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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界旅始め

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改造人間

 インベントリでの閲覧を終えたのとほぼ同時に背後で音がした。振り向きと同時に身体に衝撃が走る。


「うっ……!?」


 風の砲弾が飛んできていたみたいだ。衝撃によって、吹っ飛んだ私は背後にあった本棚に突っ込んで破壊した。


「貴様何者だ?」


 声の主は、黒い外套を身に纏っていて顔が見えない。でも声からして男だという事は分かった。片手が前に出ているから、魔法を放ったのは、この不審者だという事が予想される。

 そして、不審者の声からは怒りの感情が溢れているのが分かる。


「私の研究記録をどこにやったぁ!?」


 どうやらここの持ち主で間違いないらしい。つまり、あの記録の著者という事だ。


「さぁ? 自分で捨てたんじゃない?」

「貴様ぁ……」


 歯を剥き出しにしながら唸る男は、再び風の砲弾を放ってきた。でも、放たれるところが見えていれば対処出来る。雷鎚トールをぶつけて、砲弾を私の背後に散らせた。命中した壁が凹んでいる事から、かなりの威力があったと分かる。

 私自身と雷獅鷹の衣に風耐性がなかったら危なかったかもしれない。


「我が悲願を邪魔する者は、誰であろうと許さん!!」

「悲願って? ただの承認欲求でしょ? 誰にも見向きされないから、誰もが目を離せないような人になるって。あはは、馬鹿みたい」

「ぐぎぎ……」


 顔がちゃんと見えなくても、男が青筋を立てているであろうという事は分かった。その怒りが口から漏れているから分かり易い。怒らせれば、その分相手から冷静な思考を奪う事が出来る。単純な攻撃なら、私でも打ち消せる。


「実験に使ってやろうと思ったが、貴様はここで殺してやる!!」


 再び風の砲弾を放ってくる前に、近くにある机を雷鎚トールで弾いて飛ばす。男はその机を風の砲弾で破壊するので、その影に隠れて接近し、雷鎚トールを振う。

 男のお腹に命中したのだけど、異常に硬い感触が返ってきた。それでも男は軽くノックバックした。


「ふっ、そんなものか」


 男が私を嘲り笑う。レベル差とかステータス差とかそういう次元じゃない。そんな感覚ではなかった。仮にレベル差とかがあったとしても、衝撃は身体の中に送られるはず。だから、頭を殴れば脳が揺れるし、お腹を殴れば息が詰まる。それでも盗賊のボスみたいに我慢する事は出来るだろうけど、男は我慢しているという領域ではなかった。

 まるで、筋肉という名の金属があるみたいな感じだ。高密度のマッチョボアを殴ったみたいな印象が一番近いかもしれない。


「もしかして、自分も改造してるの……?」

「ふはははは!! 実験成果を自分に施すのは当たり前だろう!?」


 どうやら成功した実験の一部を自分の身体でも試していたようだ。自分をより強化出来れば、他の人が自分を見てくれる。自分を馬鹿にした奴等を見返す事が出来ると思ったのかもしれない。

 やっている事は狂気の深域に踏み込んでいる。

 男は距離を取りながら風の砲弾を放ってくる。それを打ち消しつつ、雷鎚トールで雷撃を放つ。男はそれを直接受けても口元が笑っていた。


(雷……じゃなくて魔法かな。あらゆる耐性を上げているって事? でも、ダメージを消せているわけじゃない。本当に一瞬だけど、痛みに耐えているように口が真一文字になっていたし、雷撃を受けて身体が震えていた。さっきもノックバックしたし、ダメージや衝撃の減衰だけで、無効では無いんだ。それならある程度やりようはある)


 そんな事を考えていると、風の砲弾が放たれてきた。私はそれを打ち消さずに避ける。


「はっ! もう打ち消すスキルも使えないみたいだな! これで終わりだ! 死ねぇ!」


 風の砲弾が次々に放たれてくるから、それを避けて部屋から出る。


「待ちやがれ!」


 追いかけてくる男を入口横で待ち伏せて、その顔面に雷鎚トールを叩き付けた。


「ぐっ……」


 顔はお腹と同じようにはいかないみたい。どれだけ強い身体を持っていても、顔に何かが命中するのは驚くし、反射的に身体が動いてしまうのだと思う。多少ふらついているから、脳は強化されていないと見ても良いかな。

 ただ相手も常人じゃない。後ろに蹌踉けながらも、私に向かって風の砲弾を放ってきていた。私の身体に命中して、背後の壁に身体を叩き付けられる。

 【痛覚耐性】のおかげで立ち上がる事が出来るけど、ジンジンとした違和感がある。


(身体は動く。なら良し)


