表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

魔導師の産声

 魔力とは、文字通り不思議な現象を起こす際に源になるエネルギーのことだ。個人差があるけれと、大抵の人間にはこの力の種が眠っている。これを知覚し、芽吹かせることができてようやく、魔導を始めるためのスタートラインに立つことができるらしい。


「ここでやられると家がめちゃくちゃになりそうだ。外に出ようか。」

「大魔術―日常用から実戦まで」を抱え、スイが言った。

「確かに、その可能性が高そうだね。」ショウもうなずいた。


 二人に連れられて、ミツキは家の外に出た。


 窓から少し眺めていた景色は、実際に出てみると、やっぱり元の世界とは何もかも違う。家の周りは(当たり前だけど)見たこともないような巨木がグニャグニャと生えていて、家に巻き付いていた。


 少し歩くと小さな広場があった。石畳が敷かれてあったが、長い年月を経て苔むしていた。


「うん、じゃあ、ここに座って。そんなに緊張しなくても大丈夫。」


 ショウがミツキを切り株で作られた簡素な椅子に座るように促した。


 ほんの少し離れたところでスイとアルトスがわくわくしながら二人を眺めている。


「ショウ、こっちはいつでもだいじょーぶだぞ!」

「おっけー、ミツキも準備はいい?」ショウが尋ねた。


「覚悟決めました、大っ丈夫!」自分に言い聞かせるようにミツキは言った。


 ショウはミツキの後ろに立つと、ミツキのこめかみに両手を添えた。


「いいかぁー、よーく聞けい!今から、そこのショウがお前さんに魔力を流す。体の中をなにかが流れていく感覚。それを感じ取れぃ。」アルトスが叫んだ。


「始めるよ、集中!」ショウが言った。


 気持ちを落ち着けるために深呼吸した。ゆっくりと体の中を知らないなにかが流れていくのをミツキは感じ取った。頭から、心臓、手、腹、足へと伝わっていくのが分かった。次第に流れが渦を作るような感覚がした。


「・・・流れてる。分かりました!」ミツキが叫んだ。


「よおし!いいぞ。そしたら、次第に流れが渦巻いてくる。その流れを、体の外に出すようイメージせい。あと少しだ、集中!」アルトスも叫んだ。


 体の中で()()()()弾ける感覚がした。


 次の瞬間、ボッという音とともにミツキの体から魔力が吹きだした。周りの葉っぱをガサガサ揺らし、近くにいた鳥(のような生き物)はバサバサと羽音を立てて飛び去っていった。


「素晴らしい、なんとも素晴らしい!これほどの圧、ショウ以来かもしれん!しかも、色。白とは!あぁ、なんと素晴らしい。これほどまでにそそる素材はそうはお目にかかれまい!」


 吹き出す魔力にあおられながら、アルトスが興奮気味に言った。


「確かに、すげぇな。まさかここまでとは。」

 冷や汗を流し、慄きながらスイが笑った。


「見つけたのが私たちで本当によかったよ。」

 魔力の圧で遠くに離れていたショウが小さくつぶやいた。


 しばらくして、ミツキは魔力の引っ込め方も教わった。放出に比べれば難しくなかったので、それほど時間はかからなかった。ショウ、スイ、アルトスの三人がミツキの近くに戻ってきた。


「おめでとう、大成功だね!」ショウが微笑んだ。


「全く、想像以上だな!今後が楽しみだ。」スイも笑っている。


「なんとも、ああ、なんとも素晴らしい資質。どの術を教えようか。結界術に四元魔術、うーむ、悩ましい。」しわだらけの顔をさらにしかめて考えていた。


「ちょうど良い時間だし、いったん家に戻ろうか。」

 頭をひねるアルトスを「大魔術―日常用から実戦まで」に引っ込めて、ショウが言った。


「確かに、腹も減ったしな。とりあえず、昼飯にしよう。その後で、作戦会議だ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