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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界転生

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告白

 ミナお姉さんのところから意識が戻ってきた。私が祈りの姿勢を崩すと、丁度レパが洗面所から出て来るところだった。


「また祈ってたの?」

「うん。これからの私の日課だからね」

「ふ~ん……」


 レパは、ちょっと訝しんでいるようだった。これまでした事ないことを日課にしているから、レパが訝しむのも当たり前の事だった。でも、その理由をしっかりと話す事が出来る。ミナお姉さんから許可も貰えたからね。


「レパに話があるんだ。リタやキティにも聞いて欲しい話」

「ん? そうなの? じゃあ、呼んでくるね」

「うん。ありがとう」


 レパが二人を呼んで連れてきてくれる。皆が揃って、二つあるベッドに二人ずつ座って、話をする体勢になる。


「実はね。私は転生者なんだ」


 初っ端から本題を出す事にした。こういう事は最初からしっかりと結論を話しておくに限る。レパ達の反応は、単純だった。単純にぽかんとしている。ミナお姉さんの言う通り、信じて貰えていないのかもしれない。


(どうやって言えば信じて貰えるかな……いっそ嘘だったというのも有りだけど……)


 そんな事を思っていたら、キティが口を開く。


「えっと……転生者って何?」


 思わずずっこけるかと思った。皆がきょとんとしていた理由が、そもそも転生者という言葉を理解していない事にあるとは。いや、実際信じて貰えないという事は、そもそも知らないという可能性があると考えておくべきだった。


「えっと……生まれ変わりって言えば分かるかな? 一度死んで、別の身体になって生まれ変わった人を転生者って言うの。私は別の世界にいたんだけど、そこで雷のせいで死んじゃって、こっちの世界に転生したんだ。その記憶が戻ったのが、一週間前。ちょうど皆で盗賊達を倒した日なの」


 説明すると、皆は唖然としていた。突拍子もない事だという事は分かっている。でも、皆に黙ったままというのが、少し気持ち悪く感じていたので、ちゃんと話しておきたかった。


「じゃ、じゃあ、私が前まで一緒にいたヒナは……いなくなっちゃったの?」


 レパは、不安そうな表情で訊く。私が別の私になったという事で、元々の私が消えたのではないかという風に思っているみたいだ。


「ううん。元々の私もいる。だから、レパの事も覚えてるし、私がどういう状況にいたのかも覚えてるよ。元々私の人格がコピーされてるから、私がそのままいたって感じ。人格を乗っ取ったってよりも、ただ記憶が蘇っただけ」

「そうなんだ……」

「元々は十五年生きてたから、そこからくる経験で行動する事が増えた感じかな。私が朝祈っているのは、私を転生させてくれた神様に会いにいくため。まぁ、行ける確率は低いんだけど」

「あぁ……だから、最近祈るようになったんだね」


 さっきレパが抱いた疑問がこれで晴れた。だからか、レパは少しすっきりとしたような表情になっている。


「うん。皆は友達だから知っておいて欲しかったんだ。突然これまでしなかったような行動をするようになったし、気味悪がられるかなとも思ったから……」


 皆の顔を見るのが怖くなってきて、思わず顔を逸らしてしまう。でも、これも本音だ。私は私という自覚はあるのだけど、それでも少しは変わっている。だから、そこを気味悪がられていてもおかしくはない。

 そんな考えが頭を過ぎっていると、横からレパに抱きしめられた。反対側からはリタが、正面からはキティが私を抱きしめる。


「気味悪がるだなんて、そんな事しないよ」

「そうよ。ヒナは元々変わった子だもの」

「ヒナは、友達だもん。そんな酷い事思わないよ」


 さりげなくリタが酷い事を言っているような気もするけど、私を気遣ってくれた言葉だと信じよう。


「ありがとう、皆」


 お礼を言うと、皆が抱きしめてくれる強さが増す。皆の暖かさが心地よい。しばらく皆に慰められ続ける。そうして皆が離れた後、レパの尻尾が腰に回ってきた。


「そういえば、ヒナは何をしに、神様に会いに行ってるの?」

「え?」


 毎日のようにミナお姉さんに会いに行こうとしているからか、レパは私が何をするために会おうとしているのか気になっているみたいだ。秘密にする事も出来るけど、ここまで来て秘密にするというのは、皆に失礼かもしれない。


「女神のお姉さんの身体を堪能するため!」

「え?」


 私の言葉にレパだけでなく、リタやキティも困惑していた。


「お姉さんが大きくて柔らかくて幸せなの。それを堪能するために会いに行きたいんだ」

「ふ~ん……ヒナは、大きいのが好きなの?」

「う~ん……まぁ、そうなのかな。昔から憧れがあったからね。自分がというよりも触りたいって方だけど」

「そうなんだ……」


 レパはそう言いながら、自分の胸を触る。成長途中だから、ほんのりと膨らんでいるレパの胸は、ミナお姉さんとは比べものにならない。ただ、そんなに気にする必要はないと思うけど。


