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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
二人旅の始まり

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三人でデート

 私達は外出着に着替えて、宿のエントランスに移動する。すると、同じく着替えてきたジルさんが待っていた。ジルさんとアリサは、私と手を繋ぐ。


「じゃあ、行きましょう。観光名所とかじゃなくて、色々と見て回りたいです」


 私がそう言うと、ジルさんは優しく微笑んで笑ってくれた。私に同意してくれたという事だ。デートだから色々なお店を見ていく。基本的には、雑貨屋とか服屋とかを巡る。

 そこで私に合う服をアリサやジルさんが探してくれる。何故か薄い寝間着が多いけど、そこは気にしないでおこう。

 噴水広場やちょっとした高台など色々な場所を歩いていく。やっぱり好きな人が傍にいるとどこでも楽しい。ベンチに座って牛串を食べていると、ジルさんに口を拭われる。肉汁でテカテカになっていたみたい。アリサからはベビーカステラを貰う。何というか、私が一方的に奉仕されるような状態だけど、二人とも幸せそうだから良いかな。

 そんな事を思っていたら、街の片隅が爆発した。


『!?』


 私達全員が驚いた。その方向を向いた時、ジルさんが急に腰を上げた。


「ジルさん?」


 呆然と見ていたジルさんは、すぐに駆け出す。私とアリサは遅れて駆け出した。私とアリサはステータスの恩恵があるので、すぐにジルさんに追い付く。


「ジルさん。もしかして、爆発した方向ってジルさんの商会がある方向なんですか?」


 それに対して、ジルさんは頷く。それだけでアリサも察してくれた。そのまま走っていくと、大きな建物の傍で爆発跡があるのが見えた。そのまま近づこうとするジルさんの前に出て、手で制止する。


「待って下さい。こっちに」


 ジルさんを連れて、路地に入る。唐突に路地に連れて行かれたので、ジルさんは少し戸惑いながらメモ帳で話し始める。


『どうしたの?』

「商会を狙ったものであれば、商会に所属している人も狙っている可能性があります。ジルさんが所属しているという事を知っている場合、ここで襲われるかもしれません。アリサ、怪しい人はいる?」

「ううん。あの爆発跡から少し離れたところに誰かが押さえつけられたような跡があるから、犯人は騎士団に捕まった可能性もあるよ」

「そっか……なら、大丈夫かな。警戒しながら商会の建物に入りましょう」


 ジルさんは少し驚いていたけど、私の言葉に少し遅れて頷いた。私達が色々な事を考えていたからびっくりしたのかな。ここに来るまでに警戒している姿とかは見せているはずだけど、最近はちょっと別な側面しか見せていなかったから仕方ないかな。

 私達が路地から出て建物に向かっていると、横から他の人達をすり抜けてくる怪しい人がいた。真っ直ぐジルさんに向かってきて、残り二メートルとなったところで駆け出し、片手に握ったナイフを突き刺そうとする。

 そのナイフを私の手のひらに刺して、膝蹴りを腹に入れる。怪しい男がお腹を押えて、口から血を吐きながら悶え苦しむ。ナイフが刺さっていない方の手で雷鎚ミョルニルを握って、左太腿に叩き付ける。


「うごぁ!?」


 脚を折られた事でもう逃げられない。怨嗟の籠もった目で私を見るけど、先に攻撃をしたのは相手だ。ただただ無感情に見下ろしたら、途端に怯えた表情になった。


「アリサ。ジルさんを建物に入れて傍に居て。絶対に守って」

「うん」


 頷いたアリサはジルさんを連れて行く。ジルさんが何か言おうとしていたけど、今はそれを確認する時間も惜しい。


「ここで捕まった人と関係はある?」

「あ、あぁ!? 知らねぇな! うぎゃっ!?」


 右足の先端に思いっきり雷鎚ミョルニルを叩き付けてあげると、悲鳴を上げて匍匐前進でゆっくりと逃げようとしてくる。


「ああ……手も壊さないと駄目だったよね。そうだった。そうだった。匍匐前進を忘れてたよ」

「ま……待って……」


 止めようとしてくる怪しい男の肩に雷鎚ミョルニルを叩き付ける。


「ああああああああ!?」


 周囲に人が集まってきたから、騎士団も呼ばれるかな。早めに情報を引き出そう。


「目的は何? 答えてくれないともう片方の肩も砕くよ? いや、脚の先端から潰れていく方が好みかな? こういう時鈍器って良いよね。剣だったら突き刺したり斬り落としたりしか出来ないけど、はっきりと原形がなくなる様を見せられるんだもん」

