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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
鳥と人 エストリテ編
40/304

過去

「お前、なんであんな風に威圧したんだ?」


 浮島から帰るスピードボートの中で、ディオブが静かに聞いた。夕焼けに赤く照らされたディオブはイリエルの目に異様なほど真剣に見えた。妙な雰囲気の二人に、サグもテリンもついつい聞き耳を立ててしまう。


「……故郷の島でね」


 語る声はいつになく寂しげで、しかし慈しむような優しさも感じさせる。


「島で……動物達と人間は共存していた……けどある時、そのバランスは壊れた」

「壊れた?」

「うん、増えすぎた動物達、そして人間達……食料は交易でも賄い切れず……奪い合った」


 島々の大きさは様々だ。しかし狭い島の中で生き物が増え過ぎればどうなるか、容易に想像が付く。惨たらしく、悲劇的な光景が思い浮かんだ。まして人間は知恵がある分他の生き物よりも生き残りやすく増えやすい。自然のバランスが壊れてしまったのだろう。


「辛かったな……」

「うん……だけど……」


 呟いたイリエルの顔には想像していたよりも辛さや悲しみといった負の感情は無かった。


「同時に、美しく思った」

「え?」

「生きるために、必死で戦い、人を、自然を蹂躙し続ける姿……本能のままの姿……」


「魅了された」


 不気味なほど、イリエルの声は喜びに染まっていた。沈みゆく太陽に照らされて、紅潮しているのかわからないほど肌が赤く見える。しかし少なくとも興奮しているのは確かだ。声が、イリエルの状態を細かに伝えていた。


「人が殺されるとこを見たいわけじゃない、自然が自然のままであるように、願っているだけ」

「……今回は……マーコアニス達のままにってことか」

「ええ」

「……島民の恨みは消えないぞ?」

「恨んだからって命も時間も帰ってくるわけじゃない、私はよく知ってるわ」

「……どうする気だ?」

「この後隊長に掛け合うわ、争いが起こらぬよう、導くために」


 イリエルの言うことはもっともだった。しかしどうにも不安だ。サグには何か見落としていることがある気がしてならなかった。


「けどなあスカイストムが成体になる時間なんてわからないぞ?」


 ディオブがモヤモヤとしていた疑問を晴らしてくれた。そうだ、結局マーコアニスたちがここを離れるにはあのブヨブヨが成体にならなければいけない。しかし希少な生物だ、その時期がいつかなんて知らない。


「大丈夫、研究通りならあと数日…早くて今日明日程度よ」

「本当か?」

「そうよ、伝承と文献を研究した、羽の様子で見分けられるわ」


 自信たっぷりな様子だった。根拠はないが、サグは自信を信じられる気がした。


「じゃ、明日この島の役所の前でね」


 島の港に戻り、イリエルは報告のために神軍たちの元へ向かっていった。


「なんか、勢い任せの一日だったな……」


 エボットの呟きに、サグは苦笑いで返した。正直なところ振り回されてばっかりだったように思う。


「あれ?そういえば今日俺たちってどこで寝るの?」


 すっかり忘れていた。普段は船で寝泊まりしている、が今日はドックに船を預けていて、しかも改造中で中は使えないはずだ。一応島内にも宿泊施設はあるようだが、節約するに越した事はない。


「ドックのおじいさんが部屋貸してくれるって」


 実はすでにテリンが交渉してくれていたらしく、余計な改造を認める代わりに一日止まる分の部屋を貸して欲しいと頼んでいたらしい。助かった、今日これだけ疲れて部屋無し野宿は流石に辛すぎた。とりあえず四人は、ドックへと向かった。

 ようやく、激しい一日が終わろうとしていたのだ。

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