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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
森の中の街

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雪降るレオパルド

 それから五日が経過した。その間にミナお姉さんの世界に行くことが出来たので、精神的に大分すっきりした。肉体的すっきりが伴わないから、普段も合わせて精神のすっきり度だけが大幅に先行している感じになっている。まぁ、肉体的な方に関してはこれ以上やるとすっきりを超えて疲れるから、アリサには何も言っていない。

 その間に一回討伐依頼を受けて二日掛けてファングパンサーを一体狩った。冬になっても活動はしているみたいだけど、生息域は少し縮小するみたい。皆で押しくらまんじゅうでもしているのかもしれない。その方が暖かいし。

 その分狩りに出ているファングパンサーが少ないので遭遇率が少しだけ落ちている気がする。エリナさんも多少の差は生じるって言っていたので、こればかりは仕方のない事だった。

 それと打ち出の小槌の検証もしておいた。作れる物の最大値と複雑さの限界を確認したけど、MPを全て消費する勢いならかなり複雑なものまで作れる事が分かった。テントに頼らなくても、自分達で作り出す事が出来そうなのでテントの新調などは積極的にしなくても良くなった。調査依頼とかで使うから、そこでだけ必要ってだけだ。

 そんな風に過ごしていると、朝起きた時に今日は一段と寒い事に気付いた。歯磨きと洗顔を終えてミナお姉さんへの祈りを捧げた後にカーテンを開けて外を見てみる。すると、パラパラと雪が降っていた。そして、地面には薄らと雪が積もっている。


「おぉ……道理で寒い訳だ」

「どうしたの……?」


 カーテンを開いた事で明かりが顔に当たり、アリサが起きてくる。


「雪だよ。今日は依頼無しかな」

「分かった……」


 アリサはそう言いながら洗面所に向かっていく。朝起きたら洗顔と歯磨きが習慣になっているからだ。家の中という事もあり、アリサはほぼほぼ裸の状態だ。ギリギリパンツを履いているくらい。


「アリサ、寒くない?」

「ん? うん。特には」


 リビングで暖房は入れているので、寝室にも暖かい空気は流れ込んでいる。そのおかげなのかアリサはそこまで寒くないみたい。私はいつもよりも寒く感じるけど。


「少しだけ暖房を上げておいて。朝ご飯作っちゃうか」


 朝ご飯としてサンドウィッチを用意しながら、夜ご飯を何にするのか考える。


(取り敢えず、身体を温められるようなご飯が良いだろうから、鍋とかおでんが頭を過ぎるけど……この辺りは、鰹節はあっても昆布がないから、出汁の時点で困るんだよね。ネットがあればレシピを調べて他の出汁とかを見つけられるんだけどなぁ……いっそ豚骨鍋……豚骨か……ラーメン食べたいなぁ……小麦粉で麺を……って、あれって何か特別なやつが必要だったっけ。ネットが欲しい……)


 何にしてもレシピを検索出来るネットが欲しくなる。こっちの世界だとラーメンはあまり流行っていないみたいだし。転移者や転生者がいるのなら、ラーメンくらい流行らせてくれれば良いのにと思ってしまうけど、結局私と同じように麺の作り方で挫折する気もするので仕方ないのかな。私も何とか色々と捻出しているけど、大分限界も近い。


「レシピを買うかな」

「何の?」


 最低限の服を着たアリサが戻って来て、後ろから抱きついてくる。それは良いのだけど、服の下に手を入れてお腹を擦ってくるのはやめてほしい。


「料理」

「ヒナは色々と作っている方だと思うけど?」

「そこそこ知ってはいるけどさ、結構レパートリーが同じになってきてもいるから、参考程度にでもなれば良い感じ」

「そっか。私はヒナの料理だったら、何でも好きだけどなぁ」

「ありがとう。ほら、朝ご飯出来たから食べよ」

「うん」


 朝ご飯を並べると、アリサがキスをしてから席に着く。朝ご飯を二人で食べて、アリサが洗い物をしている間に消耗品の確認とかをしておく。雪が酷くなるようなら、先に買っておいた方が良いものとかがあるかもしれないから。


「洗剤がないか。買うついでに本屋に寄るかな。アリサ、私買い物に行って来るけど、アリサは何か欲しいものとかある?」

「ううん」

「分かった。じゃあ、行ってくるね」

「うん。気を付けて」

「うん。あまり酷くなるようだったら、どこかしらで弱くなるのを待つから、遅くなったらそうしてると思って」

「うん」


 コートを着た私は消耗品を買いに向かった。まだ雪はそこまで降っていないし、手早く済ませれば大丈夫なはず。一番洗剤が安い雑貨屋さんに入って、必要なものを揃えていく。


(調査依頼でテントを使う事を考えたら、多めの方が良いかな。まぁ、どうせインベントリに入れておくから劣化はないし、沢山買っておくかな)


 まだ少し余裕があるものも一緒に購入しておく事にした。インベントリに入れておけば劣化しないという点が、こういうときのまとめ買いへの抵抗感を減らしている。加えてお金に余裕がある事も大きいかな。

 購入してインベントリに仕舞う。そして、真っ直ぐ家に帰るのではなく、本屋でレシピを探していく。


「野菜中心の料理か……まぁ、健康には良さそうだから買っておくかな。ドレッシグ系の作り方が分かるとサラダとかもバリエーションが増えるんだけど……」


 そんな風にレシピ漁りに夢中になっていたら、大分時間が経っていそうだったので、気になったレシピ本を購入する。実際に作れないものでも、何かしらに繋げる事は出来るかもしれないので、購入はしておく。

 そうして外に出たら、割と吹雪いていた。


「おぅ……夢中になりすぎた。ちゃんと帰れるかな」

「ヒナちゃん?」


 名前を呼ばれてそっちを見ると、エリナさんの姿があった。私をちゃん付けで呼んでいる事から、既に非番なのだと分かる。休日か何かかな。


「こんにちは。エリナさんも買い物ですか?」

「いや、ギルドを早めに閉めてきたの。この雪の中で依頼を受けられても困るから。ヒナちゃんはお買い物って事ね。家は近い……訳ないか。これからもっと吹雪くから、こっちに来て」


 エリナさんに手を引かれていった先は、エリナさんの家だった。本当にすぐそこだったけど、それまでにもっと吹雪が強くなっていたので、あのまま帰宅しようとしたら吹雪に埋もれていたかもしれない。


「ありがとうございます」

「どういたしまして。こんな吹雪くまで何を見ていたの?」

「洗剤を買いに来たんですけど、ついでに料理のレシピを買おうかなって。選んでいてラ時間が経ちすぎて」

「なるほどね。取り敢えず、弱くなるまでは家に居て良いから」

「はい」


 リビングのソファで座っていると、服を着替えたエリナさんが来る。暖房を付けているからかかなり薄着だった。


「全くこんな時にのんびりと選んでたら駄目でしょ」

「ごめんなさい」

「そこら辺で凍える前で良かった。それでも手は冷え切ってるし……そうだ」


 何を思い付いたのだろうかと思っていると、エリナさんが私の後ろに入って後ろから抱きしめて来た。


「取り敢えず、温まるようにね」

「あはは……」


 こうして密着すると、エリナさんも意外とある。そうしてエリナさんに密着されながら暖房の効いた部屋にいる事で、身体はじんわりと温かくなっていった。エリナさん自身に変な気持ちがないからか、すぐに発展するという事はなかった。

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