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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界転生

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13/152

身体測定と勉強

 翌日。窓から差し込む陽光で目を覚ますと、困った表情をしているレパが目に付いた。レパが困っている理由は明白だった。私がレパの尻尾を抱き枕にしているからだ。


「あっ、ヒナ起きた?」

「ん~……」


 レパの尻尾を放すと、レパはすぐにトイレに駆け込んだ。うん。困った顔をするわけだ。レパには申し訳ない事をしちゃった。


(今日からは、自分のベッドで寝られるようにしないとかな……)


 そんな事を思いながら、身体を起こした私は床に跪いて、祈りを捧げる。でも、今日はミナお姉さんの元には行けなかった。


(今日のガチャは、外れか)


 残念に思いながら洗面所に移動して、歯磨きと洗顔をしていく。そうしていると、一昨日までの生活が嘘のように思えてくる。


(ルーティンみたいに出来ているのは、記憶が戻って向こうでのルーティンを思い出したばかりだからかな……)


 洗面所でレパと交代して、ベッドの前まで戻ってきた私は軽く体操をして身体を動かす。朝はメイリアさんが来るのを待たないといけない。宿舎で勝手に動くと問題が起こりそうだし。なので、それまでは暇になる。

 ここでだらだらしても良いけど、冒険者になる事を決めたのだから、しっかりと身体を動かして、次のレベルアップに備えて起きたい。何がどのくらい関係してくるか分からないし。


「何してるの?」


 洗面所から戻ってきたレパが体操をしている私を見て、戸惑っていた。


「体操」

「そ、そう……何で?」

「身体を動かしたいから」

「あ、なるほどね」


 レパが納得したのと同時に、部屋の扉がノックされる。レパの方が扉に近かったので、レパが出てくれた。すると、メイリアさんと一緒にリタとキティが入って来た。


「リタ、キティ、どうしたの?」

「これから身体測定だって。私達四人からやるみたいだから、迎えに来たのよ」


 私の疑問にリタが答えてくれた。そういえば、昨日メイリアさんが、身体測定をして服とかのサイズを確認するとか言っていた気がする。


「二人も準備出来ているわね。それじゃあ、これを履いて付いてきて」


 そう言ってメイリアさんがスリッパを置いてくれる。子供用のスリッパなので、私の足に丁度良かった。子供用のスリッパが丁度良いって十五歳でどうなのだろうか。

 そうして連れて行かれた場所は、保健室のような場所だった。学校の保健室よりは大きい感じだ。


「は~い。皆服を脱いでねぇ」


 保健室の先生がテキパキと身体測定をしてくれる。やっぱり年齢のわりに、あまり成長してなかった。先生も平均身長よりもかなり小さいって言っていた。


「問診は昨日やったから、これで良し。しばらくは栄養バランスの良い食事を心掛けてねぇ。四人ともだけど、特にヒナちゃんは、適度な運動もね」

「はい」


 成長が遅れている事もあり、しっかりと健康になるように助言をくれる。私もやろうと思っていたから素直に頷く。


「それじゃあ、先に靴だけ選びに行くわよ。外に出るとき困るから」


 メイリアさんに案内されたのは、昨日ハヤトさんと話した会議室っぽい場所だった。そこに色々な靴が並べられている。いつの間に用意したのだろうか。サンダルからブーツまで取り揃えてある。

 取り敢えず、一通り履いてみる。


「ブーツは、ちょっと動きにくいかな」

「冒険者ならブーツが良いわよ」


 ブーツを履いて歩いているとメイリアさんが助言してくれた。


「そうなんですか?」

「ええ。色々な地面の場所に行く事になるから、ブーツの方が安全なのよ。防水防汚のものだと尚良いわ。防御する範囲も広くなるから、そういう意味でも安全ね」

「なるほど」


 道なき道とかも走ったりするから、脛とか脹脛とかも守れる状態にした方が良いという事みたい。このブーツの革も割と分厚いけど、足首の自由はある程度ある。まだ慣れないから動きにくいだけで、慣れればちゃんと動けるようになるかもしれない。ちょっとだけ底が厚いというのも慣れれば気にならないだろうし。


「じゃあ、ブーツにしようかな」


 レパ達もそれぞれ普通の靴を選んでいた。そっちの方が動きやすいし、レパ達は態々ブーツを選ぶ理由もないので、当たり前かな。


「ヒナはブーツにしたんだ? 大人だね」


 キティがキラキラした目で見てくる。同い年のキティからすると、ちょっと憧れ的なものがあるのだと思う。私も小さい頃は、大人の靴とかに憧れていたし、気持ちは分かる。


「ちょっと動きにくいけどね。キティは可愛い靴だね」

「うん! 可愛いのがあったから、これにしたの」

「似合ってるね」

「えへへ」


 可愛く笑うので、思わずキティの頭を撫でてしまう。嫌がられるかと思ったけど、キティは嬉しそうに目を細めている。ちょっと猫っぽい表情だった。


「それじゃあ、次は朝ご飯ね。食堂に行くから付いてきて」


 私達はメイリアさんに案内されて、宿舎の食堂に移動する。普通に向こうでも食べるような普通の朝食を食べていく。さすがに量は少なめだけど。


「ヒナ、口」


 レパがそう言って、私の口を布ナプキンで拭ってくる。前と身体が変わったからなのか、ちょっとだけ上手くご飯が食べられていないみたい。八年間もまともな食事を摂れていなかったというのも原因になるのかな。


