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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界転生

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何かがいる?

 意識が戻ってくると、部屋の扉がノックされた。メイリアさんが迎えに来たという事だ。運動着に着替えてから、扉を開けて外に出る。


「おはようございます。すみません。お待たせしました」

「おはよう。ちゃんと起きていたみたいで良かったわ。何だか、少しすっきりしたような顔をしているわね? あっ! もしかして……お楽しみだった……?」

「違います!」

「まぁ、レパちゃんのぬいぐるみがあるからねぇ……」

「違いますって! あっ、それより、昨日は夕食を食べずに寝ちゃって、すみません」


 ミナお姉さんに会いに行っている二時間の間に忘れそうになっていたけど、メイリアさんの顔を見たら思い出したので、メイリアさんに謝っておいた。


「ん? ああ、気にしないで良いわよ。マスターキーで開けて確認したから」

「えっ!?」

「さすがに私はヒナちゃんの部屋の鍵を持っているから、いつでも侵入し放題よ」


 メイリアさんは悪い顔で笑う。保護者として、私が大丈夫かを確認するためにそういうところもしっかりしているらしい。それで私が怒ると思ったのかな。さすがに、何故かというのは分かるので怒りはしない。


「よっぽどの事がないと鍵を開けないという事は、今回の事で分かったので」

「むっ……大人な対応ね。まだ子供で良いのにね」


 メイリアさんは、私の頭を優しく撫でる。それが嬉しく感じるのは、どちらの性格によるものなのか。まぁ、どっちでも良いか。私である事には変わりない訳だし。

 メイリアさんと朝ご飯を食べて、いつも通りギルドへと向かう。これで四度目くらいなので、宿舎からギルドへの道、ギルドから門への道は大分慣れた。


「今日はどんな依頼にするのかしら?」

「討伐でいきます。まだ薬草の知識とかが朧気なので」

「なるほどね。その辺りがしっかりしているのは良い事ね」


 採取系のものは、採取するものが分かっていないと厳しい。採取するものの絵くらいは渡されるらしいけど、それがどういう植生なのかとかの情報は依頼書に書いていない。そこをある程度勉強して知っておかないと効率も悪くなるし、雑に扱っちゃうと、依頼を出してくれている人も効能的なもので損をするかもしれないからね。


「でも、大体の冒険者は、何度か依頼を受けて知っていくらしいわよ」

「う~ん……私はある程度知識を付けてからにします。毒草を採取しても嫌ですし、それこそ何かの間違いで依頼主の元に行っちゃって、気付かれずに使われたら大惨事ですから」

「ふふっ、本当にちゃんと考えているのね」


 メイリアさんは満足げに頷いた。私が意外と考えていたからかな。

 依頼をこなしていって、知識を蓄えていくべきかという事は、私も考えた。でも、やっぱり迷惑を掛ける可能性が高くなる事を考えて、調べてからという風に決めている。


「今日もホーンラビットを狩ってきます! 今のところそれくらいしかないので!」

「まぁ、一番安全で、Fランク依頼だものね。それに狩らないと、増えすぎて困る事になるし……」

「やっぱりそういう事があったんですか?」

「ええ。騎士団総出で草原に増えすぎたホーンラビットを狩りに行った事があるのよ……本当に鬱陶しかったわ……その分走りながら効率良く狩っていく方法を身に着けたのだけど」

「へぇ~」


 騎士団の裏話を聞きながらギルドに来た私は受付で、ホーンラビットの討伐依頼を受ける。今日の受付は、ビビアンさんじゃなかった。


(今日も非番なのかな……?)


 そう思って、無意識にキョロキョロとしていると、手続きを終えて戻って来た受付のお姉さんが小さく笑っていた。


「ビビアンさんなら、裏でギルドマスターと話していますから、しばらくは戻って来ませんよ」

「あっ、そうなんですか?」


 私がビビアンさんを探しているという事に、すぐ気付いたらしい。ビビアンさんと友達になっているという事がギルド職員内でも有名になっているのかな。


「はい。一応、私達のまとめ役ですので、会議などに出席する事も多いのです。こちら冒険者証です」

「そうなんですね。ありがとうございます。じゃあ、いってきます」

「はい。いってらっしゃいませ」


 受付のお姉さんに手を振ってから、メイリアさんと合流し手を繋いで門まで向かう。門番の人に冒険者証を見せるまでもなく通された。もう顔見知りになったからかな。門番の人も手を振って挨拶してくれるので、私も手を振り返して挨拶しておいた。


