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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
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次なる情報

 サグとエボットは人の波をかき分けながら、王兵隊の基地を目指していた。

 二人の身体能力ならば、王兵隊の基地までは正直大した時間はかからない。

 直線距離だけでいうならば。

 今日は道を埋め尽くすほどの人がいる。酔ってしまいそうな程だ。

 サグは小説をよく読むのだが、人波をかき分けるという表現の意味を、ようやく実感できていた。

 酔ってしまいそうな程の人人人。エボットとハグれないようにするのが精一杯なくらい。

 仕方ないのだ。

 この通りは元々平均的に人通りが多い。

 その上、この通りの先には例の如何様にも解釈できる立て看板が設置されていて、見たばかりの人々は周囲の人間がいるであろうこの場所へ集まるのだ。

 結果大渋滞が生まれる。

 建物の屋根を飛んで行ってもいいが、それでは面白いように目立ち放題してしまう。

 この状況で更なる面倒ごとを産むことは避けたかった。


「エボット、いるよね?」

「もちろん、けどやべーな」


 二人は少しだけ不安になりながらお互いの存在を確かめる。

 いつの間にかいませんでした、がこの状況ではあり得てしまうのが恐ろしい。

 二人はひたすら進み、一旦人が落ち着く状況まで出れた。だがそれでもまだ王兵隊の基地は遠い。

 

「ったく、何日か前ならあと半分くらいまでは進めてたのに」

「仕方ないさ、みんな混乱してるんだ」

「ってもよお、このままじゃ物資だって通れねえ」

「そもそも商売が成立してないかもね」


 人の噂というものは一瞬で伝播する。それが重要な情報であるならその数倍の速さで。

 噂が噂を呼び、情報が人を惹きつけ、離れた場所に住んでいる人もこの場所に集まってきたのだろう。

 サグが商売が成立していないと言ったのもそういう理由だ。

 ただの噂ならば特に何の問題もなかったのだろうが、今回の噂は島の存亡にさえ関わるもの。

 従って刺激されるのは興味だけではない。一種の使命感的な部分も刺激されているのだろう。

 幾つか商店を見かけたが、まともに機能している様子の店は一つとしてなかった。


「とりあえず行かないと」


 サグの言葉にエボットがうなづき、二人は再び人の波の中に飛び込んだ。




「なんだって?」


 王兵隊の基地の裏手で、イリエルの間抜けな声が響いた。

 その顔にはわずかな怒りが浮かび、一緒に来ていた筋骨隆々の巨漢ディオブを怯えさせる。

 対するグリアはさらに恐怖を感じている。

 説明役として業務に追われる先輩方の代わりに前に出ただけなのだが、向けられるイリエルの殺意に似た目線はグリアの許容を大きく超えていた。

 涙目になりそうなのをプライドで必死に抑え、グリアは説明を続ける。


「ですから、この件は僕らにもどうしようもできなくて」

「馬鹿げてるわ! このままじゃ島が!」


 猿の危険性はグリアも身をもってよく知っている。だがグリアにもどうすることはできない。所詮彼も下っ端なのだ。

 若すぎるグリアで政はどうにもならない。隊長でさえも。

 グリアの苦々しそうな顔を見てディオブは察するが、ヒートアップしてしまったイリエルは察知できなかった。


「どうしたのかね?」


 その時、突然落ち着き払った声が聞こえてきた。全員が驚き、そちらを見る。

 その瞬間にグリアは表情を変えた。


「おっ、王様」

「やあ、王兵隊」

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