それは例えば白い向日葵の様に
ギリギリ間に合った!
コロン様主催企画『アフォの祭典』参加作品です。
キャラがぶれっぶれなので温かい目でお読み下さい。
杮落 まころん。
年は三十六歳。 独身。
職業は医者。 つまり女医である。
自称:天才美人医師。 あくまで自称。
他称:天才的破戒者。 良識に疑いを持つ同期生が多数いるらしい。
特徴:手術中にひっくり返る様なレベルのドジッ子(頻度:まれ)。
仮称:天災医師。
不確定名:ひとがたのせいめいたい。
遺伝子配列:97%は人間と判明。
身長:低目。 だから頭頂部のお団子は決して解かない。 そこすらも身長なのだと周囲に認識させる為に。
体重:【TOPSECRET】
装備:瓶底メガネ、白衣、キャラクターTシャツ、メス、注射器、ニッパー、スニーカー、ドリンク剤×多数
本土より遠く離島の出身であり、東京でそれなりの活躍をした後、島へ戻り、島唯一の医者となった。
そんな彼女は誰が呼んだか『コロン』先生と呼ばれ ――他称は何処へ行った!?―― 親しまれているのだった。
(>_<)(^_^)(^o^)(*^_^*)
「はい、お薬出しときますからね。 食前に注射、食後に飲み薬ですから、忘れちゃダメですよ(^o^)」
「ありがとよ、コロンちゃん」
月に一度来る、定期検診&薬剤交付の患者さんである角谷 界精。 血糖値が高めでぽっちゃり体型というその外見は全力で糖尿病をアピールしているように見える。
ぱっと見は健康そうでも、油断出来ない病状ではあるのだが。
「ちゃんは止めて下さいよ。 もうアラサーなんですよ、わたし(T_T)」
「オレっちにしてみりゃ、まだまだ子どもだかんな、仕方ねっての」
「その子どもに糖尿病の世話を焼かせないで下さいよ。 また倒れたって知りませんからね(`△´)」
「ははははは、とりあえずコロンちゃんはヤバい事を口にするのを止めた方がいいんじゃないのか? 誤解されるぜ」
「? 何言ってるんですか(`_´)?」
なんやかんやと本日最後の患者も帰路へ。
島唯一の診療所だ。
遅ければ夕方近くまで診療する事もあるが、島民は大抵午前中を目安に来院するので、午後はある程度手空きになる場合も多い。 幸い、往診の必要な住民は少ないのだ。
勿論急患もあるが、スマホを持っていれば連絡はつく為、診療所に籠もっている必然性はない。
だが、今日は。
「さて、と」
重くなってきた腰を上げるとふんっと背筋を伸ばす。 バキッと背中が鳴った。
「もう、そろそろかな(^o^)?」
(T_T)(-_-):-):-)
その日、島は震撼した。
何もない島、自然だけが誇れる島。
それ故に観光業に従事する者がいた。
この島で生まれた日系ロシア人、ドラグノフ善光寺である。
彼は寂れるだけのこの島に観光客を呼び込もうと、ガイドの仕事をしているのだ。
いわゆる町おこし村おこしである。
マイクロバスを自費で購入し、飾り付け、役場と協力しつつ観光出来る場所をピックアップし、地元へ金を落とすシステムを構築したのだ。
お陰ですっかり地元の顔となった彼だったが、その日観光客を乗せたバスが転倒。
その惨事は島中に喧噪をもたらし、特に診療所には激震を与えた。
「すいません、この人は奥に、こちらの人はそっちへ運んで下さい(`▽´)」
コロンは島唯一の医者である。
ドクターヘリは要請したものの、来るまでは彼女がひとりで奮闘するしかない。
だが、二十人以上の負傷者が出ている以上、必要な行為があった。
――トリアージである。
多数の傷病者が発生した状況下で行われる、限られた医療資源の有効活用をする為それらを使う患者を選ぶ事、悪い言い方をするなら「生かす患者の選別」である。
ただ今回の場合「限られた医療資源」に当たるのは彼女 ――コロンだ。
彼女はその二本の手に及ばない患者を、即座に見極め見捨てなければならないのである。
島民達は手伝ってくれているが、重傷者と向き合った事のある人間なんてそうそういるものではない。
