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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界転生

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異世界転生

 異世界に来た。

 誰に言っても首を傾げられるか正気を疑われるかもしれないけど、フルダイブ型ゲームを始めようとしたら、異世界に飛ばされた。


異世界に来る前─────────────


「ようこそ、私達の世界へ。小柳姫奈(こやなぎ ひな)様」


 新作ゲームを購入して、早速プレイしたら真っ暗な空間にいた。一寸先は闇という感じかと思っていたら、目の前に白い服を着て、真っ白な翼が生えた巨乳のお姉さんが現れた。


(こんな演出あったかな……)


 体験版をやった時に、こんな導入はなかった。こんなお姉さんが出て来るのなら、私が覚えていないはずがないから。

 さらに私に違和感を覚えさせたのは、お姉さんの台詞だ。最初は良い。普通にゲームでも言いそうだから。でも、私の本名が出て来るのはおかしい。本体設定でも、本名での登録はしていないから。ゲームの初期設定すらまだなのだから、ゲーム内で入力した内容でもない。


(なるほど……つまり、これは……夢だ!)


 色々と総合して考えた結果、これは夢だと判断した。ゲームを始めようとして、普通に眠ってしまっただけだと。だって、そうじゃないと、お姉さんはともかく私の本名が出て来る理由が分からないから。

 夢なら何をしても良いだろうと思い、目の前にいるお姉さんのたわわな胸に手を伸ばして軽く揉む。すると、この世のものとは思えない程幸せな感触が手のひらに広がった。自分の胸では、こんな感触楽しめないし、私の知り合いにこの幸せを分けてくれる人はいない。というか、普通に頼む事すら出来ない。そういう関係の知り合いなんていないし。


「あ、柔らかい……本物みたい……なのかな。ぶべっ!?」


 幸せを堪能しているところに、右頬へと衝撃が襲ってきた。遅れてビンタされた事に気付いた。頬にジンジンとした痛みが広がっていく。夢の中で、この規模の痛みを覚えたのは、寝相が悪い日に頭部をベッドのヘッドボードに強打した時くらいだ。

 その時は、すぐに目を覚ましたけど、今は目を覚ますような気配がない。つまり、考えられる結論は一つ。ちょっと飛躍している気もするけど。


「痛い……夢じゃ……ない?」

「ご理解頂けましたか?」


 お姉さんは、優しく微笑みながらそう言った。どうやら、私が夢だと思っている事を見抜いていたようだ。夢じゃないのなら、夢じゃないで、私にはやりたい事がある。もうやってしまったのだから、真っ正面からいくことに抵抗はない。


「夢じゃないと分かったので、もう一度良いですか?」


 そう訊いたら、今度は左頬にビンタをされた。


「!?」


 思わず、左頬を手で押えて涙目になりながらお姉さんを見る。お姉さんは、きょとんとしていた。自分がやった事が間違いだったと理解出来ていないようだ。本気で私がビンタを要求したと思っているらしい。だが、私は痛みに快感を覚えるタイプじゃない。


「胸の方だったんですが……」


 そう言ったら、お姉さんは目を少し見開いて驚いていた。自分の勘違いに気付いたみたい。


「あ、ごめんなさい。お詫びにどうぞ」

「え!? あ、ありがとうございます」


 許可を貰ったので、お姉さんの胸を揉みながら顔を埋める。まさか許可を貰えるとは思わなかった。無理難題を言っている自覚はあったけど、それが通ったら通ったで、戸惑う。だけど、戸惑ってはいても身体は正直に動いている。目の前に自分の好きなものが目の前にあるのだから仕方ない。


(ああ……色々と気になる事はあるけど、今は、この幸せを堪能していたい……)


 そんな事を思っていると、お姉さんが話し始めた。


「そのままで良いので、お聞きください。姫奈様は、先程ゲームの起動中に感電死しました」

「えっ!?」


 驚きながらも、私は胸から顔を上げていない。色々な理由で、そんな余裕はない。


(え? 死んだの? 死んだから最後に幸せの一時を味わわせてやろうって事!?)


