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果てなき空で”果て”を目指す物語  作者: 琉 莉翔
魔法修行編
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魔法修行、魔法へ

 日が上ってまた朝が来た。

 三人はあの後すぐにベットに戻り、熟睡し、昨日感じていた疲れとストレスは、すっかり消え去っていた。

 ディオブが作ってくれた朝食を食べ終えて、再び四人は、昨日と同じように甲板に立っていた。


「お前ら、昨日覚えた魔力コントロールだ、利き手に集中させろ」


 三人はディオブに言われるまま、魔力を手に集中した。一日経っているせいか、昨日よりも遅かったが、三人ともそれぞれに魔力を集中することに成功した。少し経ってから、魔力を集中させた状態を解除する。


「よし、三人ともできてんな、才能あるよお前ら」


 サグの目が少しだけ開いた。心臓の鼓動がほんの少しだけ早くなり、ワクワクした気持ちが体温を上げる。自分に魔法の才能がある。14歳の少年には、その事実が堪らなくワクワクする。


「俺ら魔法の才能あんのか!?」


 エボットが楽しそうに、かつ嬉しそうに言った。視界の端っこに呆れているテリンが見えたが、全く気にしない。


「それは知らね」


 サグとエボットの表情が固まった。テリンは不思議そうな表情をした。


「はあ!?」

「才能あるってのは魔力コントロールの方だ、平均的に習得は四日はかかる、一日ってのは相当才能ある方だぜ?」


 少しだけがっかりした。自分には魔法の才能があるのだと、そう激しく思い込んだ。自覚すると余計に恥ずかしくなる。顔が熱くなっているのを誤魔化すように、驚きに開かれた目を、細く、真剣なものにする。


「魔法と魔力は全く違う、具体的には…そうだな、サグ、魔力集中」


 再び利き手に魔力を集中させた。手の周りで弾ける光を見る度、少しだけ楽しくなってしまう。


「その状態のまま、エボットを殴ってみろ」

「「えっ?」」


 サグとエボットの声が重なった。今のサグの手は、雷が包み込んでいて見るからに危険だ。その状態で、親友を殴れと言われた。流石にやろうとは思わない。


「殴るっても、掌にな、パチンって感じにだ」

「いやいや!!どう考えても危ないでしょこれ!」

「そうだぜ!俺怪我するじゃ済まないだろ!」

「いや?そのパンチなら大丈夫だ、いいからやっちまえ」


 動揺し続ける二人に、ディオブはさっさとやれと急かす。二人ともが心配なテリンは、あっちを見て、こっちを見てと忙しない。サグはエボットの目を見た。エボットは不安そうにしていたが、”やっていい”と目で訴えていた。産まれて以来の親友だ、今更意図するところを間違うわけが無い。


(しょうがない)


 サグは拳を構えた。エボットも左手を前に出して、右手を手首に置いて支える形をとっている。


「優しくやれよ?」

「うん」


 それだけ言ってから、サグは当たった場所を見ないように頭を下げながら拳を突き出した。サグからは見えなかったが、エボットも目の当たりに皺を寄せて、恐れをこらえていた。

 パチン!と音がした。エボットの掌に、サグの拳が着弾したのだ。サグは恐る恐る頭を上げて当たった場所を見る。エボットと目が合った、表情は”拍子抜け”と言っていた。


「どうだ?」


 二人はそれぞれに自分の手を見つめる。二人とももっと何かあると思っていた。サグの方は強い手応えと、またよくわかっていないが、魔法的な感覚があると。エボットにしてみても、もっと痛いものと覚悟してた。


「普通のパンチが当たっただけって感覚だ……」

「えっうそ!?」


 驚き一色の表情で、テリンはエボットの手を見た。エボットの手は至って普通で、特に電気による焼け跡がある訳でもなく、普通の肌の色をしている。強いて言えばパンチを受けた箇所が、ほんの少し赤かったくらいだ。それもすぐに肌色に戻った。


「今お前がやったのは、魔力によるパンチだ、だが魔法じゃない」


 またディオブのレクチャーが始まった。

 目の前の理解できない現象を飲み込むために、一語一句逃さないようにと目と耳を向ける。


「魔力はそのまま、ただのエネルギーだ」


 ディオブの腕がシルバーメタリックに染まる。しかし昨日とは色が少し違った、少しだけ黒っぽい鉱物的な色をしている。


「触ってみろ」


 三人それぞれに触る。ぐに、という筋肉と肌特有の柔らかい感覚がした。昨日感じたものとのギャップに、三人はひどく驚いた表情をする。


「今俺は、ただ腕に魔力を集めただけの状態だ、そんで」


 今度は腕の色が、昨日見たシルバーメタリックカラーに変わった。太陽光に照らされて、少し眩しい。


「これが魔法を使っている状態、触ってみろ」


 今度は昨日感じたのと同じ、鋼鉄の金属の感覚だった。触れ終わると、すぐにディオブは腕の状態を戻した。


「わかるな?ただ魔力を集めるじゃ意味は無い、そこに魔法というファクターを加えて、初めて現象を引き起こせる」

「魔力を引き出すのが簡単なのは、元々自分の体にあったものだからだ」

「しかし魔法は違う、こっからは軽く無い」


 サグは生唾を一つ飲み込んだ。

 昨日とはまた違ったプレッシャーを感じて、少しだけ鳥肌が立っている。


「まずイメージしろ、自分の魔力によって起こる事象を」


 再び腕を黒っぽいシルバーにした。


「俺の腕は鉄のように硬くなる」


 つぶやいてから、腕の色がシルバーメタリックに変わる。


「イメージを元に魔法を作る、イメージが難しいほど魔法の完成は遠い」

「まずはノーヒントだ、とりあえずやってみろ」

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