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みうへ  作者: A氏
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私は酒を飲むと人はここまで堕落し欠如しぞんざいになるのだと知った。

 私は酒を飲むと人はここまで堕落し欠如しぞんざいになるのだと知った。

 日々刻々と落ちぶれていく姿を見た。最初はまだ車を乗ることもできていて、酒を買いに行ったり、終わりを迎えるドライブを楽しんでいた。臨時収入として入った、退職金などを勝手に使い込んで、キャンプ道具を大量に買って色々な所に出るようになった。どうやら国産のキャンプメーカーの中では最高峰のようで、100万円くらいを易々と溶かし、キャンプ道具になっていった。仕事仕事で私と出かけたこともほとんどなかったが、一緒に買い物に行ったのを覚えている。親子というのは普通こういうものなのだろうと思った。

 ただそんな生活が長く続くわけもなく、金が尽き、車をいよいよ売るところまで来た。そんな中で新たな刺客として現れたのが、祖父母であった。

 自分の我が子が可愛い祖父母はこのような生活になったのは全て私たちの所為といってくるようになった。そして私の家ではなく、祖父母の家で父は暮らすことになった。当分は帰ってこない。そして勝手に話は進んでいくのである。

 「〇〇がこうなったのは、あなたたちがしっかり見てないのがいけないんでしょ。私たちが引き取るので、とりあえず離婚してさっさと出ていってもらえる。〇〇と一緒に暮らしてても〇〇が可哀想なだけだからさ。」

 「え、俺離婚しないよ。だってまだ好きだもん...」

 「いいわ、こんなクソな家出ていってやるから。」

 「早く出ていって、明日離婚届持ってくるから、〇〇の署名が終わったやつ持ってくるから、書いて出しに行ってくれない。」

 そんな話をして、離婚が突如として決まったのである。まず父がなにも言わなかった。言えなかった環境を作ったのは恐らく母である。それについては間違いはないが、だからと言ってアルコール中毒者にしたのまで私たちと言われるとそれは違うように感じる。そして父と離れたのである。

 母も引っ越しの準備を進めて、私は大学に行き、父がいない生活がスタートしたのである。

 私の大学ではベートーベン交響曲第9番を歌うコンサートの準備をしていた。私はそこに出演する予定だったから父にコンサートのチケットを送った。アル中で暇なのだから祖父母ともども観にくると良い。私について誰も家族は興味がないのだから。大学でなにをしているかなんて一切聞いてこないのだから。こんな暇を持て余しているのであればくると良いのだ。

 そして渡してから1ヶ月経った頃、本番を迎えた。父や祖父母は観にきた。きっとあれほどの大勢を大ホールで見るのだ。私を見つけることができていなかったのかもしれない。それでも小学生以来の発表会のようで少し嬉しかった。

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