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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界旅始め

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魂に刻まれている力

 ビビアンさんが朝ご飯を用意してくれている間に朝のルーティンを終わらせる。どうせ今日もミナお姉さんの下には行けないだろうと思っていたら、精神が持っていかれた。

 ただし、いつも通りに来たけど、ミナお姉さんの世界はいつも通りじゃなかった。まず白い。いつもはどこまでも黒く吸い込まれそうな場所だったけど、今はどこまでも白く照らされる場所になっている。

 そして、ベッドは少し大きくなり家具も装飾が付いて豪華になっていた。タンスみたいなものが増えていたり、キッチンがあったり本当に普通の家の要素が増えている。

 でも一番変わったのは、何故か剥き出しで置いてあるお風呂だ。本当に何故剥き出しなのか。というか、あれに水道は繋がっているのか疑問が多すぎる。


「姫奈様。ようこそ」

「ミナお姉さん!」


 背後にいたミナお姉さんに抱きつく。ミナお姉さんは優しく受け止めて頭を撫でてくれた。それがたまらなく嬉しい。


「今日は少々お話があります」

「ミナお姉さんからですか?」

「はい」


 ミナお姉さんからの話というと、私が向こうの世界で何かをやらかしたとかになりそうだ。心当たりはグリフォンくらいだけど、あれは別にミナお姉さんのせいでもなんでもない。寧ろミナ姉さんが施してくれた【不死】が救ってくれたまである。定着したのは予定外でもね。

 ミナお姉さんは、何故かテキパキと私の服を脱がしていき、自分も服を脱いで一緒に湯船に入った。お湯も何も張っていない湯船に全裸で入るのは、変な気分だったけど、すぐにお湯が肩まで上がってきた。


「どういう仕組みなんですか?」

「ただ私がお湯を溜めただけです。ここは私の世界ですので」

「なるほど。自由自在と……」


 水道が見当たらない理由がよく分かった。入れるも消すもミナお姉さん次第だからだ。程よい温度の湯に浸かりながら、ミナお姉さんに寄り掛かるのは本当に気持ち良い。これだけで天国に行けそう。まぁ、ここ自体天国みたいなものだろうけど。


「お話ししたいのは、姫奈様のお身体についてです」

「それって、向こうの世界の身体ですよね?」

「はい」


 【不死】については、前にも聞いたから、グリフォンの件ではないはず。そうなると、私の身体の話というのに心当たりがない。【竜の血】の方かな。


「姫奈様のお身体には、私の力が宿っています。【女神との謁見】がそれに該当します」

「私とミナお姉さんとの繋がりって事ですか?」

「はい。その結果、姫奈様は人から魅力的に見えるようになっていると思われます」

「へ?」


 一瞬よく分からなくなって思考が停止しかけたけど、ちゃんと考えれば理解出来る節はある。大体六歳差くらいあるビビアンさんが私を好いてくれている。しかも、肉体的な意味で。ビビアンさんがそういう趣味という風にも取れるけど、実際のところはどうなのか。

 ミナお姉さんが言う力を私が出しているとしたら、それで説明が出来るのも事実なので、結論付けるのは早い。


「ミナお姉さんに魅了の力があるという事ですか?」


 ミナお姉さんと繋がっている事による力なら、ミナお姉さん由来だと考えられる。ミナお姉さんの力が私から流れ出ているとかなら、私もすぐに納得出来るし。


「いえ、私の力の本質は、魂の保存と強化です」

「ほえ?」


 私の理解の範疇を超えた。そもそもミナお姉さんの女神としての力を詳しく聞いた事がなかった気がする。まさか、こんな形で聞く事になるとは思わなかった。


「姫奈様の世界から送られてきた魂を保存し、ステータスを与え強化するという一連の流れは私の力によるものです。その際、魂に刻まれているその方特有の力が発現する事が極々極々極々偶に発生します」

「ほぉ……」


 極を何度も繰り返していたところから、本当に稀な出来事だという事が分かる。


「最初に戻りますが、姫奈様には私の力が宿っています。そこから魂の強化が常に行われているような状態となっています。こうして、この場に来るだけでも促進されていると思って下さい。その結果、姫奈様自身の魂に刻まれた色欲の力が発現し始めているのです」

「んん? えっと、何て?」


 何となく聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がした。きっと気のせいだろう。


「姫奈様の魂には、色欲の力が刻まれています。その力が発現し始めているのです」

「色欲?」

「はい」


 ミナお姉さんは、しっかりとはっきりとそう言って頷いた。色欲。まぁ、普通に私が思っている通りの性欲由来の言葉だろう。その力が私の魂に刻まれているらしい。一体何故なのか全く分からないけど。