「ありがとう」


 記憶が蘇って向こうの身体での感覚も思い出したという事もあって、そこら辺のズレが生じている感じかな。ちゃんと戻せるように頑張らないと。

 なるべく汚さないように丁寧に食べていき、朝食を食べ終えるとメイリアさんが話し始める。


「後は自由時間だけれど、街に行く場合は声を掛けてね。皆は、今護衛対象になっていて、騎士を連れないと街に降りられないから」

「私もですか?」


 手を上げて質問する。皆が護衛対象になっているのは、親御さんの迎えを待つため。それがない私は、その対象に含まれないのではと考えた。


「ヒナちゃんもしばらくは護衛対象よ。盗賊が全滅しているかどうかも分からないから」

「なるほど」


 一応安全確認が最大限出来るまでは保護した状態にしておくみたい。それまでは冒険者になれないと考えておいた方が良いかな。


「じゃあ、本が読みたいんですが、そういう場所に案内して貰う事って出来ますか?」


 文字の勉強をしたいから、図書館的な場所に行きたいと思いそう訊いた。この世界に図書館があるとは限らないから、ちょっとだけ遠回しな訊き方だけど、メイリアさんにはしっかりと伝わった。


「それなら、宿舎内にある図書室に行くと良いわ。基本的に誰もいないから静かに読めるわよ。他の皆はどうする?」

「私は部屋に戻っています」

「わ、私も」

「私はヒナと一緒に行きます」

「分かったわ。それじゃあ、二人は付いてきて。リタちゃんとキティちゃんは、二人で部屋に戻れる?」

「はい」

「は、はい!」


 リタとキティは先に自分達の部屋に戻っていった。仲良く手を繋いで行っているのを微笑ましく見送ってから、メイリアさんに案内されて図書室に来た。


「ここが図書室ね。基本的に自由に読んで大丈夫だから。私は仕事があるから行くけれど、自分達で部屋に戻れるかしら?」

「はい」

「分かったわ。時間が出来たら、様子を見に来るから。それじゃあね」


 メイリアさんはそう言って、図書室を出て行った。騎士団としての仕事が残っているみたい。私達が外に出ると言っていたら、メイリアさんは残業確定だったのかな。今からやろうとしている仕事は出来ないだろうし。


「レパも何か読みたい本があるの?」

「ううん。ヒナが読めないかなって」

「よくお分かりで……じゃあ、教えてね」

「うん」


 レパがいてくれるおかげで、本を読みながら言語を勉強する事が出来た。文字はアルファベットと同じ二十六文字。基本的には英語みたいな文法だから、割と読みやすい。日本語的な文法だと、もっと読みやすかったのだけど、こればかりは仕方ない。

 レパに教えてもらいながら単語を覚えていく。英単語を覚えるよりもすんなりと頭に入ってくるのは、この世界の人間として生まれたからなのかな。何にせよ、有り難い事だった。お昼にメイリアさんが様子を見に来るまでの間、私達はずっと勉強を続けていった。

 その後、お昼ご飯を挟んで、夕方まで勉強を続ける。またメイリアさんが迎えに来てくれて、夜ご飯を食べた後、部屋に戻った私達は、お風呂に入って服を着替える。

 その頃に、メイリアさんが部屋に来て、私達の身長などに合わせた服を持ってきてくれた。ワンピースやシャツ、スカート、パンツもある。しかも、レパのために蜥蜴人族用の服まで用意されていた。


「こんなに揃えて貰って良いんですか?」


 さすがに至れり尽くせり過ぎるのではと思ってしまったので確認してみる。


「ええ。服がないと困るでしょう? いつまでも寝間着のまま移動する訳にもいかないから」

「なるほど……じゃあ、有り難く頂きます」

「ええ、そうしてくれると嬉しいわ」


 メイリアさんは私の頭を撫でてから、部屋を出て行った。

 ここで着替える必要はないので、タンスに仕舞っておく。


「ふぁ~……」


 タンスに仕舞っていたら、急に眠気が襲ってきた。久しぶりに頭を使ったから、頭が疲れたのかな。


「ヒナ、眠い?」

「うん……」

「じゃあ、寝ようか。昨日と同じように寝る?」

「うん……寝る……」


 レパと同じベッドに入って、レパの尻尾を抱き枕にして眠る。おかげで、昨日と違って、最初からすんなりと寝入る事が出来た。

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