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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
魔法修行編
27/304

魔法修行、難航

 ディオブはそう言ってすぐに船室に引っ込んだ。少しだけ間抜けな顔で顔を合わせてから、三人は修行を始めた。

 サグはまず昨日と同じように、魔力を取り出すところから修行を始めてみた。魔力の流れを感じ、手にそれを集める。すると手を覆うように電気が発生する。それにもう片方の手で触れてみると、確かに対して何も感じない。

 強いて挙げても、静電気の見えないワタに触れるような感覚を弱くしたイメージだ。これでは確かに攻撃にはならない。


「電気…か」


 電気と考えると、一番最初に思いつくのは明かりだ。また危険というイメージもあるが、それは薄ぼんやりとした感覚でしか無く、はっきりと危険というイメージを持てなかったのだ。

 チラリとエボットを見てみた。エボットもなかなか苦戦しているようだ。見るに氷を大きくしようとしているようだが、未だただのエネルギーから固形物になることができていないようだ。

 反対のテリンを見る。テリンは今は魔力コントロールをしているようだ。目を閉じて肩幅に足を開き、少しだけ脇を開いて脱力している。

 現状、誰もはっきりと魔法には至ってはいない。ぐだぐだと悩みながら魔力コントロールを試行錯誤しているうちに、昼になってしまった。ディオブに呼ばれて船内に戻る。扉を括った瞬間に、チャーハンのいい匂いがした。

 上手くいっていない現状にむしゃくしゃしながら、チャーハンを口いっぱいに入れる。少し痛いほどに頬が膨らんだが、構わずに米粒を一つ一つ噛み潰していく。


「なんだ?ずいぶんイライラしてるじゃねえか」


 座りながらディオブが言う。ケラケラ笑っているのが少しだけイラッとした。


「何かヒントないの?」


 目だけでディオブを捉えて言った。サグも我ならぶっきらぼうだと自覚した口調だった。


「なんもねーよ」


 ディオブはチャーハンを口に入れながら言った。


「魔法ってのは魔力と違って、イメージが大事だ」

「一人一人の持つ物事への僅かな認識の違いと、密接に関わっている、横からどうこう言っても妨害にしかなんねんだ」

「俺とは適正属性違うしな」


 そう言ってまたチャーハンを口に入れた。

 程なくして全員が食事を終えた。エボットが残り食器洗いをする。本来はサグだったのだが、ディオブの指名だった。

 再び外に出て、魔力を確認する。溢れるような魔力はある。しかしその魔力をどうしていいものか、いかんせんわからなかった。再び手に魔力を集中させる。手を覆うように、バチバチと電気が弾ける。まるで線香花火だ。


「……あれ?」


 ポツリつぶやいてみる。何かが引っかかったような感覚がした。自分の手をじっ…とみてみる。弾ける電気、弾けると言う点に気付いた。


(これって……)


 魔力を意識してみる。弾ける電気が強くなるように、バチバチからさらに大きく強く、バヂバヂバヂバヂ、と大きな音で弾けるようになった。線香花火から、火花に変化した程度だが、これでも変化だ。


「これが……」


 何か一歩進んだような、何かを成し遂げたような達成感があった。胸が熱くなって、喜びに心が震える。


「すごいね、よくそんなにすぐ」

「テリンはどんな感じ?」


 テリンは手全体を大きく燃やした。炎は昨日よりも大きく鮮やかで、力強く見えた。


「触る?」


 うなづいてから、恐る恐る手を近づける。近づけるほど、熱をより強く感じた。手に触れた。確かに熱いが、まだ火傷をするほどでは無い。


「うーん、確かに熱いけど……まだダメージには」

「うん、だけどだいぶ進んだ、火のイメージが固まってきてる!」


 扉が勢いよく開いて、エボットが飛び出してきた。


「おっ?何やってんだ?」


 エボットもテリンの手に触った。しかし、やはり反応は微妙だった。l


「俺はまだまだだ……」


 手に氷を発生させる。触ると、確かに冷たいのだが、水みたいな温度でしかない。明らかに食器洗いに影響を受けている。


「とりあえず、それぞれの属性らしさを……かな」


 あまりの微妙さに苦笑いしながら、三人はまた修行を開始した。

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