手伝いではあっても助手レベルの者がいる訳もなく、軽傷者の包帯を巻くのが関の山だ。 それでもそんな手のあるなしで雲泥の差はあるのだが。
本土からヘリが来るまで一時間。
派遣された医療チームと事に当たり、彼女がソファーへ倒れ込んだのは四時間後であった。
(>_<)(T_T)(-_-)(^_^)
その夜、コロンの姿は数少ない入院用個室の中にあった。
診療所ではあるが、ここは離島である。 緊急時等に大病院へ行く為にはヘリを飛ばす必要がある為、それまでの待機施設として一応用意してあるものだ。
「ふふふふのふ(*^_^*)」
酷く疲労しているはずなのに、彼女は微笑んでベッドに眠る人物を見つめる。
横になっているのは事故を起こしたドラグノフ善光寺だ。
診療所へ搬送され、彼女の言によりここへ運び込まれた彼は、そのまま軟禁されたのだ。
それ程外傷はないように見える彼だが、事故を起こしてから目を覚ましていない。
「あなたが、悪いのよ(-_-)」
彼の、白い頬を撫でる。
人差し指ですーっと撫でようとしたが、伸びかけの髭が濃くてちょっと引っかかった。 そのせいで指が頬に食い込み、彼の顔が面白い事になる。
「あなたが、悪いの(´艸`)」
やり直すように同じ様な言葉を繰り返す。
まるで観客の反応を気にしているかのようだが、そんなアホな事をする筈がない。
「私を、振るから(`△´)」
一瞬夜叉の表情を見せるコロンだが、次の瞬間には慈母の微笑みを浮かべている。 その二面性は明らかな狂気を感じさせた。
「だから、こんな目に遭うのよ(´罒`)? ふふふふふふふふふふふのふ(^_^)」
聞こえているのだろうか? 何の反応もないドラグノフの胸板に顔を寄せる。
しかし病衣の隙間からはみ出る胸毛が彼女の鼻をくすぐったのだろう。
「ぶえっくしょんばーろーちくしょーっ(`罒´)!!」
豪快なくしゃみが出た。 ついでに鼻水も出たので病衣に拭う。
「でも安心して(^o^)?」
コロンはそっと微笑んだ。 まだ鼻水の残っている顔で、ちょっとぐすぐす言いながら。
「ずっと、ずっと飼ってあげる(*^艸^*)。 あなたが死んでしまうまで、ずっと可愛がってあげる(^○^)!」
狂笑。
正しく狂った笑顔を浮かべ、丁寧に状況説明をしているその様は狂気という他にない。
「無理ですよ」
そんな彼女に水を差すのは、無音で扉を開けたトレンチコートの男。
恐らく初登場なのだろう。
胸元辺りに開くウィンドウには「只野 啓示」という名前と「刑事」という肩書きが表示された。
「……あなたは……だれ(-_-)?」
そんな人物紹介が見える筈もない彼女は、明らかに不審人物を見る目で男を見る。
「私は一介の刑事ですよ」
警察手帳を見せてくるが、それが本物かどうか解る程彼女は詳しくはない。 というか大抵の一般人はそれで見分けは付けられないだろう。
それでも見せつけてくる警察手帳はただの自慢か一種の様式美なのだろうか?
「刑事? ここの駐在さんは還暦間近の出迦 紗旋さんよ(-_-)」
「ちょっとこの事故が気に掛かりましてね……、無理を言ってヘリに乗せて頂きました」
まるでコロンボのような口調でそう言ってくる彼は、恐らくシリーズを全て見る様なマニアなのだろう。 様になっている、というより演技過剰に見えた。
「……だから医療チームの編成がおかしかったんですね(●`ω´●) 後でしっかりと抗議文を出させて頂きます(`_´)」
「え、あ、ちょっと、あ、いやそれは勘弁……じゃなくてですね、あなたのした事は全て解っています」
「……した事、とは(-ω-;?」
「あなたは大したモンだ。 ただ調べただけじゃ犯人がいるなんて思いつきもしなかった。 それ程、証拠らしい証拠がなかった」
ちなみに事故が起こってから精々半日程度しか経っていない。
如何にも調べ尽くしたような事を言っているが、多分に大仰だ。
ただ見て回っただけであっても、観光予定のコースを回っただけであろう。 つまり観光しただけだ!
