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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
嫌な思い出

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事態収束

 鉱山から離れていた私達はギルド職員の人に呼び止められた。その職員さんは、まさかの女性だった。ギルド職員の制服を着ていなかったら分からなかったと思う。


「こちらにどうぞ。中で倒したモンスターは……」

「はい。【アイテムボックス】に」


 インベントリとは言えないから、【アイテムボックス】と偽る。

 私がミノタウロス達を持っていないから女性職員さんも納得した顔をしていた。


「では、こちらで出してください。内部にいるモンスターの種類を確定させたいので」

「分かりました」


 女性職員さんに付いていって、ミノタウロスを次々に出していく。普通のミノタウロスが八十体近くとアリサが倒したミノタウロスを一体だ。こうして見ると、結構狩ったのに、レベルは1しか上がっていない。まぁ、大半はアリサが倒したから仕方ないか。


「これは……」


 女性職員さんは、アリサが倒したミノタウロスの方を念入りに見始める。やっぱり普通の個体とは違うみたい。


「ジェネラルタウロスですね。なるほど……これと複数のミノタウロスが共にいると、危険度が大きく跳ね上がります。坑道のような空間が限られた場所で戦う場合は特に」

「何か理由があるんですか?」


 これから戦うモンスター達にも適用されそうな事なので、理由を知りたいと思い訊いてみた。すると、女性職員さんは嫌な顔せずに答えてくれる。


「連携の良さが段違いになります。これを倒すには、ジェネラルタウロスを孤立させる状況を作り出すか、ジェネラルタウロスが指示を出す暇を与えないか、他のミノタウロスの意識をジェネラルタウロスから引き離す必要があります

 それを出来たとしてもジェネラルタウロスは、Cランク冒険者でも苦戦する強さを持っているので、先に入った冒険者達が全滅した理由も分かります。ここのミノタウロスは統率された動きをしていませんでしたか?」

「それぞれグループでの行動をしていて、単独行動はしていませんでした」

「それもジェネラルタウロスの指揮の一つです。この数が狩られたのなら、内部は安全そうですね」


 こういう分析が得意な人なのかな。素早くメモを取っている。これがライデンさん達に渡って、調査の指針を決める事になるのかもしれない。


「こういうモンスターって、自然に出て来るんですか?」

「そういう事もありますが、ここの坑道は向こう側に突き抜けている道もありますので、向こう側から侵入している事もあります。通常は封鎖してあるはずなのですが、壊される事がそこそこありますね。現在そちらに関しても調べているところです」

「なるほど……それにしてもウォンバットのギルドに所属している女性職員さんは初めて見ました」


 話を変えると、女性職員さんは少し驚いた表情をしてから微笑んだ。


「こういう街ですので、私達は裏方を担当しています。書類の整理などですね。なので、依頼を掲示板に張る際に出ていますが、タイミングが悪かったようです」

「へぇ~、そうなんですね」

「はい。ですが、こういう時にはそういう事を気にしている意味もありませんので」


 確かに、この状況で職員が引っ込んでいる理由もない。全員で協力するために動くのは当然だ。この会話をしている間に、女性職員さんは提出するための書類を書き終えた。


「これで良し。では、あちらのテントに水と軽食を用意してありますので、ゆっくりお休みください。私はこれで」

「はい。ありがとうございます」


 女性職員さんは、並べられたミノタウロスを置いて去って行った。入れ替わりで解体場の職員の方々が来て解体を始めるので、私とアリサは言われた通りテントの方に向かう。


「手を出すの?」


 アリサは気になった商品を買うのか訊くみたいな感じで、そんな事を言ってくる。言っている内容は、割とあれだけど。そして、それを察する事が出来てしまっているのもどうかと思う。

 まぁ、割とそういう話題で話す事が多いからかな。


「さすがに会えるか分からないから。ほら、私達にも仕事が回ってくるかもしれないんだから、休憩しよ」

「うん」


 まだ名前も知らないのに手を出すとかの話は早すぎる。なので、話題を切り上げてアリサをテントに押して行った。

 アリサと一緒に水と軽食を頂きながら休憩していると、ライデンさんがやって来た。その表情は若干申し訳なさそうな感じだった。つまり仕事を頼みに来たって感じかな。


「すまないが、嬢ちゃん達にもう一度坑道の調査を頼みたい。残っている冒険者にCランク以上がほとんどいなくてな。嬢ちゃん達の手も借りたい」

「分かりました。坑道を歩き回れば良いんですか?」

「ああ。ここの坑道は山を貫通する道があってな。ウォンバットの緊急用の避難口にもなっているんだが、騎士団が調査した結果、そこからの侵入だと判明した。今、バリケードの張り直しをしているところだ」