「ひっ……ひいいい!! わ、分かったぁ! 言うからぁ!!」


 脅しが効いたみたいで、そう答えた。最後の方は特に思っていないけど、そう言ったら恐怖するだろうと思って言った。

 情報を引き出せると思っていたところで、泣きそうな表情になっていた男が急に笑みを浮かべる。

 それを見て背後を振り返ろうとした瞬間、右の胸から刃物が突き出して来た。後ろから剣で貫かれたらしい。


『スキル【刺突耐性】を獲得』


 このタイミングで耐性スキルを手に入れた。まぁ、そこはあまり気にしない。耐性があっても貫かれている事実は変わらないからだ。


「はっ! ガキが! 調子に乗るからだ!!」


 さっきまで泣きそうになっていた男が歪んだ笑みを浮かべながらそう言う。それと同時に、私は後ろにいる男の仲間に向かって、左腕を背後に回して肘打ちする。


「うごっ……!?」


 油断していたのか、脇に命中して剣から手を放す。自由になった私は、右手に握っている雷鎚ミョルニルを振るって、首を空高く打ち上げた。


「きゃ~!!」


 悲鳴が響き渡って、周囲の人が逃げていく。さっきまでの拷問紛いな事は遠巻きに見ていたのに、人が殺されたら逃げるらしい。どういう精神をしているのだろうか。

 あの人達がいなかったら、気配が紛れ込まないで、剣で刺されずに済んだかもしれないのに。


「あ……」


 さっきまでイキっていた男の顔が青ざめていく。表情がコロコロと変わって忙しい奴だ。

 私は身体を後ろに傾けて、剣の重さを利用して身体から剣を抜く。ついでに、左手に刺さっているナイフも引き抜く。

 血が込み上げて来て吐き出す事になったけど、すぐに死ぬ事はなさそう。ひとまず雷鎚ミョルニルで回復させていく。多分、これでも間に合いはする。賢杖ケーリュケイオンの回復があった方が確実だろうけど。

 念のため【生命維持】で鉄分とかは補給しておく。明日に響く事になるだろうから。


「もう遠慮は要らないよね? お前達の親玉はごぷっ……」


 放している途中で血が込み上げて来て最後まで喋られなかった。


「俺だぁ」


 吐血していると、正面から太った男が歩いてきた。周囲には誰もいない。既に私から逃げたみたい。だから出て来たのだと思う。私がもうすぐ死ぬと思っているからというのもあるのかな。ニヤニヤと笑っている男に向かって、金槌にした雷鎚ミョルニルを全力で投げつける。


「んなっ!?」


 太った男は反射的に雷鎚ミョルニルを避ける。意外と動けるデブらしい。汗を掻きながらニヤリと笑う男の背後から戻って来た雷鎚ミョルニルが太腿を強打する。


「うぎゃっ!?」


 大腿骨が折れて無様に転がっている。戻って来た雷鎚ミョルニルをキャッチして元の大きさに戻す。この中で立っているのは、私だけだ。


「な、何故……?」

「ん? これアーティファクト。ハンマーの形してるけど、回復も出来るの。それに、私はあの程度の痛みと苦痛は大して効かないから。さてと、私が殺してやりたいところだけど……時間切れみたいだね」


 私が男達の後ろの方を見たから、男達も釣られてそっちを見た。その方向からは、騎士団が向かってくる。その中にはグレイズさんがいた。


「嬢ちゃん! 大丈夫か!?」


 グレイズさんは即座に私の無事を確かめた。立っているのが私一人だとしても、服に付いた血や口等に残っている血の跡などから私が重傷を負った事は明白だったからだ。まぁ、もうほとんど治っているのだけど。


「はい。こいつらが襲ってきたので返り討ちにしました。一人は反射的に殺してしまったのですが……」

「見ればある程度の状況は分かる。胸の傷は?」

「背中から刺されたものですが、大体は治してあります」


 私は雷鎚ミョルニルを見せながら言う。それだけでグレイズさんは、その意味を理解してくれた。


「そうか。そのままでも問題はないで良いのか?」

「はい」


 吐血も終わった点から内臓の方は治っている事が分かる。まぁ、残っている血を吐き出す事はあるかもしれないけど、現状は問題ない。皮膚とか筋肉の方も大分治っているし、このまま雷鎚ミョルニルによる回復を続ければ安全だ。もう危ないところは過ぎていると判断して良いはず。


「こ、こいつが犯人だ! 取り押さえようとしたら暴れやがった!」


 太った男がそう言うと、グレイズさんが冷徹な目で太った男を見る。


「こちらである程度の調べは付いている。既にお前らの商会にも騎士が入っている。お前達の仲間がべらべらと話してくれた。お前達も正直に話してくれると助かるがな」

「ぐ……く……」


 グレイズさんの言葉で何も言えなくなったところを見るに、身に覚えがあるらしい。ここからはグレイズさんに任せるしかないかな。


「ここから騎士団の仕事だ。すぐに駆けつける事が出来なくてすまなかったな」

「いえ、突発的に起こった事ですので。ここの爆破の犯人は捕まえたんですよね?」

「ああ。ここら辺の警備を強くしていたからな。だが、それで安堵してしまったらしい」

「そうなんですね。それじゃあ、よろしくお願いします。あっ、これはどうしたら……?」


 私は後ろに転がる死体を見て訊く。グレイズさんもそれを確認してから、サムズアップした。


「処分もこっちでやっておく。安心しろ。罪には問われない」

「良かったです。それじゃあ、私はアリサのところに戻りますね」

「ああ……」


 私はアリサ達が入った建物の方向に向かっていく。取り敢えず、後のことは騎士団に丸投げだ。

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