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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界転生

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戦闘訓練

 翌日は、また言語の勉強をして一日を終える。おかげで、大分読めるようになってきた。因みにミナお姉さんの下には行けなかった。

 そして、その翌日である今日もミナお姉さんの下には行けなかった。まぁ、確率は低いと知っていたから、まだ落ち込む段階じゃない。

 そんな今日は、メイリアさんにお願いして、騎士の訓練場に来ていた。レパは、リタ達と外を走っている。私と同じように運動をしようとした結果、走り込みに行き着いたらしい。私程戦闘に慣れているわけじゃないからだ。

 読み書きの勉強も大事だけど、戦闘に関してもしっかりと鍛えておかないといけない。だから、身体を動かせる場所がないか訊いて、ここに案内して貰ったのだ。

 訓練場は割と広く、木のような人形が立っている。人形は全部剣を持っていた。


「あそこにある練習人形を使うのよ」

「どうやって使うんですか?」

「触ったらMPを1消費して起動するのよ。そこからは壊れるまで動くから本気でやって良いわ。壊れたら勝手に元に戻るから」

「そんなものがあるんですね」

「まぁ、大分苦労して開発したみたいよ。騎士団しか所有していないけれど。私は、そこで見ているから自由に使って」

「はい。ありがとうございます」


 言われた通り人形に触れると、目が光る。背の高さは、私よりも遙かに上。一般的な大人と同じくらいだから、三十センチから四十センチくらいの差がある。人形は片手剣を構えた。私も距離を取って雷鎚トールを腕輪から元に戻す。

 向こうが私に向かってくる前に、私から突っ込む。私の接近に合わせて、片手剣を振り下ろしてくるので、私もそれに合わせて弾く。人形と片手剣は一体化しているようで、片手剣を弾き飛ばす事は出来なかった。でも、腕は千切れて飛んで行く。

 振り切った態勢の私に向かって、人形は、蹴りを放ってくる。それを横にステップを踏んで避けて、腹の側部に雷鎚トールを叩き込む。人形は大きく吹っ飛んでいき、地面を転がっていった。

 そこに急接近して真上から雷鎚トールを叩き付ける。すると、人形の身体が粉々に砕け散った。見事に粉々になっており、普通には直せそうにない。


「…………メ、メイリアさん……本当に大丈夫なんですよね?」

「ええ。見ていて」


 砕けた人形から離れて見守っていると、砕けた人形の破片が集まっていき、段々と元の姿に戻っていって、直立不動の状態になった。


「えぇ……どうなってるの?」


 魔法がある時点であり得ないとか言っても無駄だとは思うけど、あり得ないと言いたくなるような光景だった。


「形状記憶素材を作り出して、破損が確認されたら元に戻るようになっているのよ。正直、作り方は分からないのだけどね」


 細かい原理までは、メイリアさんも知らないみたいだ。機密とかになっているのかな。こんなものならそのくらいになっていてもおかしくはない。


「まぁ、こんな感じで直るから、何回でも戦えるけど……今のを見た感じ、人形じゃ足りなさそうね」

「物足りなくはありますけど、人形以外に何かあるんですか?」

「私よ」


 メイリアさんはウィンクしながらそう言った。対人戦は、修行としても一番良いけど、問題が大きい。


「えっと……見ての通り、私はアーティファクトを使っているので、色々と危険だと思うんですが……」

「さすがにアーティファクトをそのまま使われるのは厳しいから、ちゃんと木剣でやるわ。一応、木のハンマーもあった気がするから、ちょっと待っていて」


 そう言って、メイリアさんは用具室みたいな場所に入っていった。一分程すると、木剣と木のハンマーを持って戻ってくる。


「はい」

「ありがとうございます」


 木のハンマーは古いように見えるけど、結構しっかりとしている。何度か素振りをしていて、気付いた事があった。


「あれ? ステータスが変わってない?」


 身体の動きから、ステータスが低下しているような感覚がなかった。


「腕輪になっていてもアーティファクトは装備している状態が続くからステータスの上昇は切れないわよ。だから、複数付けるとその分ステータスが重なるのよ」

「ああ、なるほど。外した方が良いですよね?」

「そのままで良いわよ。ステータスは上がっているだろうけど、アーティファクトそのものを使われなければどうにかなるわ。それにその状態で戦い続けるのだから、外したら意味がないでしょう?」


 メイリアさんは木剣を振りながらそう言う。本当に問題ないのか心配だけど、言っている事は間違っていない。


「じゃあ、いきますよ」

「ええ。掛かってきなさい」


 思いっきり踏み切って、メイリアさんに突っ込み、木のハンマーを振う。横振りの一撃をメイリアさんは、側面に木剣を当てるようにして上方向に受け流した。

 そこで姿勢を崩すことなく、即座に回転してもう一度振う。その一撃も簡単に受け流された。さらに、そこで生まれた隙を突かれて、脇腹にメイリアさんの蹴りが命中した。

 私の身体を持ち上げるような動きで吹っ飛ばしてくる。打ち込まれたわけじゃないから、全く痛みはない。地に足を着けて勢いを殺したところにメイリアさんが接近してきた。メイリアさんは、剣を素早く振り、短いスパンでの攻撃を繰り返してくる。