「レパはレパで好きだよ」

「……馬鹿」


 レパはそう言いながらも、尻尾で私を引き寄せた。口では馬鹿と言いながらも、私の事が好きだというのが丸わかりになっている。


「はいはい。ご馳走様」


 リタが肩を竦めながらそう言う。すると、キティがリタの裾を引く。


「ん? どうしたの?」

「リタちゃんは、私の事好き?」

「ええ、好きよ」


 リタはそう言いながら、キティの肩を抱き寄せる。すると、キティは嬉しそうに尻尾をピンと立てて、嬉しそうにリタに擦り寄っていった。


「リタとキティの方がご馳走様じゃん」

「うるさいわね」


 リタは、私の方に来て頬を摘まんでくる。本気で怒っているわけではないというのが、リタの笑顔から分かる。

 そんな事をしていると、部屋がノックされた。レパが出てくれると、メイリアさんが入って来た。


「四人ともこっちに揃っていたのね。リタちゃんとキティちゃんがいなくて驚いたわ。それじゃあ、朝食を食べに行くわよ。ヒナちゃんは、今日も訓練場?」

「はい。お願い出来ますか?」

「ええ。良いわよ」


 今日もメイリアさんと戦闘訓練をしていく。こっちの世界での戦闘にも大分慣れた。ただ体力的な問題は引き続きあるから、そこはしっかりと頑張る必要がある。そうして夕方まで過ごした後、夕食を食べて、レパと一緒にお風呂に入る。

 いつもは対面にいるのだけど、今日はレパが私を後ろから抱きしめる形になっていた。


「ねぇ、ヒナ」

「何?」

「ヒナが私の家に来ないのは、ヒナの前の世界での出来事が原因なの?」


 レパは、私がレパの家に厄介になろうとしない原因が、そこにあったのではと考えたらしい。まぁ、正解だ。


「うん。向こうでは、色々とお金が掛かるものだからさ。縁も何もない私を世話しろとは言えないよ」

「そっか……」


 レパはそう言うと、私をぎゅっと抱きしめる。私が絶対に遠慮するという事を理解したからなのかな。


「ねぇ、ヒナ。私ね。ヒナの事が好きだよ。友達としてじゃなくて、恋愛的な意味での好きだよ」


 レパが告白してくれた。その気持ちは、本当に嬉しい。私だって、レパの事は好きだ。あの地獄のような八年間の中で、レパが来てくれた事が、どれだけ私の救いになっていた事か。


「過ごした時間は三年近くとかだけど、ヒナがいてくれたから、私は頑張れたんだ。あの時ヒナと同じ場所に入れられて良かったって本当に思ってるの。今思えば、運命の出会いだったのかもって」


 レパも同じ気持ちだった。あの時レパに会えたのは、私も運命だと思っている。しかも、三年も一緒にいられたのはレパが初めてだったから。【生命維持】で栄養を補う事は出来ても、盗賊達の暴力で亡くなる子は多かった。


「ここでお別れになるのは、本当に寂しい。だからね。本当に手紙を頂戴ね」

「うん。分かった。後ね。私もレパが好きだよ」


 私も返事をすると、レパの尻尾が私の身体に巻き付いて来た。


「そっか……ありがとう」


 レパは私の頬にキスをした。それが嬉しくて私はレパに体重を預けた。向こうでは彼女なんて出来た事がないから、こういう経験もない。でも、その勉強は漫画でいっぱいしたから大丈夫なはず。

 お風呂から出た私達は、それぞれ歯磨きをしてからベッドに入る。そして、ちょっと夜更かしをした。

 夜も更けて部屋の中には月明かりが僅かに入り込むだけ。その中で、レパと向き合いながら、ベッドの中に入っている。戦闘訓練をしたからという以外の理由でちょっと疲れているけど、レパとくっついていた。


「痛くない? 大丈夫?」


 レパは、私の事を抱きしめながら訊く。薄着越しに感じるレパの体温が心地良い。


「うん。でも、明日は肩とかがちゃんと隠れる服にしないとかな。明日の朝には治ってると思うけど……」

「本当にごめんね……蜥蜴人族だと普通の事みたいなんだけど……」

「ううん。レパの事が知られて良かったよ」


 私がそう言うと、レパは嬉しそうにキスをしてきた。こっちも嬉しくなって、私からもキスを求めていく。しばらくキスをしていると、レパの方から少し離れた。


「そろそろ寝ないとだね。明日も戦闘訓練するんでしょ?」

「うん……尻尾良い?」

「うん。良いよ。あっ、そうだ。あまり他の子に夢中になりすぎないでよ? 私がヒナの初めてなんだからね?」


 何か凄い事を言っていると思ったけど、ハヤトさんの話を思い出して、こちらでは当たり前の事であるという事に気付いた。


「レパは良いの?」


 一応、確認しておかないといけない。すると、レパは微笑みながら、私の額にキスをする。


「うん。私を忘れないでくれるならね。ヒナはモテそうだし」

「当たり前だよ。モテるかは分からないけど」

「ありがとう。大好きだよ」


 レパは私にもう一度キスをすると背を向いた。機嫌を損ねたわけではなく、私の方に尻尾を向けてくれたのだ。レパの尻尾に抱きついて、そのまま眠りに就く。今日は、いつもよりも良く眠る事が出来た。

 ミナお姉さんのところに行けたという事もあるけど、レパと愛し合えるような関係になれたという事が大きいのかもしれない。安心感がいつも以上にあった気がする。

 ただ寝る直前に気付いた事もあった。これがミナお姉さんに見られているという事。次に行くときにどうなるのか、ちょっと心配になった。

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