打ち解け
スレイアを家に連れて帰った私達は、テキパキと行動していく。まずは、お風呂を沸かしつつ、スレイアの身体測定だ。何かと役に立つメジャーを買っておいて良かった。
「スレイア、服脱いで」
「うん……」
スレイアは寝間着のようなドレスを脱ぐ。その内側には、やっぱり下着を着けていなかった。ずっと寝ていたみたいだけど、肉付きは良い。奴隷をしていた時の私よりも良いから、長い睡眠の間は身体の状態が変わらないスキルらしい。後は胸が大きい。アリサよりも大きいのでアリサの下着も合わない。当然私も合わない。ここは仕方ない。エリナさんの策を待つ。
それぞれの大きさを調べて行くと、結構足が長い。私のズボンとかなら少し小さいくらいで入るかと思ったけど、そうでもなさそう。ゆったりするためにオーバーサイズで買ったワンピースなら入りそうかな。
「口を大きく開けて」
「あ~……」
口の中も全部が真っ白。見た感じ喉の奥も真っ白だ。これだと内臓も真っ白で、血管真っ白かな。血管っぽいものは浮き出ているけど、緑色になったりしていない。この分だと血液も白いのかも知れない。赤血球とかはどうなっているのだろうという疑問があるけど、それを調べる方法を私は持っていないので気にしないでおく。
「まぁ、私が分かる範囲だと問題はなさそうかな。体温は少し低めっぽいけど。取り敢えず、これを着ておいて」
「うん……」
取り敢えず、私のワンピースを着せてあげる。問題はここからだ。
「このドレスって……普通に洗って平気なのかな……」
洗濯表示がないので、ドレスを洗う方法が分からない。こういう時、本当に洗濯表示がないと困る。私の白き乙女の護り手と同じように『浄化』が掛かってくれていれば楽で良いのだけど。
「それ……ずっと綺麗だよ……」
「あ、そうなの? 『浄化』付きか。それなら洗わないで大丈夫だね。ハンガーに掛けて置いておこうか。これ一枚だけだと色々と困るし服も買うとして、歯ブラシと食器、コップ……あっ、寝袋とかも用意しておいた方が良っか。ベッド付きの家を生成するとMPを大きく消耗する事になるし。毛布とかも買っておくかな」
買う物リストをメモしていき、次の買い物に必要な金額を考えておく。大体二百万くらいあれば全部揃うかな。服もいっぱい買う事になるし、寝具もなるべく良いもので揃えておきたい。食器も複数種類必要だし、旅を考えると予備で二つ分くらい余計に買っておきたい。
「スレイアは、何か欲しいものある?」
「ううん……」
「そっか。何か欲しくなったら言ってね」
「うん……」
まだ目を覚ましたばかりだから、欲しいものと言われても特に思い付かない感じかな。ひとまずは普通の暮らしをしていく事で、欲しいものとかが見つかると良いな。
「さてと、それじゃあ、お風呂に入ろうか。アリサ、先に入っちゃうね」
「うん。ゆっくり温まって」
スレイアの背中を押してお風呂に連れて行き、一緒に入る。せっかくなので、スレイアの身体を洗ってあげる。スレイアは洗われ慣れているのか全然動揺した感じはなかった。
(そういえば、スレイアも貴族なんだよね。ドレスっぽい寝間着だし、スレイアもお姫様だったりして。年代的には、御伽噺になったかもしれないから本当に古いとは思うから、実際にその場所を見つけるのは難しそうだけど)
身体測定している時にも触っていたけど、結構張りのある肌だ。健康体で眠りに就いたのか、眠っている間に健康になったのか。多分前者なのかな。ミナお姉さんとしているように埋もれたいけど、まだスレイアとは出会ったばかりなので自重する。これが夢とかだったら、普通にやっているけれど。
「温まって大丈夫そう?」
「うん……」
「そっか。のぼせないようにね」
「うん……ヒナは……普通の人間なの……?」
アリサが人からドラゴンになって、ドラゴンから人になったっていう経緯を持っているから、私が普通の人なのかという事が気になったみたい。
「普通ではないけど人間だよ。あっ、もしかしたらスレイアの記憶に繋がるかもだから、私の自己紹介もしておこうか」
