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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
289/304

島が動く

「武器の購入!?」

「穏やかじゃないな……どうしてだ?」


 二人はリーダーがさらに持ってきた細かい内容を確認している。

 内容としてあるのは、剣、刀、銃にその他刃物や鈍器。安く抑えようとさえしていない、とにかく武器をありったけという気持ちが透けて見えてくる。

 さらに金額もとんでもない。国庫の金が当てられているらしいのだが、この金額ならば、おそらく一年分の島の船用燃料が賄える額。

 まず間違いなく国庫から一気に持ち出していい金額ではない。


「わからない……しかも購入者もよく分かっていないんだ」

「なんだと?」

「担当者は王の親族から購入するように言われたとしていたんだが、その親族は指示を出していないと。書類を確認すると、何人もの筆跡が使われていて個人の特定も難航している」


 リーダーは重く苦しそうな顔をした。

 想像する以上に情報が錯綜し、それを解決するために相当苦労しているのだろう。

 表情の疲れからそれを察し、ディオブは少し下を向いてしまった。


「特定できないことは無いでしょう? 書類から調査したり」

「……書類がぱっと見一人の人物であると思わせられるように字を寄せて、その上で十や二十では聞かない人物が関わっている。難しいな」

「何で担当は通したんだよ」

「お上からだ、通すしか無い」


 イリエルの的確な指摘で、さらに深くまで見えてきた正確な事態。

 しかしそこにあった雑な事実にディオブは眉間に皺を寄せる。

 ディオブは紙を再び見つめた。そこにある情報は購入した武器以上の事実をくれないが、逆にその情報を突き詰めることはできる。

 この場の三人は、すでに購入した人物がこの島の民間の誰かであるだろうと予想をつけている。

 だが購入物の中に猿用トラップがないことに強い違和感を感じている。

 住民たちが本来したかったのは、猿たちに対する対応である。だから本来購入すべきなのは猿への対策、つまりトラップだ。

 だというのにここにあるのは主に対人用の武器。戦うための武器だ。


(だとしたら、考えられるのはクーデター)


 ディオブの中でそれは無い話ではない。政治に不満があり変わらないのならば、あとは暴力しか残されていないのだ。

 が、現状への対策を捨ててまで、わざわざできるかどうかもわからないクーデターに向かうだろうか。ディオブは違和感に首をひねる。


「ちなみにこれが例の書類だ」


 リーダーがテーブルの上に書類を置いた。

 見ると、それぞれの字は何と無く似ているが、確かに大きさや細かい癖に違いを感じる。

 手に取り、指で触れそれを確認した。すると、一部に違和感を覚えた。


(段差? 紙で?)


 強い筆跡が紙をへこませることはあるが、ディオブが感じた段差は盛り上がり。

 明らかなおかしさに、ディオブは何度もその箇所を指で擦り、違和感を確かめようとしている。

 何度も擦っていると、白い紙から白いものが取れた。


(修正テープ!)


 ディオブは爪でその辺り一帯を剥がし、下にあった字を露出させた。


「なっ!」


 下から出てきたものに驚き、ディオブは思わず声を上げてしまった。


「なんだどうした?」

「ディオブ?」


 二人も同じように覗き込む。そして全く同じように驚きの表情を浮かべた。

 そこには、猿用トラップと記されていた。

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