取り調べ
頭の中にあった草案をじわじわと書いています。時間はかかるかも
「では、10時44分。聴取を始めます。あなたには黙秘権があります。言いたくない事は言わなくて構いません。またそれによって裁判で不利になると言う事はありません。」
「これについてわからないことはありますか。」
そう言って何かラミネートされた定型文が渡され読まされ全てがスタートした。
「では、名前と職業を教えてください。」
「〇〇 〇〇、職業は教師です。」
「読み上げます。20〇〇年○月○日、正当な理由なく未成年と知りながら少女を宿泊施設に深夜に同行した青少年健全育成条例違反の罪の容疑がかけられております。この容疑について間違いはありませんか。」
「その容疑にある、正当な理由というのに私は当てはまると思いますので、罪に当たらないと思います。」
「では正当な理由があった上で、未成年の少女...自分のクラスの生徒ですよね。その生徒を深夜に宿泊施設に同伴させたというのは間違いありませんか。深夜というのは補導を受ける時間からです。」
「はい。そうですね。その点については認めます。」
「では、正当な理由というのはどのような理由ですか。」
「私はその生徒を守ろうとしただけでした。彼女の家庭環境は複雑で保護者とは仲が悪く、その日は帰りたくないと病んでおりました。また野宿やパパ活なども視野に入れているという話をしていましたのでそのようであるならば私に頼ってくれれば宿程度は用意できるという話をしたのです。そしてその日はもう少し後だと思っておりましたが、その日が良いと言われ、ただ泊めてあげて1日もすれば関係も良くなるだろうと思っておりました。」
「それでは性的な目的ではなく、あくまで保護をしようとしたのですか。それであるならば児童相談所や警察など他の手段があると思いませんでしたか。」
「はい。他の手段もあります。しかし、児童相談所はその時間にはすでにやっていないということもありますし、何より児相にはマイナスのイメージを持っています。児相に相談すると家庭がより悪化してしまうケースも多分にあると思います。また警察についても同様です。ひとときの酒を飲んでいる保護者から離れたいと思うだけに警察を介入させるのは事態を悪化させるだけだと思いました。また私もアル中の父親を持っておりましたし、酒飲みというのが家庭にいるのはどれだけしんどいかはわかっていました。だから救ってあげたのです。」
「そうですか...。」
「その理由が保護者の許可なく未成年を深夜に同伴させる正当な理由になると思いますか。」
「はい。この子の生徒は両親がすでに他界しており、現在はまだ関係を構築しきれていない祖母と暮らしています。その唯一の保護者が酒飲みで逃げることができないのであれば、それを逃してあげることも私の努めであると思いました。」
「あなたの父親もアルコール中毒者だったのですか。」
「はい。そうでした。私の父は毎日酒を飲んでは寝るだけの生活をしていました。仕事をまだしていた頃には私に対して暴力を振るってきたこともありました...」
卑屈で偏屈な人間が現実に疲れて書いています。