ジャイアントキリングの落とし穴
ビビアンさんと朝ご飯を食べていると、部屋がノックされる。
「は~い」
ビビアンさんが玄関の方に向かい、訪ねて来た人を迎える。そして、ビビアンさんが戻ってくると、後ろからメイリアさんも来た。
「メイリアさん。おはようございます」
「おはよう。今日の予定の確認と昨日の件の報告に来たわ。ああ、ご飯は食べていて良いから聞いて頂戴」
「はい」
言われた通り朝ご飯を食べながら、メイリアさんの話を聞く。
「まずは、昨日の件についてね。ヒナちゃんが手加減してくれたから、何とか話を聞く事が出来たわ。今回の件で、ヒナちゃんがお咎めを受ける事はないから安心して。向こうは、家宅捜索で余罪も見つかって、色々な事の常習犯として認められたから、処刑されたわ」
「え? 即日処刑ですか?」
あまりにも無慈悲な判決に少し驚いた。こういう事は、しっかりと裁判をやってから刑の執行とかになるわけじゃないのかな。
「ええ。窃盗、強姦、殺人、殺人未遂、死体遺棄、ああ強姦未遂もあるわね。それが複数件ずつ確認されたのよ。裁判長も取り調べに同席していたから、即座に判決が出たわ。まぁ、本当に極悪人として認められないと、こんな手続きを省いた判決は出ないわね」
「えっと……本当にヤバい人だったって事ですか?」
「そうよ。高レベルの【精神耐性】でも持っていたのかしらね。罪の意識が全く感じられなかったわ。あるいは、そもそも罪の意識を感じ取るような部分がスキル関係なく麻痺しているとかね」
メイリアさんが自嘲しているような雰囲気でそう言う。ダーインスレイヴを装備した状態の自分の事を思い出しているのかもしれない。
「まぁ、これでビビアンも安全よ。取り敢えず、今日は休んでおいても良いと思うけど、そこはビビアンの判断に任せるわ。それで、ヒナちゃんは今日どうするの?」
昨日の件の報告を終えたメイリアさんは、私の方の予定を確認する。
「そうですね。今日からは外に出ようかと思います。昨日の件で身体が動くのはよく分かったので」
「そうなの。じゃあ、今日は私も同行するわ」
「えっ、大丈夫なんですか?」
「ええ。今日は溜まっている仕事もないから平気よ」
今日の依頼はメイリアさんが付いてくる事になった。まぁ、私が依頼を受けるから、戦うのは私だけになると思うけど。ご飯を食べ終えた後、運動着に着替えて服はインベントリに入れておいた。
「じゃあ、行ってきます。ビビアンさんは、今日はお休みなんですよね?」
「ええ。念のためね。いってらっしゃい。また遊びに来てね」
「はい!」
ビビアンさんは私の頭を撫でてから送り出してくれた。メイリアさんと手を繋いでギルドへと来た私は、いつも通りのホーンラビットの討伐依頼を受注する。
「外は大変危険になっていますので、十分にお気を付け下さい」
「はい!」
受付のお姉さんに注意を受けた私は、お姉さんに手を振ってからメイリアさんと一緒に門の方に向かっていった。すると、顔馴染みになった門番さんが少し驚いていた。私がまた門の外に出るというのに驚いた感じだ。
「大丈夫なのか?」
「はい。今日はメイリアさんも一緒に来てくれますので」
「そうか。それなら安心だな」
そんなやり取りをしてから、メイリアさんと一緒に外に出る。こうして一緒に外に出て歩くのは初めてだ。グリフォンの一件はミモザさんに抱っこされた状態だったし。
「そうだ。ヒナちゃんに一つだけ伝えないといけない事があるわ。レベルアップについてよ」
「レベルアップについてですか?」
「ええ。ヒナちゃんは、グリフォンを何体倒したかしら?」
「えっと、三体です」
「その三体を倒して、上がったレベルは?」
グリフォン一体につき一回レベルアップした事を覚えている。
「3です」
「おかしいと思わなかった?」
「あっ……」
確かに、グリフォンはCランクのモンスターと言っていた。ゲームと同じ理論で言えば、それだけの経験値を貰えるはずだから、レベルの低い私は一気にレベルアップしてもおかしくないはずだった。でも、上がっているのはきっかりと3だけだ。
「そう。どれだけ強いモンスターを倒したとしても、一回のレベルアップで上昇するレベルは1で固定されているの。ただし、経験値は蓄積されているから、一体のモンスターを倒すとその度にレベルアップするのよ」
「えっ……じゃあ、ステータスの蓄積が……」
「そう。一体倒す度にトレーニングするしかなくなる。でも、それはとても効率が悪いでしょう? だから、特に気にしなくても良いけど、これからホーンラビットを倒す度にレベルが上がるから、ホーンラビットの経験値が美味しくなったって勘違いしないようにね」
「はい」