「それじゃあ、お昼近くになったら入口に戻るから。気を付けてね」

「はい!」


 今日は別の仕事が入っているらしく、門の前に常駐出来ないらしい。まぁ、常駐される方が申し訳ない気持ちになるのだけど、絶対にそこにいてくれるという安心感が強いので、今は少しだけ心細さも感じている。

 メイリアさんと手を振って別れて、私は草原に向かった。ミナお姉さんのところで、心をリフレッシュしたからか、身体が軽く感じる。軽く走りながら、ホーンラビットの胴体を狙うようにして蹴散らしながら、インベントリに仕舞っていく。ごちゃごちゃとするインベントリを整理していると、一つ気付いた事があった。


「これインベントリメニューに『解体』がある。レベルがアップしたから……いや、本にはない……という事は、死体専用メニューって事かな。一匹やってみよう」


 一匹をインベントリから解体してみると、ホーンラビットの角、ホーンラビットの塊肉、ホーンラビットの頭、ホーンラビットの足、魔石が手に入った。大体は分かるけど、魔石だけがよく分からない。説明を見ると、魔力の籠もった石でモンスターから獲れるとなっていた。


「う~ん……まぁ、いいや。これをギルドに提出すると、私は普通に解体が出来る判定になりそうだし、インベントリに放置しよう。放置したら何か変化が起きるかの検証にもなるし。あっ、塊肉も解体出来る。食べやすい大きさに出来る感じかな。旅をするには有り難い機能かも」


 外で料理をするのに便利な機能だと思う。これが転生特典という事なので、本当に暮らしやすくしている事が分かる。まぁ、隠すのが大変な気もするけど。隠さない人の方が多かったりするのかな。そこら辺は分からない。

 解体は一匹だけにして、次々にホーンラビットを狩っていく。大分慣れて来た事もあって、雷鎚トールの使い方が上手くなっている。


「ん?」


 順調にホーンラビットを狩っていると、その事に違和感を覚えた。


(私が一日休んだから、その分増加量が多かったという風に考えて良いと思うけど、それにしては草原にホーンラビットが多すぎる気がする。何だろう? 繁殖……いや、森に住んでいたのが出て来た?)


 その事を裏付けるように、森からホーンラビットが凄い勢いで数匹出て来た。そのまま私に突っ込んで来たので、フルスイングで蹴散らす。出て来たホーンラビット全滅させた後、ホーンラビット達が飛び出して来た森の方をジッと見る。


「……何かがいる?」


 念のため確認する事にした。曖昧な報告だと逆に困らせるだけになるし、何かしらマーキング的なものを見つけられれば良い。深入りせずに調べるというだけだ。でも、特に何かしらの異常があるようには見えない。ホーンラビットが飛び出して来たくらいしかない。


「奥かな? 手前に異常がなかったから信憑性が薄いけど、メイリアさんに報告しておこう。何もないと良いけど……」


 さすがにこれ以上奥に行く訳にもいかないので、メイリアさんに報告するだけにする。私の気のせいかもしれないから。その事も強調して伝えれば問題はないはず。

 一旦森から出ようとしたら、【気配察知】に大きな気配を感じた。大きな気配が、私の背後から高速で向かってくる。そっちを振り返ると、大きなモンスターが木々の隙間を抜けて飛んで来ていた。そのモンスターの爪による攻撃を雷鎚トールで防ぐ。衝撃が走るけど、ちゃんと防げてはいる。


「あっぶなっ!」


 私を攻撃したモンスターは、私の背後を抜けて地面に着地する。そこには、鳥の頭と羽と前脚、獅子の身体と後ろ脚を持ったグリフォンがいた。


「こんなのがいるって……聞いてないけど……」


 ミナお姉さんの下に行けたから運が良い日のはずなのに、まさかこんなのに会ってしまうなんて……本当についてない。でも、ここで私が逃げたら、街まで付いてくる可能性がある。


「倒せるかな……いや、やるしかないか」


 街の入口にメイリアさんがいるのなら誘導するのも有りなのだけど、今日に限って仕事でいない。だから、街の皆に被害を出さないために、ここで倒す。

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