 そんな私が持つ疑問は、お姉さんが答えてくれる。


「ハードの寿命が来ている事と近くで激しい落雷が続いた事などの不運が重なった結果、頭に電気が流れたようです。ブレーカーも正常に機能しなかったという不運もあります。ゲームハード側の問題もありますので、しばらくは波風が立ち続けるでしょう」


 フルダイブ型ゲームが下火になってしまうかもしれない。でも、お姉さんの言う事が本当なのなら、最早私には意味の無い事だ。だって、私は死んでいるのだから。


「でも、死んだ私に関係はないですよね?」

「はい……もう少し取り乱されると思ったのですが」


 お姉さんは、割と冷静に答えている私に困惑しているようだった。冷静な思考が出来る秘訣は、天国にいるかのような幸せを感じ続けている事だ。このおかげで、大抵の事は気にならない。現実味がない状況にいるからというのもあるかもしれないけど。


「幸せな感覚があるので、比較的冷静に聞けているみたいです」

「思わぬところで、効果があり幸いです。話を続けますが、そういう事もあり、亡くなられた姫奈様を別世界に転生させて、新たな生を歩ませる事になりました。姫奈様がゲーム好きという事もあり、ゲームのようなシステムが組み込まれた異世界へと転生して頂きます。つまりは、私達が監視している世界です」

「ゲームのような?」


 そんなヤバい世界が存在するのか。誰がどういう風にゲームシステムを世界に組み込んだのだろうか。物理法則とかと同じように自然と発生したものなのかな。そんな私の疑問を読み取ったのか、お姉さんがすぐに説明してくれる。


「神々が作り出したシステムです。姫奈様の感覚と少々異なる部分もありますが、そういうシステムのゲームだと考えれば、姫奈様なら適応出来るかと」

「転生は、必ずしないといけないんですか?」


 これは念のため確認しておきたい。その理由は明確だ。仮にずっとここに居て良いのなら、この感触を永遠に味わえる。そんな生活の方が、私は嬉しい。


「この場に長く留まりますと、魂が崩壊して激痛と共に消滅します」

「転生でお願いします」


 滅茶苦茶恐ろしい事を言われた。ただ消滅するだけならまだしも、激痛を伴って死ぬのは、本当に嫌だ。お姉さんの言う事が正しいのなら、痛みを伴わず死ぬ事が出来ているので、強い痛みを感じながら死ぬというのは純粋に怖い。


「最初に特典として、スキルを与えられます。何か欲しいスキルはありますか?」

「お姉さんが欲しいです」


 馬鹿正直に欲望を垂れ流しにした。お姉さんの胸があれば、知らない世界でもやっていける。私は本気でそう思っていた。ついでにお姉さん自身がいたら、もっと幸せに暮らせると思う。そのくらいお姉さんはドストライクだった。


「申し訳ございませんが、それは出来ません。私が下界に降りる事は出来ないからです。神は下界に対して、直接の干渉を禁じられています。私が降りるのは、その直接の干渉に該当します。ですので、代わりのものとして、祈りを捧げた際、確率で私の元に来られるスキルを差し上げましょう」

「確率……お姉さんガチャ?」


 祈りを捧げる事でお姉さんの元に行く事が出来るというガチャが出来るという事だろう。最高な気がする。


「似たようなものかと。滞在時間は、最大で二時間。向こうの時間で一日に一回だけ判定が行われます。肉体は伴わず、精神がこちらに来るという形ですね。その際、向こうでの時間経過はありません」

「なるほど……デイリーガチャか……いや、お姉さんに会える可能性があるなら、それが欲しいです!」


 熱意を持ってそう言うと、お姉さんは困ったような表情をしていた。まさか、本当に欲しいと言うとは思わなかったのだと思う。私の利点なんて、お姉さんに会える事くらいしかないのだから。

 だが、それはお姉さんが思う利点であり、私にとっての利点は、お姉さんが考えているよりも遙かに大きい。


「そうですか……では、もう一つスキルを選んで下さい」

「もう一つ良いんですか?」

「はい。さすがに、これだけで送り出すのは怖いので、特別にもう一つ差し上げます。この辺りは私の裁量で出来ますので」


 本当に特別措置みたいな感じでくれるらしい。なら、ゲームには必ずあるあれかな。


「えっと……じゃあ、アイテムボックスとかそういうので」

「そちらは、転生者特典でインベントリが付いているので必要ありません」

「あっ、そうなんですね……じゃあ、恐怖心とかを和らげるものとかが欲しいです。ゲームと同じならモンスターとかが出るんですよね? ゲームなら普通に動けますけど、現実だと、怖くて動けなくなりそうなので」