「あの、質問には答えて頂けないんでしょうか(^ω^;」
彼女の質問に返答はない。 コロンは黙殺された問い掛けに何があるのかと思いながら、仕方なく先を促す。
「まさかこの程の事故が、個人によって企てられたモノだなんて、誰が想像するだろう」
「まるで夢物語ではないですか(;゜Д゜)」
証拠がないと自分で言っているのに、企てられたモノと言ってのける刑事はニヤリとシニカルな笑みを浮かべた。
「――犯人はあなただ」
証拠も状況も説明せず、只野啓示はそう言って彼女へ指を突き立てた。
左の頬を抉るように突き刺さる人差し指の『人刺し指』感が半端ではない。 ぐいぐい押し込んでくる指があまりにも容赦がなく、彼女は既に涙目だ。
後方に善光寺の眠るベッドがある為、これ以上後退が出来ないのである。
「むぐぐぐぐぐっ(T_T) い゛だい゛ぃっ(ノД`)」
「おっと、失礼」
只野が指を引くと、コロンは頬を押さえて蹲った。 めちゃくちゃ痛かったのだ。 愛らしいほっぺたに穴が開くかと思ったくらいは。
「~~証拠がないと言っておきながらグイグイと……! 一体何を以てわたしを犯人だと言うのですか(#●`Д´●)」
瞳を涙で潤ませコロンが詰め寄ると、只野は己の顔の前へ手をかざし、何やら香ばしいポーズを取る。 背景にドギャーンと効果音のつきそうなポーズはそれだけで説得力が三割は上昇しそうだ。
「先程言ったように物証はありません! しかし、あなたが犯人と言える証言が複数取れているのです!」
只野はその場で身を翻した。 意味なく一回転しつつ、指を一本立ててみせる。
「まずひとつ! あなたはトリアージの際、ドラグノフ善光寺をここへ運ばせる時、笑っていたとの証言が複数得られています」
【そっちへ運んで下さい(`▽´)】 ← 笑っている。
「ふたつ! 先程もそうですがひとり言のボリュームが大きいですよ。 思いっ切り犯行を告白してるじゃないですか」
「……ひとり、ごと(´Д`??」
無自覚のそれは指摘をされても解らんチンであった。
「ええ、みっつめ。 あなたの犯行に関わる一人言を聞いていたのは私だけではありません」
【ヤバい事を口にするのを止めた方がいいんじゃないのか?】 ← 実は……。 他にも証言あり。
「………………ひとりごと……。
えっ? マジに?」
「残念ながらマジです」
「……………………」
「……………………」
「……………………あばよ、とっつぁん(ΦωΦ)!」
唐突にコロンは後方倒立回転跳躍の様に身体を大きく反らし、ドラグノフ善光寺の腹筋に手を置くとそこを支点に大きく後方へ跳んだ。
華麗なる跳躍の中で、場違いな年甲斐のないキャラクターぱんつがチラリと見える。
窓ガラスを割り外へ飛び出すコロンを只野は追えなかった。
「……○ンパンマン、だと!?」
驚愕の余り動けなかったのだ。
(-_-)(>_<)(-_-)(>_<)
それから彼女は完全に姿を消した。
離島であるのも関わらず、その姿は消え、複数回行われた山狩りでも発見には至らなかったのだ。
いや、島民には慕われていた彼女だ。
誰かに匿われているのかも知れないが、少なくとも誰かの家で発見されるような事はなかった。
何らかの方法で島外へ出た可能性だって無い訳ではない。
「さて、何処へ逃げたんでしょうか」
幸い開腹もとい回復したドラグノフ善光寺を始め死者はおらず、悪質ではあったものの殺人の意思はなかっとして罪状は傷害。
回復した彼の言葉で、一応犯行の原因も突き止められていた。
「と言っても……」
質は悪いが田舎の傷害事件で死者はなし。 恐らくそう遠くないうちに忘れられるだろう、小さな案件。
それでも……
「ふふふ(*^_^*)」
不意に何処からか聞こえた声に只野は辺りに視線を巡らせた。 しかし、コロンらしい人物は見つからない。 見つけられない。
(気の、せい?)
しかしまだ声が聞こえる気がする。
「あなたを想ってるわ、ずっと……ずうっと(^㎜^)」