変わりゆく環境と想い
騎士団の詰め所から出た私達は、ギルドへと向かう。
「バレていたみたいだけど、本当に大丈夫かな?」
アリサはグレイズさんに私の犯行がバレている事に少し不安を覚えているみたい。
「大丈夫。貸し借り無しって言ってたでしょ?」
「うん。でも、貸しって?」
「ゴミ掃除」
遠回しにあの犯罪者共を殺したという事を伝える。アリサもすぐにそれに気が付いて頷いていた。
「ああ……なるほど。生かしておいたら、第二第三の被害が出ちゃうからって事だね」
アリサの言う通り、あの人達の考え方は邪魔する対象を手段問わずに排除するというものだった。あれを放っておけば、次々に被害が出る事になったかもしれない。騎士団としては、不本意だと思うけど、騎士団が対応出来るタイミングではなかったし、証拠も何もなかった以上行動も出来ない。仕方ない事ではあるのだけどね。
私みたいに自分勝手な価値観で裁く人は、あまり歓迎ではないだろうけどね。
「そういう事。だから代わりに罪には問わないって。多分、その他にも何かあるとは思うけどね。グレイズさん達からしたら、こっちの方が都合が良いんだと思う」
「そっか。あの人は信用しても良さそう?」
「ある程度はね」
アリサとそんな話をしていたら、ギルドに着いた。
ギルドの受付には、ユイリナさんがいたフラワーマンティスの依頼を持ってユイリナさんの元に向かう。ユイリナさんは、笑顔で迎えてくれる。
「ヒナ様。本日もご依頼ですか?」
「はい」
フラワーマンティスの依頼を提出すると、少しだけユイリナさんが乗り出して耳打ちしてくる。
「問題ありませんか?」
「はい。大丈夫そうです」
「それは良かったです」
ユイリナさんは安心したように私の頭を撫でると、そのまま手続きをしに後ろに向かっていった。依頼の手続きを終えて、花畑に向かうと、少しだけフラワーマンティスが見つけにくくなっていた。
「フラワーマンティスの数が減ってるのかな?」
「そうみたい。手前にいたフラワーマンティスの数が明らかに減っているよ。奥にいるのは、大体同じ多さだけど」
「そっか。手前が減ったくらいなんだね。それだと、今日は少し長めに狩る事になるかな」
数が減ったフラワーマンティスを二十二体倒す。いつもよりも時間が掛かってしまったけど、それでもお昼近くには終わっているので、いつもよりも運動をしたみたいな感じだ。
この事はギルドでの依頼達成報告時に、しっかりとユイリナさんに報告する。
「何かフラワーマンティスの数が少し減った気がします」
「個体数が元に戻ってきているようですね。そろそろ効率が悪くなってくるかもしれません」
「ファングボアかぁ……お金が少ないんですよねぇ」
フラワーマンティスの効率が良いからファングボアの狩りはあまり気が乗らない。まぁ、ファングボアの狩りもしっかりやっておかないと困る人が出るから、ちゃんとやらないとね。
「その分いっぱい狩る?」
アリサの提案は良いと思うけど、その分時間が掛かる。まぁ、時間自体はいっぱいあるから良いのだけど。
「ファングボアを多く狩るのもよいですが、適度にフラワーマンティスも狩るとお金の面では良いかもしれませんね」
「なるほど。帰りにアリサが見つけられるフラワーマンティスだけ狩る事にしようか。その場合、依頼って受けた方が良いんですか?」
「難しいところですね。そもそも狩れない可能性もありますので、受けない方が安定していると思います。依頼を受けた場合、一体は必ず倒さねばなりませんので」
フラワーマンティスに縛られないようにするために、依頼は受けずに狩れそうなら狩るという方針でいく事にする。
「なるほど。依頼を受けなくても売れはしますもんね。その方向でいってみます。ありがとうございました」
「はい。またうちに来て下さいね」
「はい。絶対に行きます」