 ゲームのような世界とスキルがあるという話を聞いて、私は勝手にモンスターがいると考えていた。モンスターと戦う時に怖がっていたら、確実に死ぬ事になる。それをどうにかするスキルが欲しいと思った。初めてフルダイブ型ゲームをやった時も、ちょっと怖かったし。

 それに下手したら人と争う事になるかもしれない。その世界がどういう場所かが分からないけど、戦う事が当たり前の世界なら、そういう事になってもおかしくない。そういう時に躊躇ったら、こっちが死ぬ。

 異世界ならゲームのような要素がある世界であって、ゲームの世界じゃない。リスポーンのシステムはないはずだから、その点の躊躇いを薄れさせられるもの必要になる。


「では、【精神耐性】のスキルを差し上げます。これで恐怖や精神的苦痛などに対する耐性が付きます。少々危険なスキルですので、お気を付け下さい。加えて、とある理由により転生者への特典として、強制的に付与させられるスキルもあります。時間経過で消えるスキルではありますが、転生直後であれば確認出来ると思います」

「はい。ありがとうございます」


 強制的に付与させられるスキルというのも怖いけど、転生者に対して異世界でも楽に暮らせるようにしてくれるのかな。詳しく話さない理由は消えるからって事なのかもしれない。


「これで転生の準備は整いました。詳しい説明は、転生後にメニューのメッセージから参照出来ます。では、ただいまより転生を開始します。転生されたという記憶が戻るのは、姫奈様が亡くなられた十五歳からとなります。記憶の定着や人格の育成に時間を要するからです。またあまり幼い年齢で転生してしまいますと、肉体に精神が引っ張られる事になります。こちらもあまり良い事とは言えませんので。

 基本的に転生者の身体は、姫奈様の人格をコピーしたものになります。なので、上書きというよりも追加要素を入れるという形とお考え下さい。元の人格を殺すという事にはなりませんので、ご安心下さい」

「はい。分かりました」


 これから転生が始まるらしい。最後にお姉さんが私の額にキスをすると、身体が光に包まれて、手や足の先端から消えていく。


「えっ……?」


 唐突な事に戸惑いを覚える。


「大丈夫です。このまま光になり、次の世界へと転生します。では、良き人生を」


 お姉さんのそんな事を最後に、私は異世界に転生した。


転生後─────────────────


 そうして、転生する前の記憶が戻って来た。

 記憶を取り戻した私が見た光景は、土壁だった。直後に、これまでこの世界で生きてきた記憶が駆け巡っていく。

 七歳の時、両親と一緒に生まれ故郷から別の街に向かっている最中、盗賊に襲われた。モンスターが存在するこんな世界でも、危険な街の外で盗賊行為に精を出す馬鹿はいる。

 そんな盗賊に、目の前で両親は殺された。そして、私は奴隷として、この鉱山っぽい場所に連れて来られた。

 ここでは鉱石を掘りつつ、アーティファクトというものを探しているらしい。正直詳しくは知らないけど、そんな事のために私は八年間も使われているらしい。かなり酷い扱いで、栄養も満足に得られていないけど、それでもまだ生きている。

 ボサボサに伸びた白い髪と最低限の肉だけが付いた手と伸び乱雑に伸びて割れた爪が自分の身体が変わった事を表している。記憶が正しければ、元々は金髪だったらしいけど、ストレスか何かで白くなったみたい。

 二つの記憶が混ざり合ったけど、混濁はしていない。人格に関しても、変わったという感じはしていない。境遇故に、こっちでは少し大人しかったくらいだ。でも、思考は向こうの世界での私と同じような感じだった。元の人格のコピーというのは本当だったらしい。記憶はないから、子供らしい行動ばかりしていた気がするけど、それも向こうでの子供時代と同じと考えられる。

 今の時間帯は多分朝。また採掘をしないといけない。盗賊達が来る前に、私は自分のステータスを確認する。


────────────────────


ヒナ Lv1

職業:採掘者Lv48

MP:1810/1810 10+1800(200【MP上昇】+1600【MP超上昇】)

筋力:474(1600) 14+460(100【剛力】+360【剛腕】)

