路地を、二人は息を切らして走る。
ユナが後ろを振り向き叫ぶ。
「カイトさん、後ろからドローンが追ってきてる!」
カイトがセラフィムに確認する。
「ドローンへの通信はまだ遮断できてるか?」
セラフィムが冷静に返す。
「ドローンへの通信は今も遮断している。私たちがサーバールームに侵入したことは知らないはず。」
カイトが呟く。
「くそっ、どうして追ってきてるんだ……」
ドローンが近づきカイトたちを捉える。無機質な声が響く。
「犯罪者発見。午後10時以降の外出は禁止されている。直ちに自主することを命ずる。」
カイトが足を止め、拳を握って叫ぶ。
「いつできたんだよ! そんな法律!」
ユナがドローンの赤い光を睨み、声を震わせる。
「カシアのシステム、どこまでデタラメなの!」
カイトがセラフィムに目をやる。
「警察を呼ばれたら面倒だ。セラフィム、頼む!」
セラフィムのホログラムが点滅し、冷静に答える。
「ドローンのシステムにアクセス中……データ消去中……完了。」
ドローンが突然動きを止め、ガクンと傾いて地面に落下。金属が瓦礫にぶつかり、鈍い音が路地に響く。
カイトが息を吐く。
「よし、これでもう大丈夫だ。」
セラフィムがデータを確認し、淡々と続ける。
「カイト、さっきの法律だけど、昨日制定されている。メディアでも発表されていた。理由は『夜間の犯罪急増のため』としている。私たちは、データ解析やセキュリティの解除で気づかなかった。」
カイトが歯を食いしばる。
「だからといって、やり方が強引すぎる。カシア、どこまで自由を奪う気だ!」
ユナがタブレットを抱え、肩で息をする。
「カイトさん、急ごう! ラボに戻ってデータ見なきゃ!」
カイトたちは廃墟を抜け、アストラルの地下にあるラボへと向かう。




