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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
謎の集団 リリオウド編
263/304

文字通り隠し球

 地面に落とされたイリエルは土を握りながら歯を食いしばった。

 隻眼の猿の一撃はイリエルの体に大きなダメージを与え、未だ鈍痛が全身に響いている。

 痛みは大きかったが、動けないというほどでもなく、ゆっくりと体を起こして上を見た。


「くそ……あの猿いいパワーしてやがる」


 何度実感しただろうか、また同じ言葉をこぼしてしまう。

 枝の上では猿がこちらを見下ろしていた。


(テリンは上手く隠れたか……けど、この状況を脱しない限り帰れない……)


 イリエルは右手に魔力を集中させた。

 本来イリエルの利き手は左、しかし落下した衝撃で左手を痛めてしまっている。まともに動くのが右だけなのだ。

 念属性の魔力で枝を掴み、地面を直蹴って空中へと飛び上がる。

 枝へ着地した時、猿は一切邪魔する事なく、ただたったままイリエルを見つめていた。

 

(余裕ひけらかしやがって、目にもの見せてやる)


 イリエルは片手に火、いや炎を発生させた。

 それをもう片方の手の念属性の魔力で安定させ、炎の竜巻として発動する。

 まるで蛇のようにうねらせながら、猿へ向かって全力で攻撃を放った。

 隻眼の猿はするりするりと木を渡り、木に硬撃が命中したのを確認しつつ別の枝へと飛び移った。


(あんた隻眼でしょ? なら!)


 イリエルは腕を動かして炎を操作する。

 猿は枝を飛び移り、自由自在に攻撃を回避している。

 自分で枝を破壊していたというのに、すかすかになった足場を、高い身体能力と野生生物の視野で回避している。

 実力は高い。イリエルはその認識を改めて自分に言い聞かせた。


「ここ!!」


 イリエルの魔法が攻め立て、隻眼の猿の逃げ先を次々に潰す。

 蛇が獲物を追い立てるように、イリエルの予想通りに、自分の思う通りに事を運ばせるために。

 猿は攻撃の穴を抜け、イリエルの方へと近づいてくる。

 全てを読み切り、自分の方へと近づけ、自分の攻撃を確実にヒットさせるように仕向けた。

 猿は自分優位だと思い込んだまま、拳をイリエルへと振りかぶる。

 イリエルは片手を猿の見えない位置に隠し、その手のひらで、手のひらで握れる程度の火の玉を一つ発生させた。

 近づいてくる猿、それに向かって火の蛇を一頭放つ。

 猿は身を逸らしてそれを躱した。だがそれによって、視界が狭まってしまう。


「喰らえ!!」


 超至近距離。

 髪の毛さえ触れそうな距離で火の玉を放つ。

 放たれた瞬間、火は猿の全身ほどに大きくなった。

 猿は見えにくい位置から放たれたそれを受け、全身を焼かれながら吹っ飛ばされる。

 

「今だ! テリン!!」


 イリエルはテリンに向かって叫んだ。

 テリンは意図を察し、イリエルの背を追って枝から枝へと飛び移る。

 二人は情報収集を諦め、現在の情報を持ち帰る事を決めたのだ。

 猿は炎に焼かれながら、地面へと落ちていった。

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