これから一緒に旅をするので、私の事情もしっかりと知ってもらった方が良いと思ったので、自分が転生者で【不死】や【色欲】持ちという事とここまでの出来事を軽く話しておいた。
「って感じ」
「転生……知らない……」
「そっか。転生者がどれくらいいるか分からないし仕方ないかな」
「じゃあ……ヒナは……いっぱい愛人がいるの……?」
「う~ん……まぁ、そうだね……」
【色欲】持ちの説明の時にそういう話もしたから、スレイアは気になったみたい。実際に口にするとあれだけど、実際にいるから肯定するしかない。
「そうなんだ……」
スレイアはジッと私を見てくる。見た感じ私がそういう人間には見えないとかそういう感じかな。見た目だけで言えば、そこまで遊んでいるようには見えないだろうから、そう思うのも分かる気がする。こっちの世界では成人手前って感じのはずだけど、スレイアの生きていた時代が何歳くらいで成人だったのかは分からないから、そういう点でも気になる点が生まれたりするのかも。
「さてと、そろそろ出ようか。のぼせちゃうから」
「うん……」
お風呂から出た私達身体を拭いて服を着る。スレイアは、さっきあげたワンピースだ。スレイアにはぴったりの大きさになっているから、今日明日はこれ系で良いかな。アリサが交代でお風呂に入っていると、エリナさんが帰ってきた。
「ただいま……って言ってもすぐに出るんだけど。スレイアちゃんの下着を持って来たよ」
「あれ? 下着屋が開いてたんですか?」
「ううん。無理言って私よりも少し上のサイズの下着を買わせて貰った。ギルドマスター特権だね」
「積み重ねてきた人徳って事ですね。取り敢えず、正式にサイズを測って買うまでは使わせてもらおう。いくらしました?」
「プレゼント。スレイアちゃんも成長するかもしれないし。貰っておいて」
「そうですか……分かりました。いただきます」
これを貰わないと逆にエリナさんも困る事になるので、インベントリに入れておく事にした。スレイアに試着して貰ったら、一応買ってきた一番下のサイズで丁度良かった。なので、上のサイズは成長した時用になった。
「ひとまずこれで二日くらいは大丈夫かな。それじゃあ、開店出来るくらいになったら知らせるから。三人はゆっくりしてて。猛吹雪を止めたって事で、街の人達は感謝してるから、これ以上働かせると何かと仕事を奪われる事になると思うから」
「最初から大人しく休んでおくのが良いって事ですね」
「そういう事。騎士団の人が事情聴取に来るかもだけど、スレイアちゃんは人前に出られる服がないって事で済ませて良いから。ちゃんと服を買ってから協力する感じで。食料については心配しないで。事前に分かれた騎士団の一部の人がウォンバットから輸送してくれる事になってるから。早ければ、明日には届くって。日持ちするものが多くなるみたいだから、美味しさはあまり期待しないでね」
「まぁ、私は【アイテムボックス】があるので」
「そっか。取り敢えず、そういう事だから。私はしばらく缶詰になるから何かあったらギルドに来て。それじゃあね」
エリナさんはそう言って家を飛び出していった。
(この世界って缶詰あったっけ……転移者とかが慣用句とか色々輸入させているから、割とこういうところあるんだよね……人が使ってる言葉って、割と真似したくなる事もあるし、ミーム的なものなんだろうなぁ)
そんな事を思いながら、エリナさんが買ってきてくれた下着を確認してインベントリに仕舞っていく。
「今着られる下着はこれくらいかな。確かに二、三日なら大丈夫そう。割と可愛いのもあるね」
「ヒナのも可愛い……」
「あははは……ありがとう……」
そもそも支えるものも小さいから装飾も何もないスポーツ系のものなのだけど。実用性は高いし、こっちでも着心地が良いから気に入ってはいるのだけど、可愛いと言われるとどうなのだろうと思ってしまう。
私はどうでも良いとして、本格的な買い物が出来るようになったら、スレイアに似合う服をしっかりと選んであげよう。それまではゆっくりと休む。




