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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
273/304

激突

 夜が明けた。久方ぶりの、ベッドの上ではない朝だった。

 しかし、三人の体は疲れていなく、むしろ活力のようなものに満ち溢れている。

 サグとエボットはいつもの午前中のトレーニングに備え、すでに食事を終えて服を着替えている。

 テリンは一人甲板の上で自分の火を見つめ、手のひらで優しくそれを握りしめた。

 起きてきたディオブとイリエルは、三人の様子に少しだけ違和感を覚え、お互いに目を合わせた。

 

「なにかあった?」

「間違いなく、だがわからん」


 二人はとりあえず全く触れない事を決め込み、いつものトレーニングの準備をする事を決めた。

 

「ディオブ、イリエル、今日は俺たち二人でトレーニングさせて」


 サグとエボットは、真剣そのものの瞳で、心の底から落ち着いた口調で二人へ語りかけた。

 二人には何か確信めいたものがある。直感させるには十分な瞳をしていた。

 強くなった側として様々な事を知っているディオブとイリエルは、その頼みを素直に受け入れることにした。


「いいぜ、本気でやってみろ、お前らにはいろんな経験が必要だしな」


 ディオブの言葉に感謝し、二人は甲板から島へと上がった。島の環境でなければできないことはたくさんある。

 テリンもトレーニングには参加せず、船の端っこで自分の炎を操ることに集中し始めた。

 テリンの考えは一つ。自分自身の魔法を見つめ直すこと。

 テリンが現在扱える属性は二つ。火と光の力だ。

 光の方に関してはあまり鍛えてこなかった。戦闘には火さえあればなんとかなっていたから。

 しかし現在、テリンは新しい力の必要性を感じていた。

 イリエルの扱う炎は、属性の融合もあるとはいえ完璧なコントロールに支えられた魔法だった。

 自分との差を痛感するには十分なほど。


(コントロール……イメージ……全部見つめ直す……私の力を作り直す!)


 自分の持てる戦術と武器、そして発想。

 全部を使って戦うしかないのだ。テリンはそれを見つめ直すために、自分の体の中全てを考え直そうとしている。

 魔力探知を支えるディオブとイリエルは、テリンの成長度合いに驚きつつ、内部で起こっている事を察知し、何をしようとしているのかをほぼ正確に理解した。


「こりゃあ、焦らないとかもな」

「ええ、少しまずいかも」


 二人は少しだけ冷や汗を流した。

 そして現在は可能性の塊、ミラを見つめてニヤリと笑う。




「わかってるなサグ」

「ああ、始めよう」


 周囲に人がいない空き地に入り、二人は拳を握って向かい合う。

 二人が直感的に出した一番向いている結論は、戦闘しながら磨き進む事。

 反射の応用、格闘の戦闘技術として、中途半端ながら身につけている技術の一つ。だがそこに劇的な強さは無い。

 だからこそ、二人は一番近しいライバルであるお互いに向かい合い、殴り合い、ただひたすらに磨く事を決めた。

 アクマンス、エストリテ、リリオウド、強敵を超え、成長するあの感覚。

 瞬きの時間さえ大袈裟に長くさえ感じる、あの最高の進化の感覚。その感覚を再び掴むにはライバルが必要だ。


「いくぞ」

「おう!」


 二人は走り出し、お互いに魔法を構えて走り出した。

 電気が迸る拳と、氷を纏わせた拳が勢いよくぶつかり合う。

 次は蹴り、またお互いの魔力がぶつかり合い弾ける。


「だりゃあ!!」

「しゃらあ!!」


 攻撃と攻撃がひたすらぶつかり合う。何度も何度もぶつかり合う攻撃は同格。

 しかし一つ一つの攻撃には殺意が宿っていた。

 本気なのだ。本気で相手を倒そうとする攻撃がぶつかり合っている。


(グリアの決意がどれだけすごいか、わからないけど)

(この島に対し、俺らがどんだけ何ができんのかわかんねえけど!)

((強くなりたい!!))


 二人の拳が交錯した。

 電気と氷が弾け、また混ざり合う。

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