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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界旅始め

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メディカルバード

 カトリーナさんが仕事に戻った後で、食後のお茶を飲んで休憩してから掲示板の方に来た。次に行く依頼をもう一度吟味するためだ。他にも良い依頼があるかもしれないしね。


(あの森にいるのは、マッチョボアだけじゃない。メディカルバードの討伐もしくは捕獲かぁ……鳥って、私と相性は最悪かな。魔法での討伐は羽根が焼けたりして、素材価値が下がるだろうし……採取依頼を受けようにも、ここら辺の土地勘はないからなぁ。討伐依頼を受けながら調べて行くのが理想的。変わらずマッチョボアを倒して森を探索しつつ湖を見に行く方針で行くかな)


 結局、もう一度マッチョボアの依頼を受注して、今度こそ湖へと向かう。軽く走りながら森を移動していき、遭遇するホーンラビットとマッチョボアを叩き殺して回収していく。

 マッチョボアとの戦闘にも慣れてきた。頭蓋を気にしなければ、頭を殴って頭蓋を割り、脳まで達する事が出来れば簡単に倒せる。

 一撃で倒しているから、筋力の成長があまり見込めないというのが問題かな。もっと滅多打ちにして筋力を使っていた方がステータスの伸びが良くなるはず。ここら辺はもっと強敵が出て来てくれる事を祈るばかりかな。まぁ、グリフォンみたいなのは勘弁して欲しいけどね。

 順調に進んでいると、特徴的な鳥の鳴き声が聞こえてきて足を止めた。心電図の音みたいな感じで、ピッ……ピッ……ピッ……と一定のテンポで鳴いている。何となく嫌な鳴き声だ。

 声が聞こえてくる方向を見てみると、緑色の身体をしている鳥がいた。大きさ的にはオウムよりも大きいくらいかな。


「あれがメディカルバードかな。思ったよりも大きいかも。まさか、あの心電図みたいな音でメディカルバード? この世界って心電図あるのかな……」


 小鳥くらいのサイズを想像していたから、ちょっと大きくてびっくりした。

 雷鎚トールの大きさを金槌くらいにして、思いっきりぶん投げる。魔法以外に使える遠距離攻撃手段の一つだ。滅茶苦茶原始的な方法だけど。

 メディカルバードは、すぐに気付いて飛び立とうとしたけど、枝を蹴るという動作で動き出しが遅れてしまい、雷鎚トールが首を打ち据える。

 頭が変な方向に曲がって、メディカルバードが地面に落ちてきた。回収しようとしたら、メディカルバードの首がほぼほぼ取れ掛かっている事が分かった。吹き飛ばなかっただけでもマシだと考えておこう。


「一応倒せなくはないのかな」


 逃げられる可能性も普通にあるから安定して狩れるというわけではない。依頼として受けても、安定した収入にはならないだろうから無しかな。

 それにしても、【精神耐性】の効果は本当に凄い。向こうの世界でこんな事をしていたら、罪悪感とかで押し潰されていただろうから。感謝もあるけど、同時に【精神耐性】の恐ろしさも改めて再認識出来た。


「見つけて倒せたら倒す方針かな」


 メディカルバードを倒した後、もうしばらく走りながら進んで行くと、メディカルバードの能力が明らかになった。私がマッチョボアの身体に雷鎚トールを投げつけて横倒しにした瞬間にメディカルバードの鳴き声のテンポが早くなっていき、マッチョボアの身体が緑色の光で包まれていった。

 すると、死んだと思っていたマッチョボアが身体を震わせ始めた。嫌な予感がした私は、急いで雷鎚トールを引き戻して、メディカルバードの方に向かって投げつける。マッチョボアを回復していたメディカルバードは反応に遅れて首が飛んでいった。

 そのまま駆け出して落ちてくる雷鎚トールを掴んで、元の大きさに戻しつつマッチョボアの身体に叩き付ける。マッチョボアのぶっとい骨が折れる音がする。これによってマッチョボアが沈んだ。倒したマッチョボアとメディカルバードはちゃんと回収する。


「あれがメディカル要素か……モンスターを助けるモンスターと……そういうのもあるんだ。これからは別種のモンスターの連携にも気を付けないといけないかな」


 グリフォンとの戦いで、モンスターの連携があるのは知っていた。だけど、それは同種のモンスターの話だ。別のモンスターでも援護とかをしてくれるというのは知らなかった。怪我をした相手を無差別に回復させるのかもしれないけど、厄介である事は間違いない。


