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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
二人旅の始まり

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無事の報告

 翌日。朝起きた私は、洗顔と歯磨き、祈りを終えてから、昨日の夜にインベントリに入れておいたアリサが受け取ってくれた報告書を取り出す。


「確かに乱雑に書かれてるかも」


 軽くインベントリで訳して読んでいくと、判明している事がいくつか分かった。

 オーガは、隣町の更に隣町の少し離れた場所にある山から来た存在と考えられる事。

 ゴブリンに関しては、隣町の近くにある山に生息していた。つまり、オーガが逃げ出してきて、ゴブリンの居場所を奪おうとしたところで、ゴブリンが逃げ出したため狩猟本能により追ってきたものと見られる。

 これらはあくまでも予測に過ぎない事が強調されている。

 そもそもの話、オーガが何で逃げてきたのかとかも何も分かっていないからだ。でも、どんどんと流れてきたという事は何となく分かった。これらの事からダンジョンの件が流れた理由がこれのせいだと分かる。詳しい事は、さらに調べてからという風になっていた。


「ヒナ……」

「アリサ。おはよう」

「おはよう……」

「顔洗ってきな」

「うん……」


 アリサが、顔を洗っている間に報告書を出しておく。歯磨きと洗顔を終えたアリサは、そのまま私にのし掛かって来た。ベッドに押し倒される形になる。

 このままされる前に、取り敢えず報告書を見せる。


「はい。読んで」

「うん」


 昨日の依頼も報告しないといけないから朝からしている暇はない。アリサが私の上で読んでいる間に、回収したファングボアの数を確認する。


(あっ、ゴブリンも数体いる。そういえば、最初に来ていた分は倒して回収したんだっけ。ゴブリンキングとかは回収出来ていないけど、まぁ、そこは気にしても仕方ないかな)


 一応、報告用にこれも提出する事にする。食べる箇所とかなさそうだし。


「まだちゃんとは分かってないみたい」

「うん。これからオーガとかが動き出した理由を調べるって感じだね。まぁ、あれの小さな情報だけで、ここまで予想出来る事が凄いと思うよ。でも、ダンジョンじゃないっていうのはほぼ確実なのかな。取り敢えず、ギルドに行って報告しよう」

「うん」


 アリサは頷いて上から退いてくれる。特に依頼を受ける訳では無いので、外着に着替えて、雷鎚ミョルニルを腕輪にして装備してから、アリサと一緒に部屋を出る。そして、宿を出ようとしたところでジルさんとミラさんが駆け寄って来た。


「ヒナちゃん! 大丈夫だったの!?」


 ミラさんがそう言うのと同時にジルさんが、私の手を取る。力強く握るからその分だけジルさんが心配してくれたのだと分かる。

 私がここに運ばれた時点でアリサが私を抱えているのを見ているはずだから、二人とも私が無事かどうか心配になっていたのだと思う。昨日の夜の内に知らせれば良かったけど、全然頭が回らなくてそのまま寝てしまった。これは反省だ。


「はい。ご心配お掛けしました。アリサが治してくれたので大丈夫です。ちょっと予想外な出来事に巻き込まれてしまって、大怪我してしまっただけなので。冒険者ならよくある事です」


 私がそう言うと、アリサから鋭い視線を受けているのを感じた。大怪我どころじゃないというのを言いたいのかな。どんな怪我か分からないけど、私が死亡していた可能性は高い。確かに大怪我どころではないけど、一度死にましたとか言ったら色々と説明がややこしくなるので、これが一番良い伝え方だ。


「そう……取り敢えず目を覚ましたのなら安心したわ」


 ミラさんはそう言って私の頭を撫でる。ジルさんも強く抱きしめてくる。本当に心配してくれた事がよく分かる。


「今日はこれからどこかに行くの?」

「はい。ギルドに報告しないといけないので。後は騎士団の詰め所にも寄ろうと思います」

「そう。気を付けてね」

「はい」


 ジルさんは軽く頬にキスをしてから離れていった。

 アリサと一緒に歩いてギルドの中に入ると、何故か視線が集中してくる。その視線を受け流しながら受付に行くと、すぐにユイリナさんが来た。


「こちらへどうぞ」

「え、あ、はい」


 ユイリナさんは、私達を個室へと案内する。扉を閉めるとすぐにユイリナさんが私を抱きしめてくる。


「知らせを聞いた時には心臓が止まると思いました。本当に無事でいてくれて良かったです……」


 どうやらどこかしらの経由でユイリナさんにも話が届いていたみたい。ちらっとアリサを確認したけど、アリサは首を横に振った。

 基本的には私の看病をしていたと思うからギルドに報告に行く余裕はなかったと思う。

 だから、アリサが騎士団に報告した内容がそのままギルドに流れたという風に考えた方が良いかな。


「はい。ご心配お掛けしました。私はこの通りぴんぴんですので安心して下さい」

「…………はい」


 ユイリナさんは、私を放しながら私の頬を撫でてキスをする。それで満足してくれたのか、そのまま席に座る。私とアリサも遅れて席に着く。


「取り敢えず、依頼のファングボアは解体場に出すとして……こっちがその中で狩ったゴブリンです」


 そう言ってゴブリンの死体を出す。ユイリナさんは立ち上がって、床に落ちている死体を確認していく。


「……はい。確認しました。確かに、マンチカン周囲にはいない種類のモンスターです。前に報告にあったものと同種と見られます。これらからダンジョンの話が出て来たのだと考えられます。

 騎士団の方からも同様に大量のゴブリンの死体とゴブリンの親玉。恐らくはキングがいたという報告を受けています。いずれも死体でしたが、これらはヒナ様が討伐されたという事でお間違いないでしょうか?」

「はい。ゴブリンとオーガ三体は私です」

「なるほど。オーガの死体の報告もありましたが、こちらもそうでしたか。アリサ様かと思っていました」


 ユイリナさんはメモに私の報告を書いていく。この辺りも色々と使う必要があるのだろう。


「ギルドの見立ては、騎士団と同じです。オーガがゴブリンと争い、ゴブリンが敗走。キングが逃げた事から報復を恐れて追撃してきたというところでしょうか。その結果、こちらまで流れてきたという風に見ています。

 この話の大元オーガが何故ゴブリンの縄張りを侵したのか等はこれから調べていく予定です。本来の分布で言えば、オーガがゴブリンを追うというのも少しおかしな話ではあるので、詳しく調べる予定です」

「なるほど……ところで、このゴブリンって売れますか?」


 真剣な表情で確認すると、ユイリナさんは目を丸くして驚いていた。でも、すぐに口に手を当てて笑う。


「ふふふ、そうですね。ヒナ様からすれば、そちらの方が重要でしたね。ゴブリンの骨にはある程度の価値があるので売れます。ただ他のモンスターと違い、ゴブリンやオーガなどのただただ危険なだけのモンスターは討伐したという証拠がお金になります。なので、ゴブリンの耳を取るだけでもお金に出来ます」

「なるほど……次からはそうします。持って来ても困るだけでしょうし」

「そうですね。そうして頂けると助かります。ただ、オーガの場合角にも価値があるので角の回収をして頂けると助かります」

「分かりました」


 報告も終えたので、解体場に向かって、ファングボアを提出し報酬を受け取る。ユイリナさんは、まだお仕事があるのでここで別れる事になった。

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