ユイリナさんと約束してからギルドを後にする。アリサに少し我が儘を言って、ぬいぐるみ屋でユイリナさんっぽいピンク色の狼のぬいぐるみを購入する。
「私のは買わないの?」
「へ?」
アリサは、少し不満そうな感じで私に訊いてくる。アリサに似たぬいぐるみは買わないのかって事かな。
「今まで関係を持った人に似ているぬいぐるみを買ってるんでしょ?」
アリサには全てバレているみたい。メイリアさんから貰ったレパに似たぬいぐるみを初めとして、関係を持った人に似たぬいぐるみは、本当に買っている。一緒に寝ると安心出来るから。
「ま、まぁね……でも、アリサはいつも傍にいるから。抱き枕にするならアリサ本人で良くなるでしょ?」
「ふ~ん……じゃあ、私と離れる事になったら買ってくれるって事?」
「そんな時が来るならね」
そう言ってアリサの手を握ると、アリサも握り返してくれる。正直、アリサと離れる事はほぼほぼないと思う。アリサが離れる理由がないし。レパだって離れる理由がなければずっと一緒にいたと思う。
だから、アリサのぬいぐるみを買おうとは思わなかった。
「じゃあ、良いかな」
アリサってヤンデレ系なのかな。まぁ、そこまで独占欲が強いってわけじゃないし、仲間外れが嫌なだけかもしれないけど。ちょっと可愛い。
上機嫌なアリサと一緒に昼食を食べて、軽く観光をしてから部屋に戻る。二人でお風呂に入って汗を流しながら、アリサが可愛がってくれる。どうやらアリサの方がハマったみたい。着替えてから部屋で話をして夜まで過ごしていく。
そして外で夕食を食べてから部屋に戻ろうとすると、ジルさんと鉢合わせた。
「ジルさん。こんばんは」
ジルさんは私に気付くと、笑って手を振る。私が近づくと、手振りで少し待つように言われた。ジルさんはミラさんの元に向かうと、ミラさんから何かを受け取って来た。そして、私の元に来ると鍵を渡してきた。どうやらこれをミラさんから貰っていたらしい。
鍵はこの宿屋の部屋の一つっぽい。ジルさんは真っ直ぐ私を見てから離れていった。
「えっと……部屋に来てって事かな? でも、宿の部屋を使っちゃって良いのかな?」
ちらっとミラさんを確認すると、こっちに気付いたミラさんがサムズアップしていた。大丈夫との事みたい。私が借りている部屋じゃ駄目な事。そこから考えられるのは、アリサが言っていた事だった。
「まさかね」
「お風呂入ってから行った方が良いと思うよ」
「……そうする」
アリサからしたら、絶対にそうだとしか考えられないみたい。部屋で軽く身体を洗ってから指定された部屋に入る。先にジルさんが来ているのかなと思ったけど、私が先に来てしまったみたい。
一分くらい待っていると、ジルさんがやって来た。ジルさんは私と隣同士でベッドに座る。
ジルさんは、何かそわそわとしている雰囲気だった。そこで私はジルさんに言わないといけないことがあるのを思い出した。ここで話すような事じゃないかもしれないけど、先に伝えておいた方が良いと思ったので話す事にした。
「そうだ。ジルさんにお話しないといけない事があります」
首を傾げるジルさんに例の話をする。ジルさんは、驚き戸惑い涙していた。そんな理由で自分達があんな目に遭ったのかという悲しみだと思う。私に出来る事は、ジルさんの手を取る事だけだった。
ジルさんは、私の手の平を取って文字を書く。
『ヒナちゃんが?』
「えっと……まぁ、そうですね。話し合いで解決出来れば良かったですが、向こうから攻撃してきたので。私としては、話し合いも無しに叩き潰して良かったと思いますけど」
『ありがとう』
ジルさんはそう手に書いて、私を抱きしめた。ジルさんは、そのまま私の顔の向きを自分の方に向けてキスをした。私は一切拒まずに受け入れる。
これがジルさんが元の生活に戻れるきっかけになると良いな。




