くだらない謎
「とりあえずメモの意味を知りたいが」
サグがぽつりと呟いた。音量が小さくなったのは、できるだけ周りに声が聞こえない方がいいのではないかという、無意識の警戒が故だ。
メモの意味は現状全くわからない。だが、店員がこそこそ仕込んだ以上、何か意味があることは間違いないのだ。
「っても、全くヒントがねーよな」
エボットがメモ紙をひらひらさせて、下から覗き込んだり、また上から見たりしながら言う。
四人は今人目を避けるため、薄暗い路地に入り込んでいるが、十分光は入ってきているため紙は良く見える。
テリンが紙を受け取り光の方へ透かしてみた。何か消し跡などないか調べてみるつもりだったのだが、それらしいものは一切見当たらない。
全くのノーヒントの状況で、パンフレットと睨めっこをしていたミラが三人をメモを睨む三人を呼んだ。
「ねえ、それっぽいのがあるんだけど」
呼ばれた三人は新情報を求めてミラの元へとさっさと集合した。
ミラが指差していたのは、民家エリアと書かれた場所。ここからそれなりに離れている島民達が暮らしているエリアだ。
基本的には観光客はあまり立ち寄らないだろう。一応パンフレットに書かれている程度で、なにかそれらしい魅力的な情報も、近づこうと思うような要素もない。一番行きたいであろうメインストリートからもだいぶ離れている。
「なんでそう思うの?」
「みん」
テリンの質問に答えた時、全員が微妙な表情を浮かべた。感想としては「まさかそこまで中身がなかったとは」というのが正しい。
そんなニアミス程度の偶然ならば、意外と数えきれずあるのだ。
「じゃあ38の方は?」
「……わかんない」
「ああ、そっちはなんとなく分かってきた」
苦しげに呟いたミラを遮り、サグが言葉を繋いだ。
少し不思議そうな顔をしていたが、サグはメモ紙をテリンから受け取り、数字のところを指さした。
「これさ、元々入れてあった本が子供向けの引き算の本だったんだよ、しかもタイトルが『二十四時間で子供の学力アップ!』って」
「「「わっかりやすうぅ……」」」
元々このメモ紙はサグが別の本から抜き取ったものだった。
そして、この暗号なのかよくわからないものを仕込んだのは、素人である島民である可能性が高い。
ならば呆れてしまうほど単純な謎である可能性が高いのだ。
「その流れでいくと、38-24で14ってか? 意味わからんが」
「順当にいくなら時間じゃない? 十四時に……」
「民家エリアで……」
三人は筋が通ってしまったことに言葉を失っていた。
全員が微妙な表情を浮かべて、そうでしょう? と言いたげな顔をしているミラを見下ろしている。
三人が目を合わせ、考えていることは同じだと察した。
あり得ると思うか?
多分? ないこともない
筋が通っちゃってるし……
他に可能性もない……かあ
納得はいっていない。ただ、書いた人物が素人であろうこと、伝えたいメッセージが何かはっきり分かっていないことが、この説を妙なほど後押ししている。
どうしようもない現状に、一番納得のいっていなかった男エボットは大きくため息を吐いた。
「いくかあ」