 私は木のハンマーの柄を短く持って、最小限の動きで攻撃を受け流していく。恐らくこれらはジャブ程度のもの。牽制を繰り返して、私がどの程度防御出来るのか確かめている。そんな気にさせられる。

 だから、無理矢理前に出て、メイリアさんに肩から突っ込んだ。

 でも、それすらメイリアさんに読まれていたようで、すかさず半身を引かれてメイリアさんの前に無防備な姿を曝け出す事になった。メイリアさんは、そのまま木剣を振い、私の首にピタリと当てて止まった。

 本当にただ触れるだけだったので、少し驚いてしまう。


「えっと……殴らないんですか?」

「え? いや、この状況で殴る訳ないでしょう? そもそも本気で打ち込んだら、ヒナちゃんの骨を折っちゃいそうだもの。しばらくは攻撃を当てても打ち身にならないような形にするわ」

「……あっ」


 自分で言って気付いたけど、殴られるのが当たり前の環境に長くいたせいで、ああいうものを振われて殴られない方が違和感を覚えてしまうようになっていたらしい。

 どちらかと言えば、メイリアさんの考え方ややり方の方が普通なのだ。

 その事にメイリアさんも気付いたのか、少し悲痛そうな表情になる。そこまで気にしないでも良いのだけど、子供がそんな環境にいたと知れば同情してしまうのは、私も同じだ。


「すみません。変な事言っちゃって」

「良いのよ。でも、その意識は変えるようにしなさい」

「はい。普通は殴られるのは当たり前じゃないですもんね。それじゃあ、もう一回お願いします」

「ええ。ヒナちゃんは、手加減しようとかは考えずに来なさい」


 一度距離を取ってから、再び私から仕掛ける。今度は振りからいくのではなく、木のハンマーで突く。ハンマーで突きをしてくると思わなかったのか、メイリアさんは一瞬目を大きく開いた後、口角が上がった。そして、メイリアさんも木剣での突きで合わせてきた。

 筋力の差で言えば、向こうの方が上のようでビクともしなかった。技術でも負けているけど、純粋なステータスも全部負けているらしい。こればかりはレベルの差が大きいのだと思う。騎士団で働いているメイリアさんとこれまでずっと捕まっていた私とではレベルの差は歴然としているだろうから。例え、奴隷生活でスキルが育っていてもね。

 木のハンマーを引き戻して、メイリアさんの懐に入り込む。平均よりも劣る身長を活かして、メイリアさんを翻弄する作戦だ。

 でも、それは素早いメイリアさんのデコピンで防がれた。

 その後は、走り回ってメイリアさんの隙を探りながらヒットアンドアウェイを繰り返していった。メイリアさんは基本的に受けに回ってくれていたけど、時折こっちを追ってきたりして、本当に危なかった。

 最終的に私の体力切れで幕を閉じる。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

「体力作りが急務ね」

「そうですね……それにしても……この木……頑丈すぎません?」


 何度も打ち合っているのに、木剣も木のハンマーも壊れる感じがしなかった。異常なまでに頑丈だ。


「まぁ、頑丈だけが売りの木を素材にしているから。もう少しやる? それとも今は走り込みで体力を作る?」

「ふぅ……いえ、戦闘をお願いします」

「ええ。じゃあ、掛かってきなさい」

「はい!」


 昼ご飯を挟んで、夕方になるまでメイリアさんに相手を頼んだ。おかげで、大分動きが磨かれていった気がする。ただし、体力の問題で休んでいる時間も長かった。


「はぁ……はぁ……」

「じゃあ、今日はこれまで。もう少し速い相手への対策が出来ると良いわね」

「はい……ありがとうございます……」


 確かに盗賊達は、メイリアさんよりも遅かった。だから、メイリアさんの動きに付いていくのがやっとだったという部分が結構ある。

 メイリアさんが基本的にあまり動かなかったという事もあり、圧倒され続けるという事はなかったけどね。その分動いた時の恐ろしさが際立っていた。


「どういたしまして。それにしても、ずっとハンマーを使うの? アーティファクトは、その状態でも効果があるから、普通に剣を使っても良いと思うわよ」

「う~ん……いえ、何故かこっちの方がしっくりくるんですよね」


 私は雷鎚トールを取りだして柄を握る。やっぱりしっくりとくる。これまでゲームでは剣とかばかり使っていたから、何故しっくりくるのかは分からない。


「一応選ばれているのだから、しっくりくるのも当たり前よね。元々鈍器に向いているのかもしれないわね」

「やっぱり選ばれるって、そういう事なんですか?」

「アーティファクトの気持ちは分からないから、はっきりとは言えないけれどね」


 メイリアさんは、少し遠い目をするような表情でそう言った。何か思い出でもあるのかな。特に気になりはしないので、深入りはしないでおく。


「なるほど……じゃあ、私は鈍器最強でいきます!」

「物騒ねぇ……」


 メイリアさんは、苦笑いしながらそう言っていた。鈍器という時点で物騒な感じが強くなるのかもしれない。でも、雷鎚トールを振り抜いた時の感覚は好きなので、これを主体でいく事はやめない。

 メイリアさんと訓練場で別れて、汗だくの状態で部屋に戻って来たら、レパにお風呂に引っ張り込まれた。滅茶苦茶汗を掻いていたので、レパから念入りに洗われることになった。そうして、お風呂から出る頃には、汗の臭いは消え去り、良い匂いに戻った。

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