グリフォンの経験値がどれだけかは分からないけど、その経験値の蓄積によって、弱いモンスターを倒してもレベルアップが連続で起こる可能性が高いらしい。
レベルアップまで残り1のところで止まって、残りが蓄積分としてプールされる。レベルアップすると、蓄積分を消費してまた残り1で止まるという感じになっているのかな。レベルアップまでの経験がステータス上昇値になるこの世界では、割と厄介な仕様になっているみたい。
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「はい! いってきます!」
メイリアさんが見守る中で、私は次々にホーンラビットを倒して行く。そうして、とんとん拍子にレベルが上がっていき、レベルが7上がった段階でレベルアップが止まった。だから、グリフォンを倒して、計10上がったと考えれば良いのかな。
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ヒナ Lv16『雷鎚トール』
職業:槌士Lv5
MP:4313/4313 4011+302
筋力:2971(100)『2000』 2763+208
耐久:3717(75)『1000』 3335+382
敏捷:1056『500』 865+191
魔力:689『500』 578+111
器用:1068 930+138
運:160 90+70
SP:160 90+70
スキル:【槌術Lv9】【投擲Lv1】
【雷魔法Lv1】
【MP超上昇Lv48】【剛腕Lv23】【頑強Lv47】【疾駆Lv7】【至妙Lv16】
【採掘Lv58】
【MP回復力超上昇Lv37】【重撃Lv16】【暗視Lv68】【見極めLv1】【気配察知Lv10】
【火耐性Lv8】【風耐性Lv6】【雷耐性Lv5】【斬撃耐性Lv5】【打撃耐性Lv10】【毒耐性Lv3】【痛覚耐性Lv10】【苦痛耐性Lv10】【精神耐性Lv10】
【高速再生Lv78】【竜の血Lv3】
【生命維持】【不死】【女神との謁見】
職業控え欄:旅人Lv1 平民Lv18 採掘者Lv48
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ステータスの上がり幅が低い。レベルが7上がった事を考慮すれば、その感想になる。まぁ、こればかりは仕方ない。その代わり、グリフォンとの戦いでスキルが一気にレベルアップしたのだから、補えてはいるはずだ。
「7も上がっちゃいました」
「おぉ、そこそこ上がったわね。まぁ、グリフォンはCランクと言っても、末端くらいの強さだから、そのくらいが普通ね」
「レベル16だと、大体どのくらいの強さになるんですか?」
「う~ん……そうねぇ……レベルで言えば、Eランク上位くらいかしら」
「え? そうなんですか?」
私的には、もうDランクになっているつもりだったけど、これでもランクが一つ上くらいらしい。でも、上位ならほぼほぼDランクになっている感じなのかな。
「まぁ、ステータス的にはDランクどころかCランクに入っているくらいじゃないかしら。アーティファクトを入れたら、Cランク中位か上位くらいだと考えられるわね。まぁ、正確なステータスは知らないから、何とも言えないけどね。まだ時間はあるから、稼げるだけ稼いじゃいましょうか」
「はい!」
「でも、森には近づいちゃ駄目よ」
「は~い」
近づいてくるホーンラビットを次々に打ち倒していく。皮の状態を維持するために、魔法は使わない。てか、使い方がよく分からないし。【生命維持】と同じなら念じるだけで良さそうだけど。
そうして八十二匹程狩ると、日が高く上がっていた。それをメイリアさんも確認したのか、こちらにやって来た。
「今日はこれくらいにしておきましょうか」
「分かりました」
帰りもメイリアさんと手を繋いで歩いていく。こうして手を繋いでおけば、私が一人になることはないし、不測の事態にも対応出来るという事だと思う。それくらいメイリアさんは強いだろうし。
「ヒナちゃんは、ハンマーだけじゃなくて殴りや蹴りも使うのね」
「本当に偶にですよ。大きさを変えられるとはいえ、近いところにいると、ハンマーが当てにくいですから」
「なるほどね。殴りと蹴りは耐久のステータス上昇にも軽く繋がるから覚えておいて」
「あっ、そうなんですか?」
「ええ。自分の肉体を直接当てているからね」
「へぇ~」
自分の肉体で戦う人は耐久も伸びるようになるらしい。殴りと蹴りなら、自分の身体を傷付ける事に繋がるから、その分耐久も伸びるという感じだと思う。
ギルドに戻り、受付のお姉さんに案内された個室で八十二匹のホーンラビットを提出すると、七万四千リルの報酬を貰う事が出来た。