耐久:668(890) 8+660(100【頑丈】+560【頑強】)

敏捷:80 10+70【駿足】

魔力:7

器用:467 7+460(100【巧妙】+320【至妙】)

運:10(890)

SP:10

スキル:【MP超上昇Lv32】【剛腕Lv18】【頑強Lv28】【駿足Lv7】【至妙Lv16】

【採掘Lv58】

【MP回復力超上昇Lv21】【重撃Lv12】【暗視Lv68】【気配察知Lv8】

【打撃耐性Lv10】【毒耐性Lv3】【痛覚耐性Lv10】【苦痛耐性Lv10】【精神耐性Lv10】

【高速再生Lv38】

【生命維持】【不死】【女神との謁見】

職業控え欄:旅人Lv1 平民Lv18


────────────────────


 ステータスの数値とかに関しては、正直どう判断して良いか分からないので、メッセージボックスからステータスに関するヘルプを読む。


『モンスターなどを倒す事で、レベルアップ出来る。

 レベルアップまでの行動によってステータス上昇値が変わる。

 職業は自身の行動及び職業レベルが一定に達する事によって解放されていく。

 職業のレベルは、その職業に合った行動をする事で上がる。

 ()内の数字は、職業補正値。

 『』内の数字は、装備補正値。

 スキルは条件を満たす事で獲得出来る。また条件を満たす事で進化や統合される事もある。スキルに沿った行動をする及びスキルの効果を発動する事によって経験値が溜まりレベルが上がる。

 MP:魔法などを使うのに使用する力の残量を表す数値

 筋力:力に関する数値。

 耐久:身体の頑丈さに関する数値。

 敏捷:移動などの速度に関する数値。

 魔力:魔法の威力、効果に関する数値。

 器用:手先の器用さに関する数値。

 運:自身の運に関する数値。

 SPは、ステータスに振り分ける事が出来るポイントの事。レベルアップ時に手に入る。手に入る量は一定レベル毎に変わっていく』


 私はモンスターを倒した事がないので、自分のレベルが上がっていない。しかし、ここに捕まってからの八年間の間、ずっと採掘などをしているので、採掘者のレベルは上がっている。

 それにスキルもしっかりと手に入れていた。手に入れた理由が、かなりあれだけど。【精神耐性】は転生特典で貰ったスキルだけど、最初からレベルが10だったわけじゃない。ここでの生活でどんどんと上がっていった。それだけ精神的な負担が強かったという事だ。子供なのだから仕方ない。

 恐らく、転生者特典の強制付与スキルは【不死】だと思う。このスキルだけ異質過ぎるし。いずれ消えるらしいけど、これのおかげで今日まで死なずに生きてこられたと考えれば感謝しかない。

 今日までステータスを確認しても【不死】と【女神との謁見】はなかった。転生した事により可視化されたのだと思う。それまでは持っているけど、見えない状態だったって考える方が納得出来る。


 レベル1の状態でステータスが初期値から伸びているのは、それぞれのステータスを強化するスキルのおかげだ。魔力だけは、ここで魔法を使うという事がなかったからスキルが手に入っていない。

 【剛腕】は【剛力】から、【頑強】は【頑丈】から、【至妙】は【巧妙】から、【MP超上昇】は【MP上昇】から進化した。どれもレベルが10に達した後に進化した。初期の強化スキルは10が最大値みたい。後は耐性スキルも同じように10が最大値のようだ。

 【暗視】の異常な高さは、坑道内が基本的に薄暗いからだと思う。灯りは置かれているけど、全体を照らすようなものじゃないし。

 【生命維持】に関しては、栄養失調になった時にMPを消費して栄養を生成するというスキルだ。これは最初から持っていたわけじゃなくて、ここでの生活の間に手に入れたものだった。つまり、転生特典ではなく、普通に手に入れたという事だ。

 これのおかげで栄養失調になっても、何とか最低限の栄養を得られる。また、栄養を与えるという力もあるので、ここで出来た友人には栄養を気付かれないように栄養を与えていた。

 ひとまず、SPの振り分けは、まだしないでおく。今後どのように行動するかで、この振り分けが重要になってくると思うから。

 取り敢えず、私は新しい世界に転生した。色々と思う事はあるけど、その事だけは事実だった。

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