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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
288/304

シナリオ

「私たちは別れてから王兵隊の基地に向かったの。そしてリーダーと話をした」




「どう思う? この島が向かう先」

「良くはねえな、間違いなくカオスだ」


 二人は非常に複雑な表情をしている。

 この島は今、明らかに崩壊への一途を辿っていると、何となく肌で分かってしまうことが苦しいのだ。

 二人の出身の島はある意味真逆だ。

 ディオブの故郷は伝統を重んじ、子供達に島の技術を授け繋いできた。そのためディオブは武術と魔法を修めている。

 イリエルの故郷は動物たちとの共存を重んじ、互いに助け合いながら自然の恵みを分かち合い生きてきた。しかし増えすぎた数が心と生活を蝕み、互いを殺し合う結果となってしまった。

 転がっている要素に違いこそあれ、今この島は、イリエルの故郷と全く同じ道を辿ろうとしている。

 

「分かることがこんな厳しいなんてね」


 皮肉っぽく笑うイリエル。

 ディオブは何も言うことができない。イリエルの言葉は正しいし、なにより自分の故郷は平和だった。

 静かに歩き、いつの間にやら目的の場所にたどり着いた。

 時間が早いせいか、建物の前には誰もおらず閑散としていて、昨日とは全く違う様相をしていた。

 しかし、来る予定だった二人を出迎える人間すら立っていなく、それが二人に強烈な違和感を与える。

 目を合わせてから恐る恐る扉をノックした。しかし三十秒ほど経っても誰もこなかった。

 おかしい。強烈な違和感が二人の神経を刺激する。

 ディオブはゆっくりと耳を扉に当てた。すると奥の方で、何やらバタバタと慌てながら歩き回る音が聞こえる。みなくても分かるほど慌しい。

 

「何だ?」


 聞いているとこちらへ走ってくる音がした。徐々に近づいてくる。

 耳を離し一歩後ろに飛び退く。次の瞬間に扉は荒々しく開かれた。


「あっ、ディオブさんとイリエルさんですね!?」


 出てきたグリアと同じくらい若い男を二人は知らない。しかし上司から客が来ることと名前を聞いていたのだろう、慌てた様子とは裏腹に、声も顔も朗らかで誠実そうだった。


「ああ、いったいこの状況は何なんだ?」


 ディオブが眉間に皺を寄せながら言った。

 扉から見えるだけの範囲でも兵士たちがあっちこっちへ行ったり来たりしている。両腕で大量の書類を抱えながら、だ。

 男は少し困った顔をして振り向く。顔から読み取れるのは、どう説明したものか、というよりも説明していいのかどうかを迷っているかのよう。

 二人はまた目を合わせてしまった。


「お二人は来た瞬間に隊長の執務室にご案内するように指示されています、こちらへ」


 男の案内に従い、二人は基地の中へと入る。

 覗いた時とは段違いなほど兵士たちは忙しいようだった。中には汗を流しながら走る者もいる。

 階段を上がり、男が扉をノックした。


「お二人がいらっしゃいました」

「入ってくれ」


 聞いたことのある声に導かれ、男は扉を開け二人に入るよう促した。

 二人が入ると、男は入ることなく扉を閉め、足音を鳴らして去っていく。


「来てくれてありがとう」

「なんか忙しいようだな」

「まあ、ね、お茶は?」

「いらないから本題に入ってよ」

「……」


 王兵隊のリーダーは黙りながら持っていた紙を机に置いた。二人は不思議に思いながら覗き込む。

 それはどうやら何かを購入した領収書のようで、それも大量に、なかなか高額のものを購入している様子。


「何の領収書だこれ」

「武器だ」


 告げられた瞬間、二人は驚きに目を大きくした。


「どういうことだ!!」

「この島の資金で、武器が購入されている」

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