ビビアンさん合流
お昼に入ったお店は、イタリアン料理店のような場所でパスタとピザの主役のお店だった。メニューも割と豊富で、向こうでもお馴染みのものから、ちょっと異色な感じのものまで色々ある。
(割と、向こうから来た人達の影響を受けているのかな? いや、別にこっちにイタリアンがあるからっておかしいわけではないのか。異世界だから絶対に変わった料理なるという訳でもないだろうし。同じような料理が絶対に生まれないなんて言い切れないもんね)
そんな事を思いながら、何を食べようか考える。
異色なものを食べるべきかとも考えたけど、結局私が選んだのは、カルボナーラ的なパスタだ。メイリアさんは、ペペロンチーノみたいなパスタで、ビビアンさんはジェノベーゼのようなパスタだった。後は三人で食べるためにマルゲリータみたいなピザも注文した。
皆が注文したものが届いて、昼食を始める。店員さんが子供用のフォークをくれたので、私でもある程度食べやすくなっている。大人用のフォークだと、口汚しそうだし。というか、そこまで子供に見えるかな……
「ヒナさんも、今日はお休みなのですね」
ビビアンさんから話を振ってきた。ちょっと意外だったというような感じがするから、私がこんなに早く休みを挟むとは思わなかったのかな。
「はい。メイリアさんから休めと言われてしまったので。それなら街の観光をしようと思って、案内して貰ってるんです」
私の説明に、ビビアンさんは納得したような表情をしていた。その中に安堵的なものも感じる。私が怪我をしているのかもとか考えたのかな。
「そうなのですね。ここは観光都市という訳では無いので、特に見て回るような観光名所も少ないのですが、楽しめていますか?」
「はい。おかげさまで」
「それは良かったです」
ここまで結構歩いているけど、普通に楽しめている。向こうの世界で観光しているのと同じような気分でいられているという事だ。
出来れば、レパも一緒にいられたら良かったけど、こればかりは仕方ない。レパの街はレパに案内して貰って、ちゃんとデートしないとかな。
そこで、メイリアさんが何か思い出したように顔を上げた。
「そうだ。割と出回っている内容だから、ヒナちゃんにも話しておくのだけど、ヒナちゃんが捕まっていた場所の周辺とかの調査が進められているの」
「ああ、ハヤトさんも一緒に行ってるやつですよね?」
「ええ。勇者様から聞いていたの?」
「はい。勇者パーティーに勧誘された時に聞きました」
調査に参加するから、しばらくはこの街にいるという話を受けていた。それから一度も見ていないという事は、向こうに泊まり込みで調査をしているのだという事が予想出来る。街にいたら、ミモザさんが会いに来てくれる気がするし。
「冒険者になられたということはお誘いを断ったのですか?」
「はい。私は自由に旅がしたかったので」
「なるほど……」
メイリアさんとビビアンさんが目を合せて何かしらの考えを伝え合っていた。それが何か分からないけど、私に関する事というのは分かる。
「まぁ、それは置いておいて。その調査の中間報告とかを受けているのだけど、ヒナちゃんが倒した盗賊達の仲間らしき人物は見つかっていないし、アジトの近くに別のアジトがあるという感じでもないみたいなの」
「仲間がいないというのも、この周辺だけの話で、他の場所にいる可能性はあるらしいのです。その理由が、皆さんが誘拐された場所にあります。この周辺でだけ誘拐が頻発していれば、この周辺にだけいる盗賊団と言えるのですが」
「ここから遠くに住んでいる子も多かったんですよね? 多分、私も同じでしょうし……ただ、連れて来られた時の記憶は曖昧で、両親が殺されたところは覚えてるんですが、その後から急に曖昧になって……多分睡眠薬か何かを盛られていた可能性があると思います」
「確かに、誘拐するのならそれが一番安全だものね。こういう事だから、まだ仲間がいる可能性があるの。そもそもヒナちゃんを知っている人達がどのくらいいるのか分からないから、何とも言えないけど、十分に気を付けるようにしておいて」
「はい」
私も全ての構成員を知っている訳では無いので、あれで全部かどうかも分かっていない。だから、警戒だけはしておいた方が良いのは事実だ。
