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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
嫌な思い出
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ハヤトの確認

 翌日。昨日は、ミナお姉さんのところに行けたというだけではなく、ミモザさんとも再会出来た良い日だった。そして、今日はミモザさんの部屋に行くついでにハヤトさんに会いに行く。アリサはお留守番なので、一人で宿まで来た。すると、丁度ミモザさんがエントランスに降りてくるところだった。そこにはジェーンとユーリさんもいる。


「ヒナちゃん」


 ミモザさんは私を見つけて抱きしめる。


「本当にいるのかよ。どこにでもいるな」

「偶然ですよ。それより今日はギルドと騎士団から話を聞きに行きます。急いで下さい」

「へぇへぇ」


 ユーリさんがジェーンを引き連れて行く。そこにハヤトさんもやって来た。


「ん? ヒナか。元気そうだな。情報助かった」

「いえ、ハヤトさんも元気そうで良かったです」

「このまま話したいところだが、これからギルドや騎士団と話があってな。ミモザと待っていてくれ」

「分かりました」


 ハヤトさんはジェーンとユーリさんを追って行ってしまった。直後に、外から歓声のようなものが聞こえる。


「ハヤトさんは、どこでも大変そうですね」

「勇者様というだけで、市民からすれば希望の象徴ですから」

「同時に絶望の象徴でもあるのでは?」

「その通りです。魔王が復活するという事の証明でもありますから。取り敢えず、部屋に行きましょうか」

「はい」


 ミモザさんに付いていって、ミモザさんが泊まっている部屋に入る。そして、ミモザさんのベッドに隣同士で座る。


「やっぱり、魔王の復活を知った人による犯行なんでしょうか?」

「そうですね。私達もそれを疑っています。なので、ユーリも洗脳による煽動を考えています。証拠がないのが痛いところなのですが」

「ミモザさんもそう考えていますか?」

「はい。それが一番説得力がありますから。人間が追い出したと考えると、このような事がもっと昔から続いていないとおかしくなります。冒険者の活動とはそういうものですから」


 確かにミモザさんの言うとおりだ。ミモザさんも同じように考えている事から、ハヤトさんも同じように洗脳の線を疑っていると考えられる。


「でも、色々な場所で起こっているって事は、洗脳している人達が多いって事になりませんか?」

「そうですね。僅かに時系列がズレていそうですが、複数の場所でほぼ同時に起こっているところもあります。複数犯である事は確実だと、私達は考えています」

「魔王の信奉者も迷惑な人達ですね」

「そうですね。魔王の信奉者が動き出す事は予想出来ましたが、このような形とは思いませんでした」

「でも、魔王の信奉者なら……って、その証拠もないから駄目なんですね」

「はい」


 魔王の信奉者という情報があれば、洗脳という情報を信憑性が増すと思ったけど、そもそも魔王の信奉者だという証拠すらもないから困っているという事だった。その辺りの証拠を集めるためにもハヤトさん達が行動しているという感じなのだと思う。


「仮に魔王の信奉者とか、今回のような事件の首謀者と遭遇した場合、相手を殺しても大丈夫ですか?」


 ミモザさん達からすれば、情報を引き摺り出したいような相手でも、私達が殺さずに拘束する事が出来るとは限らない。そういう状況になった時に殺してしまっても大丈夫かは念のため確認しておきたかった。

 私達が死ぬ事はないけど、それでも拘束し続ける事が可能とは言い切れない。


「大丈夫です。基本的には命を優先して下さい。出来れば、相手が持つ資料などを回収して頂ければ幸いです」

「分かりました」


 これで戦いやすくなる。殺しちゃいけないという制限は、それだけでパフォーマンスを落とす事に繋がり兼ねないから。


「話し合いはすぐには終わらないでしょう。情報を詳しく聞く必要がありますので」


 ミモザさんはそう言いながら、私の腰に手を回して引き寄せる。その行動に抵抗はせずにミモザさんに身体を預ける。すると、ミモザさんが私のお腹を撫で始めた。


「前よりも肉付きが良くなっています。それは本当ですよ」


 昨日確認したから知っているはずだけど、改めて私に伝えてきた。それも耳元で。


「健康的な身体作りを心掛けるように。そうすれば、自然と身長なども伸びていきます」


 そう言ってからミモザさんは私の顎を上げさせてキスをした。ハヤトさんが戻ってくるまでに終わるかな。ここら辺は、ミモザさん次第と言いたいところだけど、私次第でもあった。


────────────────────


 ミモザさんとお風呂に入って身体を洗い流した後、部屋の扉がノックされた。既に服も着替えており髪も乾かしてあるので、ミモザさんが出る。


「ヒナはまだいるか?」

「はい。どうぞ中に」


 そう言ってミモザさんがハヤトさんを招き入れる。他の場所に移動するという手もあるけど、話す内容が外部に漏れて良いものとは限らない。だから、こうした部屋の中の方が話しやすいとミモザさんも考えたみたい。

 テーブルに着いて会話を始める。ミモザさんは私の隣に座った。


「魔王に関する情報だが、ヒナは何も聞いていないな?」

「はい。どこからも魔王に関するものはないです。ギルド職員のリルカさんと話した時に今回のミノタウロスの一件が魔王関連なのではと話したくらいです」

「そうか。情報が手に入らないというのは本当に厄介だな」

「ハヤトさんも魔王に関する事は分からないんですか?」

「ああ。情報を集めるために街での聞き込みは毎回している。聞き込みどころではなくなる事がほとんどだが、時間を掛ければ落ち着く」


 さすがに何日も街にいれば住人達の熱狂も落ち着くらしい。ヌートリアでもそんな感じだった気がする。


「勇者なのに魔王の情報が手に入らないのは困りますよね?」

「ああ。本当にその通りだ」


 私とハヤトさんは互いに苦笑いしていた。これがゲームなら都合良く情報が手に入っていくのだろうけど、現実は甘くないという事を突きつけられているからだった。


「聖剣が教えてくれるとかはないんですか?」

「そんな便利機能があるのなら、是非出して欲しいって感じだ。封印もまだ解けていないしな。ヒナの方はどうだ?」

「私も同じようなものです。ミョルニルになったから、ある程度本来のステータス上昇効果が出ていますけど、第二封印が解けたような感じはしません。これが第二封印解除の状態だったら話は別ですけど」

「そうか。何かしらの試練が必要と踏んでいるが」

「それが魔王関連という事ですか?」

「可能性は高いだろう?」

「確かに。イベントでもあれば良いんですけどね」

「本当にな。俺的には、今回のこの騒動がそれに当たると考えている。仮に魔王に関連する何かだとすれば勇者である以上、引き寄せられても良いんじゃないかとも考えているな」

「確かに。実際どうなんですか?」


 この世界の住人であるミモザさんに確認する。厳密に言えば、私もこの世界の住人なのだけど、そういう知識面はかなり劣っている。


「確かに勇者様はそういったトラブルを解決する運命にあるという俗説はありますが……」

「いけますよ!」

「そうだな!」


 ゲーム知識だけで私達はいけると判断した。その理由は、この世界のシステムがゲームチックである事が大きい。

 互いに聞きたい事も聞けたので、ハヤトさんとはこれでお開きになった。ハヤトさん自身も情報を集めに行きたいからだと思う。私はミモザさんと第二回戦だ。アリサのせい……おかげと言った方が良いのかな。取り敢えず、アリサと何度もしている事もあり、私の方は余裕だった。余裕だったのは、二回戦が始まるまでで始まった後は何も余裕はなかったけど。

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