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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
二人旅の始まり

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見破る方法

 お昼を食べて、宿に戻ってきた私は皆からの手紙を読む。リタとキティからは近況報告と世間話的な内容が入っていた。二人も仲良くやっているみたい。

 レパからは、ちょっと心配の籠もった手紙を受け取った。その心配は私の女性関係などではなく、私が何度も死にかけている事である。レパを心配させたくないと思って書かないようにしようかとも思ったのだけど、レパには嘘をつきたくないという気持ちが強く色々と書いてしまう。それでも愛の籠もった言葉も貰えるから、結構嬉しい。

 メイリアさんからは、ちょっと固めの内容で送られてくる。基本的に報告書みたいな感じだ。何か騎士団を辞める雰囲気がある。その内容の中には、私の健康を気遣う内容が三割を占めており、やっぱり保護者としての部分が大きく出ているという事が分かる。

 それと予想通りメイリアさんの封筒の中にはビビアンさんの手紙も入っていた。ビビアンさんは私に会えなくて寂しいという内容等が書かれていた。

 そして全員に共通した内容として、アリサに関する情報がないかの返事が来ている。色々と周囲からも情報を集めてくれているらしいけど、それらしき情報は得られていない。


「う~ん……やっぱりアリサの情報はないみたいだね。皆のいる街とかに情報が少しでもあれば良かったんだけど」

「お城の話を送るのは?」

「あっ、そうだね。そっち方面から攻める手が出来たんだった。皆に返事の手紙を書いて送らないと。ついでに、次に行く予定の街も書いておこう」

「もう決めているの?」

「うん。少しずつ国の中央に行こうと思ってるからね。そっちの方が情報は多いだろうし、観光名所もあるだろうから」

「そうなんだ」


 ヒナは、全員への返信の手紙を書いて配達所に預ける。配達所は常に稼働しているので、私が思っているよりも早く手紙を届けてくれるらしい。それでも次の手紙は次の街に行くまでは貰えないだろうけど。


────────────────────


 翌日。ミナお姉さんのところには行けなかったのは悲しかったけど、またジルさんと朝食を食べられたので楽しかった。ジルさんの声は、やっぱり心因性のものらしく、こうして普通に過ごしていきながら発声練習などを繰り返して治していく方針となったみたい。

 その中で、私達と朝食を食べるというのが、ジルさんにとって心が安まる事になるだろうという事で、ミラさんからお願いされた。

 朝食を終えた後、ジルさんがミラさんの休憩室に戻っていくのを見送ってからミラさんの元に向かう。


「ジルさんは、しばらくはお休みですか?」

「いいえ、ちょっとだけ仕事はするわ。その方がジルも気負わないでいられるから。とは言っても、ジルが出来る仕事は現状帳簿付けくらいなのだけどね。もう少し現状に慣れたら、出来る事を探すつもりよ。もしかしてだけど、ジルから何か相談された?」


 ミラさんは、すぐに看破してきた。実際、朝食を食べている時にジルさんから少し相談を受けていた。今の自分に何か出来る事はないのかと。ミラさんに迷惑を掛けてしまうから心配になっているとの事だった。だから、ミラさんから話を聞いて問題がないかを確認しようと思ったのだ。


「ちょっと心配になっているようでしたので。でも、帳簿付けなら商人のジルさんに合った仕事だと思いますし、大丈夫そうですね」

「そうね……何か他にも自信を持てるような事をさせてあげられると良いのだけど、ヒナちゃん達も何か思い付いたら教えてくれるかしら?」

「はい」

「分かりました」


 ミラさんとこれで別れて、ギルドに向かう。そして、依頼としてフラワーマンティスの討伐依頼を受ける。受付には昨日のお姉さんがいたので、そこに向かう。


「フラワーマンティスの討伐ですね。手続きしてきます」


 お姉さんはテキパキと手続きをしてくれた。その間、アリサはマチと遊んでいた。マチはアリサ相手でも物怖じせずに猫パンチを放っている。アリサは、ニコニコとしながら猫パンチを受けて頭を撫でていた。