「色欲の力は、自身が好いた相手に自分を魅力的に見せる事です。このまま力が表に出て行けば、スキルとしても獲得するでしょう。詳細は、その時に分かるかと」

「つまり、私がビビアンさんを好きだから、ビビアンさんも私が魅力的に見えていたという事ですか?」

「そうかもしれませんね。相手の意識を無理矢理変えるものではなく、相手が持つ姫奈様への好意を引き出しやすくなるだけとお考えください」

「という事は、ビビアンさんも私への好意を持っていたから、余計に魅力的に見えるようになっていたという事ですか?」

「はい。その可能性が高いです」


 ちょっと安心した。ビビアンさんの心を私が勝手に変えてしまったのかもしれないと思ってしまったからだ。私が好きになった相手に自分への好意を植え付けてしまうようなものじゃなくて本当に良かったと思う。


「スキルとして手に入れば、その力をコントロールする術も身に着ける事が出来るかもしれません。ただし、本当に可能性があるだけとお考え下さい。この辺りは、私もよく分かっておりませんので」

「なるほど」


 せっかくスキルの話になったから、ついでに私が少し気になっていたものについて聞いてみる事にする。もしかしたら、私が考えているような理由とかじゃないかもしれないから。


「そういえば、私のスキルに【竜の血】が増えたんですけど、これってドラゴンの血を浴びたからですか?」

「はい。姫奈様の身体が大きく損傷した際に目覚めたものと思われます。【竜の血】には筋力などの補正の他に肉体の再生能力向上の能力があります。姫奈様が取り込まれた血が主を生かそうと活性化したのでしょう」

「なるほど……私がドラゴンになっちゃうみたいな事あります?」


 再生により【竜の血】が活性化して目覚めたのなら、そのままドラゴンになってしまうという事もあり得そうと思ってしまい確認する。これに対して、ミナお姉さんは首を横に振った。


「それはありません。人族が持つ事の出来るドラゴンの要素は血のみです。血以外の要素を持つ人族は、人族ではなく……竜人族などと呼ばれる事でしょう」

「なるほど……」


 まぁ、血だけでも凄い事ではあるはず。本の物語になっているくらいだから。


「それじゃあ、このまま【竜の血】を育てていっても大丈夫ですか?」

「はい。大きな問題はないでしょう」

「良かったぁ」


 取り敢えず一安心というところだ。ここで身体を反転させて、ミナお姉さんと対面になるようにして抱きつく。ミナお姉さんの布を挟んでいない胸に頭を乗せて癒されていると、ミナお姉さんの手がスッと伸びてきて、私の身体を撫でる。

 それはこの前とは全く異なるような慣れた手付きという感じがした。


(そういえば勉強しておくとかって言っていたっけ……え? 本当に勉強したの?)


 あまり変な事を学んでいないと良いなと思いつつ、ミナお姉さんの身体を上ってキスをする。すると、ミナお姉さんは私の身体を抱き寄せて、キスをしやすいようにしてくれた。


「姫奈様がお聞きしたい事はもう大丈夫ですか?」

「う~ん……はい。大丈夫です。今は特に思い付かないので」

「分かりました。では、勉強の成果を出せるよう励ませて頂きます」

「あ……お手柔らかに……」


 ビビアンさんと違い、ミナお姉さんはあまり遠慮をしないでくれるので、かなり乱れる事になった。お風呂からベッドまで続き、今はミナお姉さんの身体に包まれながら横になっている。


「ふぅ……」

「如何でしたか?」

「満足です……戻るまで、このままで良いですか?」

「はい。姫奈様のお好きに」


 このままミナお姉さんの身体に包まれたままウトウトとした気持ちの良い状態になっていく。ミナお姉さんの少し冷たい体温が掛け布団の中で心地よい。軽く揉んで楽しんでいると、意識が現実に引き戻されていった。同時にミナお姉さんの身体の感覚も消えていく。

 現実の身体では眠気などはなく、精神的にすっきりとした状態になっていた。


「ヒナさん。朝ご飯が出来たわよ」

「はい」

「あら? 顔を洗ってすっきりした?」

「はい!」


 さすがに、神様の世界で色々としていましたとは言えないからそう返事をしておいた。

 魂に刻まれている色欲の力と【竜の血】。私の身体は、やっぱり普通の人とは違うらしい。まぁ【竜の血】に関しては完全に後天的なものだけど、不安材料がなくなったから、このまま育てて安定した旅をするための力にしていこうと思う。

 そのためには、まずレベル上げかな。

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