「モンスターだけじゃなくて、私も回復対象になるのかな? まぁ、今は気にしないで良いか」


 それから何度かメディカルバードとも遭遇した。どうやら湖の近くに住んでいるようで、湖に近づいていくと数が増えている気がする。

 ただし、メディカルバードの討伐効率は本当に悪い。【気配察知】で見つけて雷鎚トールを投げるという事をしているけど、こっちの動きを察知するタイミングが合わないと逃げられてしまう。

 やっぱりメディカルバードの依頼は受けないようにする事を決めた。報酬が一万リルで結構高いのだけど、弓とかを使う冒険者向けかな。弓を使う人は、矢を買わないといけないし、出費が多いから、そこら辺で優遇している感じがする。


「マッチョボアが二十八体、ホーンラビットが二十匹、メディカルバードが七匹か。帰りも合わせたら、午前よりもいっぱいお金が貰えるかな。あっ、そろそろ湖っぽい」


 森が終わる場所を見つけたので、そこを抜けていくと大きな湖が見える。その湖の上ではメディカルバードが飛んでいた。ここが狩り場って感じなのかなと思ったけど、ここにいる冒険者はメディカルバードを狩ろうとしていない。

 それどころか、湖を枝で叩いていた。


(……小学生くらいの時にやってたな)


 近くの川とか池で枝を使って水面を叩くという遊びをしていた記憶はある。何が楽しかったのか全く覚えていないけど。

 でも、ただ遊んでいるわけがない。これで本当に暇で遊んでいるだけだったら、色々と心配になるし。

 ジッと森の中から観察していると、湖からワニが出て来た。水面を叩いていた冒険者に向かって突っ込んでいる。


「わぁ……ワニって湖にもいるんだ……」


 体長は四メートル前後かな。滅茶苦茶でかい。あんなのに水中で襲われたら一溜まりもないだろう。冒険者達は、盾持ちがヘイトを買って、他が横から攻撃するというやり方で戦っている。火の魔法を使っているから、火が弱点なのかな。

 割と湖に足を浸けて戦っているから、雷系の魔法とかを使うのは本当にやめておいた方が良さそう。感電死させる可能性が高いし。そんな事を思っていたら、湖の上で戦っていた一人の冒険者に湖から現れた新たなワニが飛び掛かった。


「うおっ!? あっぶね!」


 ギリギリのところで避けていたけど、噛み付かれたら一巻の終わりだ。さっき水面を叩いていたのは、こっちに獲物があるという事を知らせるため。つまりおびき寄せるためだ。


(まぁ、普通はああなるよね。水を叩いて獲物がいる事を知らせるなら、湖の水がある場所で戦えば、同じ事になるのは当たり前だもん。それを考えると、ちゃんと陸まで引っ張っていけるようにしないと一人で戦うのは危ないかな。水があると、いつも通りに動けるとは限らないし)


 Eランクの依頼にワニはなかったから、これからランクを上げたら受ける事になるかな。相手の習性はしっかりと覚えて行動しないと駄目だね。今さっきのワニの動きからその事がよく分かる。


「うん。あまり湖には近づかないようにしよう。でも、本当に綺麗な湖だなぁ……結構透き通ってるし、水質は良さそう。川に繋がって流れている方がヌートリアで合ってるかな。最悪、川に沿って歩けばヌートリアに着ける感じかな」


 そこら辺の確認をしてから空を見る。太陽は、まだ高いところにあるから、湖を一周して帰るくらいは出来るかな。

 時間短縮のためと体力作りのために、軽く走りながら湖を一周する事にする。湖の近くにもホーンラビットやマッチョボアがいるので、それを狩る事でお金稼ぎとかもしていく。


(結構狩ってるけど、レベルが上がらない。経験値的には美味しくないのかな。ホーンラビットよりもちょっと多いくらいなのかな)


 レベル上げとしては、効率的ではないみたいだけど、その方が逆に有り難いとも言える。レベルアップまでに色々な事を経験してステータスの上昇幅を上げられるから、レベルが上がる事にステータスの伸びも良くなっていくようになっていると考えるのが普通かな。

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