 完全に塞げば良いのではと思ったけど、ウォンバットの避難口にもなっているのなら、完全には塞げない。バリケードを用意して有事の際に開けられるようにしておいた方が良いみたい。それでも頑丈にしてはいると思うけど。


「嬢ちゃん達には、中にいるモンスターを倒して回って貰いたい。ここの坑道は蜘蛛型のモンスターが生まれやすくてな。周囲に気を付けてくれ。急に現れる事もある」

「分かりました。行こう、アリサ」

「うん」


 仕事を貰った私達は再び坑道内に入ってモンスターの殲滅を図る。中にはそこまでモンスターの気配はしないので、ただただ坑道内を走っていく事になっていた。

 多分ミノタウロスは全滅させただろうし、そんないっぱいモンスターがいるという事もないのだと思う。その中でアリサが声を掛けてくる。


「ねえ、ヒナ」

「ん?」

「外からミノタウロスが集団でやって来たって……」

「まぁ、可能性はあるね」


 アリサが考えたのは、オーガの件と同じように人為的に追い立てられたのではないかという事だ。私もその可能性は少し考えた。ここの構造的に坑道内に侵入させれば、後は坑道を突破するだけで街に直行だ。

 そして、女性職員さんの話からジェネラルタウロスがとても厄介なモンスターである事が分かっている。ここまで追い込む理由はオーガキングと同様にある。どちらもアリサの手によって阻まれているけど。

 そう。アリサがいなければ、基本的には危ない状況だったとも言える。つまり人の手によるものだったら、確実に被害を望んでいる人の仕業だという事が予想出来る。ただし、その考えには、大きな問題がある。


「でも、それを裏付ける証拠がない。騎士団が探ってくれれば良いけど」

「騎士団は中に入らないんだね」

「坑道内は冒険者の方が詳しいから、冒険者の方が適任だって判断されたのかもね。人手が足りないから、あまり詳しくない私達まで駆り出される事になったけど。ところで、蜘蛛型モンスターの気配はある?」

「ううん。ミノタウロスが倒しちゃったのかも。冒険者も同じように倒していたから、蜘蛛型のモンスターの方が早く全滅しちゃって、ミノタウロスばかりになったとか?」

「あり得そうだね。まぁ、警戒はしておこう」

「うん」


 そのまま二時間くらい坑道内を駆け回ったけど、蜘蛛型のモンスターの姿は確認出来なかった。途中騎士団がバリケードを張り直している現場に鉢合わせて少し会話をした。

 騎士団内でもアリサの情報は共有されているから、アリサの姿を見ても少し驚いていたけど、すぐに納得したような表情になっていた。

 騎士団曰く、ここを破られたのは一日二日前だと言う。冒険者達の働きから内部での依頼は大分減っていた。なので、中でミノタウロスを見掛けるという可能性が大幅に減っていたと考えられるらしい。詳しい事は要調査という事だ。

 結局何もなく私達はウォンバットに戻って、ライデンさんに報告した。


「モンスターの姿はなかったか。他の報告でも同じだった。現状、あそこは安全な状態という事だな。助かった。今日はもう帰って大丈夫だ。後の調査は騎士団を中心に進めて貰う。冒険者の数がかなり減ったからな。今回の報酬は、明後日辺りには用意出来ているはずだ。ギルドに取りに来てくれ」

「分かりました。失礼します」


 突発的に起こった緊急依頼はこれで終わった。ここからは私達の手を離れて騎士団による調査が始まるらしい。確かに冒険者の数はかなり減っているし、騎士団の方がそういう仕事をしているだろうから適任だ。

 問題は騎士団に知り合いがいないから、マンチカンみたいに情報をこっそりと渡して貰うという事が出来ない。

 まぁ、街に入ってすぐ騎士団の世話になっていないというのは良い事なのかもしれない。きっかけがないと騎士団に知り合いなんて出来ないだろうし。詳しいところは情報を共有されているかもしれないライデンさんから聞くようにしようかな。

 取り敢えず、明後日までは貸家でゆっくりと過ごそう。大分疲れたし。まぁ、本当にゆっくり出来るかは分からないけど。

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