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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
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依頼

「やっぱり今日もダメか」


 サグは街を見つめて言った。

 今日も街は混乱に包まれている。人々の混乱の声が今も船まで届いてくるから、甲板の上からでもわかる。

 この島の歪みを目にし、どうしても正しきれない部分を理解した。

 だとしても、何かをしたいそう思いながら迎えたこの朝。サグは熟睡した体とは対照的に、頭がモヤモヤしていた。

 モヤモヤの正体はサグ自身にも理解できない。何がどうしてこんなにも苦しいのか、永遠の課題として頭に残る。

 

「くそっ」


 らしく無い一言と共にサグは船室へと戻っていった。

 それを見ていたエボットは、サグが同じような感情を抱えていることに気づいた。

 だとしても何をすることもできない。エボット自身も解決する方法を知らないからだ。

 

「今日、午前中の特訓はない」


 準備を終え、今日は何をするのかと待ち構えた時、ディオブから告げられた言葉がこれだった。

 もちろん驚き動揺するが、ディオブと、横に並び立つイリエルの表情は固く、何を反論できる状況でもなかった。

 

「今日、俺たちは王兵隊の基地へ行き、調査の協力者として今後の話を聞いてくる。このバカが首突っ込んじまったんだ、筋を通してくる」


 ディオブは手の甲でイリエルの頭をノックするみたいに叩きながらいった。

 イリエルは一切反撃も反論もしなかったが、少しだけ深いそうで、同時に気まずそうな顔を浮かべる。


「ごめん」

「……お前には故郷の事もある、理解はしているさ」


 二人だけにしか聞こえない声で会話をした。

 ディオブは口元を拭うふりをして、イリエルは下を向いているから、サグ達にそれぞれの表情はよく見えない。

 

「代わりに王兵隊からの依頼を託す今日お前らは島の様子を見てきてくれ」

「島の様子を?」


 テリンが少し不思議そうな顔をした。

 島の様子など、見に行くまでもなく聞こえてくる声でほとんど理解できる。

 いったとしても、昨日のように人々の混乱の波に飲み込まれるだけ。簡単に想像できる笑えない構図だった。


「あの看板の公開から一日、島の人間に完全に情報は行き渡った。その上での情報収集だ」

「「「「?」」」」


 サグからミラまで、話を聞いていた四人が全く意味がわからないという表情を同時に浮かべる。

 ディオブはそれに対し、どう説明していいのか全くわからず、ひたすら苦笑いを浮かべるしかできなかった。

 話の停滞を感じ取ったイリエルは一歩前に出る。


「要するに、島の反応を細かく調べて欲しいって事。その辺で観光してるふりしつつ、他の人の声に聞き耳を立てる、それだけ」


 なるほど。とエボットから声が漏れた。

 簡単にいってしまえば意見調査といったところだろう。

 王兵隊は島民の対応をする立場、だから表立ってどう思っているかを調査できるほど余裕が無い。そこで観光客という立場を利用しようとしているのだ。観光客がその辺を歩いていようと誰も気にしない、気にせず話したいことを話す。だからそこで話を聞き、それを纏めて欲しいといっているのだ。

 目立たず、騒がず、一般を装えるサグ達に向いているミッションと言えるだろう。


「これはある意味、作戦行動って意味の訓練にもなるぜ?」


 ディオブは少しだけ冗談めかしたような口調でいった。

 しかし、言っていることの半分は本気だ。実際、ディオブとサグ達が初めて出会った鉱山の島では奇襲作戦を行い勝利と脱出を成功させた。


「時間が迫ってる、頼んだからな」


 それだけ言って二人は王兵隊の基地へと向かった。

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