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みうへ  作者: A氏
7/22

我が父は腐った

 父とも祖父母とも話すことはなくなった。祖父母は私も一因になって父がアル中になったと思い込んでいるし、父とも私が関わりたいと思わないからだ。ただ私が家から出ていってから4ヶ月程度経った夏であった。

 「〇〇が亡くなりました。現在家で警察を待っています。」

 と連絡があった。私は車を持っていないので、母を呼び車で向かった。

 父はテレビを見て、酒を飲み椅子に座りながら脳溢血となったようだった。鼻や口から吐瀉物と一緒に大量の血液が流れ出しそこら中が茶褐色となっていた。

 「すでに死後、数日は経過しておりますね。息子様はこちらに戻られたりしておりましたか。」

 「いいえ。最後に来たのは4ヶ月以上前ですし、鍵がわかっているのも知りませんでした。」

 「そうですか。」

 「検死はしないことにしたから。葬儀屋は呼んであるけど冷蔵すると金がかかるみたいだからここに置いとこうと思う。寂しいと思うけど仕方ないね。線香あげに来てあげて。」

 そうして、警察は帰り、祖父も帰った。私も父がいる部屋を後にした。

 

 翌日私はまた実家を訪れた。葬儀の金を私は大学生で出す事ができない。でも父は退職金や車を売った金があるはず、もしくはキャンプ道具を売って仕舞えばいい。そう思い、父が寝ている横で探していた。

 実家は汚く、臭くこのようなところで暮らしていたのかと信じられなかった。トイレは糞尿で汚れているし、風呂は入っていなかったのかただただ汚いだけであった。使われた形跡もほとんどなかった。布団はもちろん脱糞したのか拭かずに入ったのかわからないが汚れているし、洋服すらずっと同じのようだ。廃人というのはこのようになってしまうのだと悟った。

 そして通帳を見つけた。ただカードがなかった。

 とりあえず、気が滅入る。祖父母が葬儀についてはやってくれるという。花を手向け、残っている酒をお供えし私は家を去った。

 

 そして葬儀当日、私が形だけ喪主となった。葬儀は家族葬で小規模であった。喪主であるが故に明細書は私に届いた。100万もかかっていた。それでも安い方なのであろう。そしてそれは祖父が出してくれていた。少し申し訳なくなった。喪主であるのにも関わらず、父の友人も呼ばず家族だけだった。だから金は1円たりとも増えはしなかった。墓は作らないのだという。何年かは祖父母の家で一緒にいたいと言っていた。

 そして翌日私は父の墓を作ることもあるし、本格的に父の金を探すことにした。そこで警察に問い合わせた。

 「父が亡くなったときに、何か持っていませんでしたか。」

 「はい。財布とスマートフォンは身につけておりました。」

 「どちらに行きましたか。」

 「昨日、確認後祖父にあたる方にお返しいたしました。」

 「すいません。ありがとうございます。ちなみにいくら入っておりましたか。」

 「33万5821円でした。」

 「ありがとうございます。祖父に聞いてみます。失礼します。」

 

 「もしもし、昨日さ、財布をそっちが預かっていると思うんだけど、どうした。」

 「お前は、父が亡くなってもう金の算段をしているのか。」

 「そうじゃなくて、葬儀の費用とかかかるでしょ。だから探してたんだけど。」

 「こっちに任せれば良いだろ。なに金を探そうとしてんだ。」

 「そりゃこっちが相続権あるんだから良いだろ。」

 「もういい、話しかけてくんな。家にももう来るんじゃねえ。」

 そう言われ切られた。

 銀行に行くと180万円以上が父が亡くなった翌日に下されていることに気づく。一歩遅かったのだ。下ろしたのはもちろん、祖父である。父の退職金の300万円ほども生前に下されているのに、存在が消えている。そして車を売った100万円ももちろんのこと消えていた。全て祖父母に持っていかれたのである。

 祖父母はこの日から話す気をなくし私と話すことは無くなった。

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