 身体に問題がない事を確認した上で、追撃を掛けようと思ったら横から大きな拳が出現した。


「っ!」


 咄嗟に反応して雷鎚トールを合わせたけど、それでも吹っ飛ばされた。空中にいる間に、拳の正体を確かめると、そこには筋肉で身体が肥大化している人がいた。身長は三メートル近くありそう。


「改造人間……っ!?」


 大きな気配のせいで、改造人間の気配すら【気配察知】で感じ取る事が出来ていなかった。

 口は大きく開けられており、目の焦点も合っていないような意識があるのか分からない顔をしている。本当に不気味な人だ。

 観察記録にあった改造人間だと分かった瞬間、横にある扉から別の拳が出て来たので、バックステップを踏んで避けた。顔付きが若干違うけど、似たような改造人間が出て来た。こっちもあっちも髪の毛がない。改造されたら髪の毛がなくなる決まりでもあるのだろうか。

 改造人間達は、その場で止まらずに私に向かって突っ込んでくる。振られる拳を避けてから、腕を叩き折るつもりで雷鎚トールを叩き付ける。


「硬っ……」


 腕を折る事も出来ない。それどころか攻撃が効いているのかも分からない。そこにもう一人の改造人間の拳が接近する。雷鎚トールを横から叩き付けて私の横をすれすれで通り過ぎるようにさせる。

 二体の改造人間の攻撃を雷鎚トールで弾き続けていると、奥の方で男がニヤリと笑いながら見ていた。私相手なら改造人間で十分だという事だと思う。実際改造人間の攻撃は、一撃で私を戦闘不能にさせるだけの力を持っていそうだ。


「おいおい、良いのか?」


 男が急に何か言い出した。こっちは生きるか死ぬかの戦闘中なのに、話を聞く余裕があると思っているのだろうか。実験を好んでいるわりに、頭は悪いようだ。


「そいつらは、元々善良な人間だったんだぞ?」


 そう言った男の表情は、次の瞬間に呆けたようになった。攻撃を掻い潜った私が改造人間の頭を雷鎚トールでぶん殴ったからだ。


「だから何!? あんたのせいで、この人達は人ではなくなった! なら、私が解放してあげるしかないでしょうが!」


 改造人間にされた時点で、この人達の人としての命は終わった。今こうして身体を弄ばれているこの人達の魂を呪縛から解き放つには殺すしかない。だから、殺す。

 まぁ、そんな簡単に出来れば苦労はしないけど。

 頭を殴った改造人間は、多少ふらふらとしていたもののすぐに殴り掛かってきた。頭をやられているはずなのに復帰が早い。でも、脳を揺らして動きを阻害する事は出来るみたいだ。

 雷鎚トールで攻撃をいなして、雷鎚トールに雷を纏わせる。もう一体の改造人間が横から蹴ろうとしてくるので、その足を踏み台して突っ込み、改造人間の頭に雷鎚トールを叩き付ける。打撃と雷撃の二段構え攻撃によって、改造人間が大きく蹌踉ける。そして、そのまま倒れた。


「な、何!?」


 男が大きな声を上げる。


『ヒナのレベルが上昇しました。10SPを獲得』


 殺せた。それが男の反応とレベルアップにより分かった。これで改造人間の弱点が分かった。


(雷撃……いや、違う。それだけじゃない。頭に雷撃を叩き込む事で殺す事が出来たんだ。改造人間は、あれと違って雷撃が通じる。そして、それが脳に届けば殺せるって事だ。それが分かれば!)


 再び雷鎚トールに雷を纏わせようとしたところで、風の砲弾が何発も飛んできた。バックステップとサイドステップで避けていく。その中を改造人間が走ってきて拳を振ってくる。


「風と合わさると厳しいかな……」


 男は歯を剥き出しにして怒りを前面に出していた。あいつの怒りのポイントが分かってきた。改造人間は言わば男の作品。それは実験の記録も同じ。それらを壊され、奪われるという事が怒りのポイントになるみたいだ。


「貴様だけはぁ……必ず殺してやるぞぉ!!」


 その声と共に周囲の扉から改造人間が大量に出て来た。全員ムキムキだ。MPに余裕はあるけど、攻撃しないといけない箇所が頭だけという点から一気に倒すのは難しい。


「おぅ……それは無理」


 私は身を翻して駆け出す。私がまともに戦わないのを見て後ろから大きな声が聞こえてきた。


「逃げるのかぁ!?」

「うっさい! ば~か!!」

「ば、馬鹿だと……!?」


 何か狼狽えていたけど、どうでもいいので逃げる。あの数を相手にするには、本当に分が悪すぎる。戦い方を考えないと。通路の奥に向かうように走り続けた。

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