「はい。手続きが終わりました。では、お二人ともお気を付けて」

「はい。ありがとうございます、お姉さん」

「そういえば、名前を言っていませんでしたね。私はユイリナです。よろしくお願いします」

「ユイリナさん……はい。よろしくお願いします。ユイリナさん」


 そう言って笑うとユイリナさんが少し頬を染める。


『スキル【色欲】を獲得』


 ここで手に入らないで欲しい。本当に私がそういう風に見ているって事になるから。いや、本当にそういう風に見ていたのだと思う。取り敢えず、スキルの方は気にしないでおこう。私が好きになった相手から自分が魅力的に見えるようになるものという事は分かっているから。

 依頼を受けたので、アリサを連れて外に出る。すると、アリサが私の顔を覗きこんできた。


「ヒナ嬉しそう」

「そんな事ない」

「嬉しそう」


 アリサが意地悪をしてくる。それだけ私に心を許してくれた証拠とも取れる。嬉しいけどムカッとするのは変わらないので、頬を膨らませて怒っているという事をアピールする。

 すると、アリサは嬉しそうに笑った。アリサの気持ちが分からないけど、取り敢えず良いか。

 そのままマンチカンの外に出て、花畑の傍に来る。


「アリサ、フラワーマンティスの居場所は分かる?」

「うん。何となくだけど。あそこの花は花じゃないよ」


 アリサが指を差す方向をジッと見る。私の目には普通の花畑にしか見えない。


「普通の花畑に見えるけど……」


 今のところ本当に違いが分からない。どこも同じような花畑に見える。でも、そこにはフラワーマンティスが紛れ込んでいる。そのはずだ。

 私が目を凝らしていると、アリサが私の側頭部に手を添える。そして、ぴったりと止めた。


「一点を見ないで。全体を見るの。そうすると、一部に違和感を覚える場所があるから」

「全体?」

「うん。花畑全体を見るの」


 私は言われた通りに花畑全体を見る事を意識する。目を動かしたくなるのを我慢して全体を見ていると、アリサの言いたい事が分かった。


「花の揺れ方が変な場所がある?」

「正解。風で揺れている花と比べると変な揺れ方をしている花があるの。それをジッと見てみたら分かると思うよ」


 そこをよく見てみると、フラワーマンティスの顔が見えた。ほんの少しの揺らぎの乱れ。それがフラワーマンティスの擬態を見破る方法だった。


「見えた!」

「コツが掴めたら、すぐに判別が付くようになると思うよ」

「じゃあ、昨日も最初から気付いてたの?」


 フラワーマンティスに気付いていて、あんな近くで花を見ていたのかなと思って訊いてみた。すると、アリサが首を横に振ったので、目を丸くしてしまう。


「ううん。気付いてなかったよ。でも、ヒナが近づいた時に殺気が漏れたから分かったって感じ」

「そうなんだ。ドラゴン特有のもの……って訳でもないか。殺気くらいなら、何かしらの達人でもそういうなら出来そうだし」

「ヒナに向いているものなら何となく分かるよ?」

「う~ん……せめて自分に向けられているものなら納得出来るんだけどなぁ……」


 何故自分に向けられたものではないのだろうと思ってしまう。あの時も私を狙っていたから倒したって言っていたし事実なのだとは思う。それだけ私を大事に思ってくれているって事かな。

 フラワーマンティスの居場所が分かるようになったので、アリサと一緒に戦っていく。私がフラワーマンティスの攻撃を誘発させて、アリサが羽の爪で首を抉り取るという方法で次々に倒していった。

 私もフラワーマンティスの攻撃を潜り抜けて首を吹っ飛ばしたりして倒す事は出来た。個体数が増えていると考えられていた通り、フラワーマンティスの数はかなり多かった。全部で三十二体を倒したところで、私達はギルドに戻る事にした。

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