そうして盗賊の話題になった事で、一つ気になった事が出来た。
「そういえば、盗賊団って、私でも倒せるくらいの強さだったんですけど、大体はそんなものなんですか?」
気になったのはその部分だ。メイリアさんと戦う度に思っていたけど、盗賊団は大分弱かった。それこそメイリアさんが一人いれば、全滅させられたのではと思う程に。その強さの基準が正しいものなのかを確認しておきたかった。
「盗賊団によるわね。正面突破を主にしている盗賊団は、かなり強いわ。その強さ故の正面突破だからね。でも、ヒナちゃんを襲った盗賊達は、奇襲を主にして、弱い人から奪う事を目的とした盗賊団のようね。そういう盗賊団は、人を殺すという事も少ないし、モンスターとも極力戦わないようにするからレベルも低くなるのよ。その結果ステータスも低いから、アーティファクトなんて外部ステータスを持てば余裕で勝てる可能性は高いわ」
「安全を優先するからですか?」
「ええ」
安全を優先するが故に、自分達が勝てる相手だけを選ぶので、中々レベルが上がる事もなくモンスターとの戦いも極力避けるという選択をするらしい。最低限の労力で最大限の成果をという感じかな。
その結果、アーティファクトを持った私に負ける事になったわけだ。
「人攫いは子供を優先します。大人を捕まえる場合には、基本的には騙して奴隷契約させる事で捕まえます。なので、詐欺などには気を付けてください」
「はい。一緒に捕まっていた人も仲間に裏切られたと言っていました。信用している相手でも、気を付けないといけないですよね」
「それは割と極端な例ね。正直、盗賊団がそこまで手の込んだ事をするとは思えないけれど、それだけ男の人が欲しかったという事かしら?」
「さぁ? 私が殺しちゃったので分からないです」
「そう……まぁ、仕方ないわね」
そんな調子で若干物騒な話をしながらお昼ご飯を食べていった。この時、ビビアンさんに口を拭われた。私の口は何かしらが付く運命にあるらしい。子供用のフォークなのに。もっと丁寧に食べられるように頑張ろう。これはこっちの身体になれるためのリハビリと考える
お店を出た後、再びメイリアさんと手を繋いで、ビビアンさんとも一緒に歩いて行く。
「ヒナちゃんは、口が小さいのにいっぱい食べようとし過ぎね」
「いっぱい……」
割と意識しているつもりだけど、それでも多くなっているらしい。食器の使い方の基準が向こうの世界になってしまっているから、少なめと思っていても今の身体にはいっぱいになっているのかもしれない。
「まぁ、これまで食べられなかった分、反動でいっぱい食べたいのかもしれないわね」
メイリアさんが頭を撫でながらそう言う。確かにいっぱい食べられる今の環境に興奮しているのはあり得る。八年間果物と干し肉が基本だったわけだし。栄養は【生命維持】で最低限補えるとはいえ、食べる量は本当に少なかった。もう少しカロリーは欲しかったかもしれない。
「太らないように気を付けます」
「寧ろ今は太りなさい」
「適度な脂肪は必要ですよ」
「は~い」
素直に返事をすると、今度は二人から頭を撫でられる。完全に子供か妹扱いだ。
ただ二人の意見には、私も同意だ。今の身体は元の痩せぎす状態から、少し肉が付き始めたかなくらい。食べる量が格段に増えているから、身体を作る材料が増加しているためだ。
それでも、骨が浮いているところの方が多いし、健康的とは言い難い。それでも戦闘が出来るのは、やっぱりステータスという恩恵のおかげだと思う。
「せっかくですから、防具屋に行きましょう。ずっと運動着のままというのも危険ですから」
「まぁ、そうね。街の防具屋か……良いところ知っているの?」
「大分裏の方にある防具屋は、良い物を揃えているでしょ?」
「あ~……でも、あそこって、ギルドの防具屋にも卸しているでしょう?」
「全部は卸しているわけじゃないもの。何か良いものがあるかもしれないじゃない?」
「確かに……なら、そうしましょうか。ヒナちゃんも良い?」
「はい。私の防具ですし」
こうして、三人で防具屋に行く事になった。二人の話から考えるに、結構隠れた名店という気がする。向こうの世界ではそういう場所は怖くて行けないけど、メイリアさんとビビアンさんがいるのなら、ちょっと楽しみだ。




